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遥か眼下に、ギガンティックピルグリムが見える。
洞窟から出た本隊が強襲戦闘班の者達と合流した、張り出した岩の陰の窪地。 その目の前に広がる僅かな広場は、崖かと思われる程に深く深く擂り鉢状に落ち窪み、周囲を峻厳な山脈に囲まれた盆地の上へ張り出した、岩場になっていた。 今、この瞬間だけは全員でいたいと思った。 岩場を吹き抜ける強い風に、マントや衣、髪を弄るままにさせ、40人は物も言わず岩場に佇む。 疲れ切り、汚れた顔に誇りを湛えて静かに佇む。 網目状に広がる白い蜘蛛の巣。長蟲めいた巨大なピルグリムと、飛び交う小さなピルグリム。その中央に、信じ難いほど巨大なギガンティックピルグリムがいた。 隊に参加した幾人かは、かつてホワイトガーデンでギガンティックピルグリムを探し求め、逃がした過去を持つ。 あれはその時のギガンティックピルグリムだろうか。 もし、あの時仕留められれば、このような事態にはならなかったのだろうか。 もし、もし。問いかけは限り無く、けれど答えなど見つかる筈も無い。 けれど唯一つだけ言える事があった。 もし、彼らが身を犠牲にせず、隊が壊走の憂き目に見舞われていたら。 今でも、取り返し難いほどに繁殖しているピルグリムとピルグリムグドンはその数を増し、同盟に甚大な被害が出ていただろう。 彼らが身を犠牲にし、苦痛の中に命を散らした意味がそこにあった。 彼らの命の重みと、彼らが救った命の重みを思って、誰かが啜り泣く声が響いた。
遠くまで来たと、ミカヤは思う。 素晴らしい隊員を得て、探索を果たせた事に感謝する。 仲間達の死に直面しても心挫けず、危険を受け入れ死を厭わず死ぬ覚悟と生き続ける覚悟を両手に持って前進し続けた隊員達へ、誰かが何故そこまでと問うたならば彼らはこう応えるだろう。 ミカヤは思う。
冒険者だからだと。 この世界には命を掛けて守る価値のある物があるのだと信じて冒険者になった。 その日の誓いを、今も覚えているからと。
ひとつ、自らの民を守り、助ける為の努力を怠らない事 ひとつ、自らの力を高めるべく努力する事
重傷者:なし 死亡者:なし
この結果はひとえに、先の2依頼に赴いた者達の超絶なる努力と、それを支えた全隊員達の努力に帰するものである。 |