<終幕>


 先程、聖域の占拠に成功したわ。
 百鱗護衛士団の生存者は無し。
 わたし達は、電撃作戦の目標を達成したわ。

 まずは、志半ばで倒れた同胞に黙祷を…………。

 ……現状報告よ。
 聖域が陥落したことに気付いたリザードマン達は、かなり動揺しているわ。
 複数のリザードマン部隊が撤退を開始しているけど、まだ戦場にとどまってる部隊もある。
 ただ、戦場にとどまったリザードマン部隊も、今のところ積極的に動くつもりはないみたい。
 今のうちに、生き残った人は、遺体と重傷者を連れてキシュディムに集結、その後治療と休憩を行ってちょうだい。
 戦闘は一時中断だけど、ここが敵地であることにはかわりがないわ。かがり火を絶やさず、余力がある人は、厳重な警戒を行ってちょうだい。

 もちろん、警戒をしながらなら、無事を確かめ合うのも、戦勝を祝うのも構わないわ。死者への追悼も、ね……。

 あと、バグウォッシュ王のことだけど、リザードマン部隊に撤退命令を出した後のことは、分かっていないわ。
 いずれにせよ、バグウォッシュ王とは決着をつけなくてはならない。
 それが交渉になるか、再度の戦闘になるかは分からないけど、リザードマン王国を同盟諸国の一員にするか、最悪でもわたし達に対し好意的中立以上の立場をとる政権にしない限り、わたし達はこの戦争に敗北したことになる。

 いずれにせよ、キシュディムのグリモアガードは、戦後もリザードマン国の首都に残ることになるわ。
 リザードマン国政府を監視することになるか、あるいは政府と協力することになるかは分からない。
 どちらにせよ、リザードマン国を同胞にとって住みよい国にするため、地道な活動をしなくてはならないわ。
 戦後、キシュディムに残る人は、覚悟を決めてちょうだい。今回の戦争とは全く質の異なる、政治という『戦争』を、おそらくは年単位でする羽目になるんだから。

 まあ、先のことは先のこととして……。

 みんな、本当にありがとう。

 …………え、わたしが珍しく殊勝、ですって?
 だって、仕方がないじゃない。
 正直、勝利した上にわたしが生き残れるなんて、思ってなかったんだから。

 それじゃみんな、次は依頼で会いましょう。