<【探索任務結果】大湿地地帯>

 大森林の奥地に拠点を移した我々はさっそく、周辺の湿地帯の探索に向かった。
 ピルグリムグドンの襲撃で一人が重傷を負ったものの、ピルグリムグドンの手がかりや食料を得る事に成功した。

【探索任務】大森林地帯奥地 常磐の霊査士・ミカヤ(a90159)

場所:野営地   2005年09月08日 23時   発言数:1

 今回は4班に分かれて行動して貰う事になる。
 それぞれの班の役割は下記の通りだ。


■拠点護衛班
 前の拠点に残り本営を護衛する班だ。
 グドンの小さな群れが餌を求めて徘徊→安全な拠点(洞窟や窪地等)を発見というのは良くある事だからな。
 7〜8匹のグドン(場合に拠ってはリーダーとなるピルグリムグドン)を殲滅できる能力が必要だ。
 拠点護衛班が敗北すると、私、つまり霊査士は死亡し、部隊は壊滅・敗走の上、重傷死亡判定が発生する事になる。

■主力探索班
 1名〜数名の少人数で、広い範囲を網羅して探索を行う。
 極力戦闘は避け、情報と霊視の材料となるグドンの遺留品等を持ち帰って来てくれ。
 主力探索班の行動如何によって、次回移動時の危険度や、ギガンティックピルグリム到達までの距離などが変化する。
 また、食料の調達等もこの班が行う事になるな。
 主力探索班は多ければ多い程、確実な情報を手に入れる事が出来るだろう。

■支援戦闘班
 支援戦闘班は数名づつ探索地域を巡回し、少人数の主力探索班が危機に陥った際に救援する事が任務となる。
 この班の人数によって、主力探索班の重傷死亡率が変動する。

■特務班
 【殲滅奪取】と【囮任務】に参加する者はここを選択してくれ。
 

【探索任務結果】大湿地地帯 常磐の霊査士・ミカヤ(a90159)

場所:野営地   2005年09月11日 23時   発言数:1

●拠点護衛班
 森の夕暮れは暗い。
 太陽が地の果てに落ちたのか未だ中空に留まっているのか、森深いこの場所では眼で見て知る事は出来ない。
 急速に闇の中に沈んで行く森を見て初めて、一日が終わる事に気付くのだ。
 拠点の屋根に穿たれた小穴の傍に立って見張りの任に付いていた薄明の蒼・ティア(a06427)は、干し肉を一欠けら噛み締めながら、ああもう日暮れの時間なのかと森の樹冠を見上げる。灯歌・セルディカ(a04923)が爪弾いて震わせるデイブレークの弦の幽けき響きと、溢れる暖かな光が齎してくれた満足感も薄れて久しい。喉の渇きを覚えて小さく咳払いをする。部隊員の医術士達が作ってくれた僅かな水の事を思い出すと、喉の渇きが増した気がした。
「翔剣士である自分に不満は無いのだけれどね……」
 抜き身のマーメイドレインを見下ろして微かに微笑むティア。ラム酒の味を忘れそうな舌が切ないと思ったその時、前触れが耳に届いた。
 遠い森のざわめき。生木を蹴り裂き藪を踏み荒し、泥を跳ね立てて走る複数の足音。真っ直ぐにここを――この洞窟を狙ってやって来るグドンの群だと気付いて、ティアは鳥笛を咥える。この穴を守り切らなくては。この下には霊査士がいるのだ。
 応援要請の回数吹き鳴らしながら、ティアは迫り来るピルグリムグドンのいかにも危険そうな両手の大刀を見据え、剣を構えた。
 
 3班に分かれて哨戒に立っていた部隊員達はほぼ同時に笛の音を聞いた。
 窪地となった広場を覆う木に登り、遠方を警戒していた金輝の暁・ディリアス(a16748)と白魔・ユージン(a16008) も笛の音に向けた遠眼鏡に映り込むグドン達に気付いた。殆ど落ちる様にして木から降り、班の者と合流して駆け出す部隊員達。
 一方洞窟の中では永遠の旅人・イオ(a13924)は息を詰め、弓を構えていた。地面に何かを叩き付けたような轟音が聞こえてた次の瞬間には、ミカヤが羊皮紙の束をばら撒いて気絶していた。洞窟の天井からぱらぱらと土埃が振る中、長身の霊査士を洞窟の最奥に運び、君を守ると誓う。小穴の付近に敵がいるのだ。哨戒に立つ者が抜かれれば小柄なグドンが進入して来るかも知れない。
 強弓『セイヴァー』を握る手が、緊張に震えた。
 同じ刻、洞窟を揺るがす轟音を、蒼翠弓・ハジ(a26881)と傾奇者・ボサツ(a15733)も聞いていた。意味までは分からないが、ティアが強い語調で叫ぶのも聞いていた。応援要請の笛の音も聞いていたが、洞窟の大穴の前を動く訳には行かず、入口に留まってストリームフィールドを展開する。後は早く偵察班の者達が辿り着けと祈る事しか出来ず――大穴の上から猿グドンが降って来て祈る事も出来なくなった。
「来たか――……」
「ハジ氏、左のを頼むのだよっ!」
 言うやボサツが繰り出した蹴撃がグドンの脇腹を打つ。ぱあんと弾ける音がして、腹の半分を失ったグドンが地に命を滴らせて倒れた。迂回しようと試みるグドンの動きを眼だけで追って、ハジが放った矢は過たず猿グドンの首を貫く。腐肉に沸いた蛆の様に、洞窟の上からぽろりぽろりと落ちて来るグドン達をボサツとハジは的確に葬って行った。

