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◎ノルグランド護衛士団周辺地域情報 【1】カディス周辺……(カディス地方東部) ・護衛士団本部 ここ。イリュード氏その他、ソルレオン駐在員が滞在中。
・カディスの街 護衛士団本部直近の街。詳細は『ノルグランド観光案内』参照。
・カディス周辺 カディスの街北西の葦原を避ける様に、村々が点在。巡回している限りでは治安状態は良好。ただし、カディス護衛士団がいなくなった事により、盗賊等が流入して来る危険性は否定出来ない。
・ノルグランド城砦 旧本部。囚人を閉じ込める監獄として利用されている。
・葦原 ソルレオンと旧リザードマン王国が戦って来た古戦場。未処理だった死体の片付けが進行中。
【2】国境線付近……(カディス地方西部) ・国境線 同盟領とソルレオン領とを遮る国境線。ソルレオンの国境警備隊がいる。 前任者のカディス護衛士は同盟諸国がキシュディムに電撃戦を仕掛けて以降、東側への対応を重視していたため、この地域の治安は一時的に大幅に乱れた。 ソルレオンが国境線を越えてモンスター退治をしていた事もあり、住民達のソルレオンへの信頼は強い。
・『国境線の村』 この村の村長であるバクスが反同盟活動の中心となっていた。 現在、護衛士達の努力(と経済力)によって、村人の感情は緩和されているらしい。実質的な国境線周辺巡回の拠点。
「……なんで私が資料纏めてるマスか?」 「いや、事務処理してくれるって言うから……」 なぜか窓の外を眺めて蒸し饅頭を食べているオウカに、アヤナはペンを止めると同じく饅頭を一口。口を動かしながら手元を見下ろす。置かれた資料はこの地域についての大雑把なまとめだ。オウカの判断で重要度が低いとされたものは消されているが、 「多分今後はあんまり関係ないから平気だと思うわ」 「それは霊査マスか?」 「女の勘」 平然と言ったオウカに、アヤナは同意の頷きを返した。 「なら、きっと平気マスね」 「いや、そりゃ霊査士としてどーなんだおい」 半目で突っ込みを入れたクエスに、二人は不思議そうな顔つきで彼を見つめた。一瞬頭痛をこらえるような仕草をしたクエスは、気を取り直すと本題を問いかける。 「んで納豆姉ちゃんよ、洞窟の件で回収して来たブツの霊査結果はどうだったんだ?」 問われたオウカは口元に軽い笑みを浮かべ、 「次でノスフェラトゥの件にケリつけるわよ。出動の準備をするよう、皆に伝えといて」 「……あいよ」 「楽しそうでマスね、団長」 「捕らえたとして、それからも厄介な気がするけどね」 饅頭を平らげつつ呟くアヤナに、オウカは小さく肩をすくめた。
「ちょ、ちょっと待って〜!」 聞こえた声に、それぞれ巡回へ出発しようとしていたリヒトとラオコーンは目を眇めて入り口の方を見やった。 「ロゼか、ありゃ」 「その前を歩いているのは監視員だな。……名前は何と言ったか……」 存在感が無いのでつい忘れてしまう。内心で監視員一号と暫定名をつけたリヒトは、ラオコーンと二人、そちらに歩み寄った。 「どうしたんだ?」 「いや、それが……」 監視員一号が定時連絡のためマルティアスへ戻ろうとしたところ、護衛の人数が足りないから待って欲しい、とロゼが止めていたらしい。 「では、国境線巡回の要員が同行することにするか?」 「俺様もそれがいいと思うぜ」 「ホント? それは助かるにゃ」 何せこちらには他にもまだ残っている監視員がいる。まだ仕事がある、と本部の奥へ戻って行くロゼを見送り、ラオコーンは強く頭を掻いた。 「大変そうだな、ありゃ……」
「あかん……あの人達てんでに動き過ぎや」 「お疲れ様です」 疲れ切った表情で呟いたスピットに、レイステルは労いの言葉と飲み物とを差し出した。 「ああ、こりゃどうも」 護衛士達の想定外だったのは、ソルレオン監視員は同盟冒険者がそうであるように、各々が各自の意志で動き回るということだったろう。 監視員はイリュードを含め現在4人。人数は流動的という事なので、増える可能性すらある。その時には事前に伝える、とイリュードは約束してくれたが。 「イリュードさんはいつも本部にいるようですが……他の人達が問題ですね」 「……ロゼはんもひっくり返っとったしなぁ。定時連絡のためにマルティアスに戻るのはまだ良いんやけど、巡回に同行したがったりするのは勘弁や」 「ですが、本部にいる時間が増えれば、いずれ護衛士の秘密会議室とかが発見される恐れはありませんか?」 レイステルの指摘に、スピットははたと気付いた表情で額を押さえた。 「……そら、気ぃつかんかったわ」 「監視員の対応に従事する人がいた方がいいでしょうね」 下手にノルグランド城砦などに行かれても困る。呟くヒルドに、スピットとレイステルは同意の頷きを返した。 |