「ルガートさん、行きますなぁ〜ん!」
 木の根が生み出す高低差を平地を走るのと同じ速度で飛び越えながら、小さな体躯に秘められたありったけの力を爪先に込めて、ルゥムが深手を追って猛り狂うピルグリムグドンに蹴り掛かる。巨大剣を抜き放ってルガートが続く。
「ディリアスさん、ティアさんをこちらへ!」
「おう!」
 リンの手に火球。紋章筆記で増幅された力の全てが、灼熱する炎となってリンの頭上に現出する。赤い血を地面に広げて突っ伏したまま動かないティアの体に群がろうとしていた猿グドンを流水撃の一刀で薙ぎ払い、ディリアスは素早くティアの脇腹の下に手を滑り込ませる。潰れた肉の感触にティアの傷の酷さを悟り、ディリアスはグドンを牽制しながらユージンの位置まで退いた。既に混戦となっていた。結果的に前衛となったユージンはグドンの胸に紋章の力を乗せた一撃を叩き込むと、降りかかる血を拭いもせずにすぐさまティアへ癒しの力を送る。が、一向に回復した様子を見せない。
「駄目です、傷が深過ぎる――」
 リンが解き放った巨大な炎の直撃を受けなお立っているピルグリムグドンの大きさと、手の刀の凶悪さ。あれと単独で相対して生きているのは、さすがティアだと言えるだろう。
 一刻も早く倒さなくては、満足な治療も行えない。
 ディリアスは忌々しそうに舌打ちして後衛を守る位置に立ち、グドン等を睨み据えた。
「左から行きますなぁ〜ん!」
 深く足を撓めて、両足――天然のバネに蓄えた力を解き放ち、ルゥムは高く跳躍する。振り抜かれた足はピルグリムグドンの硬く盛り上がった右肩へ打ち当たり破壊した。
「これで終わりにするぜっ!」
 ぐらりと揺れた体に位置とタイミングを合わせて、ルガートの大刀がピルグリムグドンの喉元から左肩にかけてを断ち切って闘気を炸裂させた。
 ピルグリムグドンは死んだ。
 元より数の多くない残ったグドン達を殲滅するのは簡単な事だった。

 常時、命の抱擁を使える体制にある霊査士ミカヤは、ティアを抱いて命の息吹を送り込む。程無くしてティアは目覚め、見守っていた部隊員達は安堵した様に笑みを零した。
 ミカヤは微笑を頬に刻んで、未だむき出しの武器を握り締め全身に緊張を漲らせている拠点護衛班の隊員達を見渡すと、
「ティアも皆も、良くぞ拠点を守り抜いた。不意の襲撃にこれだけ対応できれば上出来というものだ。これからも宜しく頼むぞ」
 そう、笑みを深い物にした。 


●主力探索班
「ねえレーダ、これアユムとリーリが話してた木じゃない?」
 広大な湿地帯と森林地帯の継ぎ目の辺りを辿るように探索していた光彩の風・スレイツ(a11466)が、岩場を引き裂く様にして根を張り巡らせている巨大な樹木に気付いて、周囲に油断無く目線を配っている清閑たる紅玉の獣・レーダ(a21626)に呼びかけた。
 今来た方角を見つつスレイツの下へ駆け寄ったレーダは張り出した根に触れ、巨樹を見上げた。根は岩場のくすんだ灰色に褐色の模様を刻み、大人が4人でも抱え切れないような幹と霧に霞む梢を支えている。この辺りでは、まだ荒らされていない樹木も時折見かけた。余りにも年を重ね過ぎ、いかにグドンでも表皮を食べる気になれないのだろう。
 岩場だろうが、何だろうが構わず根を張り巡らせ、生きる逞しい樹木の話は植物知識豊富な仲間達から聞いていた。スレイツが愛用の対の短刀の、墨で汚した刃を根っ子に突き立てる。抜けばそこからぽたりぽたりと樹液が滴った。
「当たりだな、スレイツ」
 レーダはすぐさま一滴も逃さない様に水袋をあてがい、短く切った麻縄で結び付ける。スレイツはもう一つ傷を付け水袋を括った。
 主力探索班の者達が印を辿ってこれを見つける頃には、大分溜まっている事だろう。持って来た袋を全て括り終えたスレイツとレーダは、満足そうに顔を見合わせて先を急いだ。

 一方パステルとアユムは肉……もとい食料を探していた。
「カエルさんや〜ヘビさんとかも〜食べられるなぁ〜ん」
「そうでちゅね。そろそろ新鮮な食べ物を食べたい頃でちゅ。頑張って探しまちゅよ」
 かなり強力に緊張感の無い会話だが、パステルの目は油断無くきちんと周囲を探り、食料を探す事に集中しているアユムをサポートしていた。
「いま……水音がしまちぇんでしたか?」
 歩むがぎゅっと口元を手で覆って黙り込む。耳を澄ますと、確かに何者かが湿地帯の草の茂みを踏み水をざぶざぶと掻き分けて進む音がする。
「お肉だったら〜いいんやけどなぁ〜ん」
 微かに呟いたアユムと武器を構えたパステルは、湿地帯に半ば突っ伏すようにして音の方角へ近付く。濃い霧がたゆたう湿地帯の事、その正体は何であってもおかしくは無かった。そうして、霧を掻き分けて現れたのは――鰐だった。口先から尾まで2メートルを越す立派な体躯の鰐だ。霧を通して注ぐ灰色の陽光に微かに鱗を煌かせ、悠々と進んでる。
「食べられまちゅね」
「もちろんなぁ〜ん」
 パステルが放った飛燕刃。アユムのニードルスピアが後を追う。恐らく痛み無く、一瞬で死んだ鰐。その尻尾を掴みかけたアユムは、更に続く足音に気付いて手を止めた。鰐がいるという事は鰐がいる事を知っているグドンがいるという事だ。もしかしたら、ピルグリムグドンも。パステルはすぐさま手近な水溜りに滑り込んで隠れ、アユムを呼ぶ。水草の茂みの間から鰐が現れた辺りに視線を遣ると、やはりグドンが現れた。20数匹だろうか。アユムと連携して掛かれば逃がす事無く倒せる数かも知れない。微妙な数だった。逡巡する間に流れる血に気付いた鼠グドンが鰐の屍骸に群がる。その向こう側、霧に薄らと浮かぶ陰があった。金属杖。翻る裾の特徴的な形が彼女だと教える。真珠色の晧き四星・ゲンマ(a05079)だ。
 ざあと針が降る。アユムを促し、パステルは立ち上がって飛燕刃を飛ばす。霧を突き破って嫉妬殿下・シヤン(a07850) とバニーな翔剣士・ミィミー(a00562) が現れ、一瞬で力の波を逃れたグドンを殺した。
「丁度印を見つけて巡回していた所なんどす。傷はありませんえ?」
 近付いて来たゲンマが差し出す手を取り、パステルは立ち上がる。
「無いでちゅ。丁度良かったでちゅよ」
「お肉を〜みつけたんやなぁ〜ん」
 肉と言われて鰐を見下ろしたゲンマはちょっと固まった後、色々吹っ切れたように笑って、確かに肉どす、肉どす、と頷いたのだった。


●支援戦闘班
「水――みたいですね」
 巨樹の根元で水袋を見つけた灯歌・セルディカ(a04923)は、中を覗き込んで微かな匂いを嗅いだ後、そっと袋を取り外した。袋の中には緑と命の香りを溢れさせる液体が、微かな光を照らし返してきらきらと輝いた。
「樹液ですわね、きっと。良い香りですわ……」
 セルディカが持つ袋を覗き込んで、黄砂の谷の・レティシア(a10843)がうっとりと呟いた。
「これでどの位持つ量なんだ?」
 全ての袋を取り外して、腰周りにきっちり結び付けた借金まみれなヒトの紋章術士・ガンガルス(a09429)の言葉につと考えてレティシアは、節約すれば次回の移動分と今少し飲む量位は手に入ったと思いますわ、と答えた。
「水もタダじゃねえって事か。世知辛い世の中だぜ」
 ガンガルスの貧窮っぷりを良く知る2人は、しみじみとした口調に顔を見合わせてくすりと笑みを零した。

 夕闇が迫る湿原地帯を見渡して、もう帰る刻限だと判じ、銷夏・ポーラリス(a11761)が月下幻想曲・エィリス(a26682)とダース・ザスバ(a19785)を促す。
「数匹のグドンと遭遇しただけで済んでよかったな」
「そうですわね」
 顔に纏い付く蚋の群れを手で払いながら、ポーラリスはエィリスを振り返る。蚋にたかられる、蛭には吸い付かれる、一寸だけホワイトガーデンを懐かしく思いながらも、エィリスは柔らかな月明かりめいた穏やかな微笑みを浮かべて頷いた。
「さーて、探索班の奴等肉を見つけるとか息巻いてたが、無事見つけられてるといいんだがなぁ」
「確かに」
 ポーラリスは少し笑って、拠点に続く自分たちにしか分からない道を注意深く見遣る。身を低く駆け出して、疾風の如くに尾を靡かせて茂みに飛び込み、音も無くエィリスとザスパを招き寄せる。拠点はもう直ぐだった、今日はどんな話が聞けるだろうか。
 それがとても楽しみだった。
 
 
 *死亡者:なし
 *重傷者:薄明の蒼・ティア(a06427)
 
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