<通常業務結果報告【6月】>

 この月も目立った事はなかったわね。
 その分、平和だったってことよね。
 問題は……失ってしまった信用をどう回復させるか……よね。

通常業務結果報告【6月度上半期】 ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194)

場所:広場   2005年06月12日 19時   発言数:3

◎ノルグランド護衛士団周辺地域情報
【1】カディス周辺……(カディス地方東部)
・護衛士団本部
 ここ。イリュード氏その他、ソルレオン駐在員が滞在中。

・カディスの街
 護衛士団本部直近の街。詳細は『ノルグランド観光案内』参照。

・カディス周辺
 カディスの街北西の葦原を避ける様に、村々が点在。巡回している限りでは治安状態は良好。ただし、カディス護衛士団がいなくなった事により、盗賊等が流入して来る危険性は否定出来ない。

・ノルグランド城砦
 旧本部。囚人を閉じ込める監獄として利用されている。

・葦原
 ソルレオンと旧リザードマン王国が戦って来た古戦場。未処理だった死体の片付けが進行中。

【2】国境線付近……(カディス地方西部)
・国境線
 同盟領とソルレオン領とを遮る国境線。ソルレオンの国境警備隊がいる。
 前任者のカディス護衛士は同盟諸国がキシュディムに電撃戦を仕掛けて以降、東側への対応を重視していたため、この地域の治安は一時的に大幅に乱れた。
 ソルレオンが国境線を越えてモンスター退治をしていた事もあり、住民達のソルレオンへの信頼は強い。

・『国境線の村』
 この村の村長であるバクスが反同盟活動の中心となっていた。
 現在、護衛士達の努力(と経済力)によって、村人の感情は緩和されているらしい。実質的な国境線周辺巡回の拠点。


「……なんで私が資料纏めてるマスか?」
「いや、事務処理してくれるって言うから……」
 なぜか窓の外を眺めて蒸し饅頭を食べているオウカに、アヤナはペンを止めると同じく饅頭を一口。口を動かしながら手元を見下ろす。置かれた資料はこの地域についての大雑把なまとめだ。オウカの判断で重要度が低いとされたものは消されているが、
「多分今後はあんまり関係ないから平気だと思うわ」
「それは霊査マスか?」
「女の勘」
 平然と言ったオウカに、アヤナは同意の頷きを返した。
「なら、きっと平気マスね」
「いや、そりゃ霊査士としてどーなんだおい」
 半目で突っ込みを入れたクエスに、二人は不思議そうな顔つきで彼を見つめた。一瞬頭痛をこらえるような仕草をしたクエスは、気を取り直すと本題を問いかける。
「んで納豆姉ちゃんよ、洞窟の件で回収して来たブツの霊査結果はどうだったんだ?」
 問われたオウカは口元に軽い笑みを浮かべ、
「次でノスフェラトゥの件にケリつけるわよ。出動の準備をするよう、皆に伝えといて」
「……あいよ」
「楽しそうでマスね、団長」
「捕らえたとして、それからも厄介な気がするけどね」
 饅頭を平らげつつ呟くアヤナに、オウカは小さく肩をすくめた。


「ちょ、ちょっと待って〜!」
 聞こえた声に、それぞれ巡回へ出発しようとしていたリヒトとラオコーンは目を眇めて入り口の方を見やった。
「ロゼか、ありゃ」
「その前を歩いているのは監視員だな。……名前は何と言ったか……」
 存在感が無いのでつい忘れてしまう。内心で監視員一号と暫定名をつけたリヒトは、ラオコーンと二人、そちらに歩み寄った。
「どうしたんだ?」
「いや、それが……」
 監視員一号が定時連絡のためマルティアスへ戻ろうとしたところ、護衛の人数が足りないから待って欲しい、とロゼが止めていたらしい。
「では、国境線巡回の要員が同行することにするか?」
「俺様もそれがいいと思うぜ」
「ホント? それは助かるにゃ」
 何せこちらには他にもまだ残っている監視員がいる。まだ仕事がある、と本部の奥へ戻って行くロゼを見送り、ラオコーンは強く頭を掻いた。
「大変そうだな、ありゃ……」


「あかん……あの人達てんでに動き過ぎや」
「お疲れ様です」
 疲れ切った表情で呟いたスピットに、レイステルは労いの言葉と飲み物とを差し出した。
「ああ、こりゃどうも」
 護衛士達の想定外だったのは、ソルレオン監視員は同盟冒険者がそうであるように、各々が各自の意志で動き回るということだったろう。
 監視員はイリュードを含め現在4人。人数は流動的という事なので、増える可能性すらある。その時には事前に伝える、とイリュードは約束してくれたが。
「イリュードさんはいつも本部にいるようですが……他の人達が問題ですね」
「……ロゼはんもひっくり返っとったしなぁ。定時連絡のためにマルティアスに戻るのはまだ良いんやけど、巡回に同行したがったりするのは勘弁や」
「ですが、本部にいる時間が増えれば、いずれ護衛士の秘密会議室とかが発見される恐れはありませんか?」
 レイステルの指摘に、スピットははたと気付いた表情で額を押さえた。
「……そら、気ぃつかんかったわ」
「監視員の対応に従事する人がいた方がいいでしょうね」
 下手にノルグランド城砦などに行かれても困る。呟くヒルドに、スピットとレイステルは同意の頷きを返した。


ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194) 2005年06月12日 19時
【業務連絡】通常業務に『4.ソルレオン監視団対応』を追加。イリュードをはじめとした監視団への対応を行います。ゲート転送説明が通常業務で行われる事になった場合もこれで。

ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194) 2005年06月12日 19時
『その他』の選択肢は5番に移動させて下さい。

通常業務結果報告【6月度下半期】 ノルグランドの霊査士・オウカ(a04194)

場所:広場   2005年06月28日 22時   発言数:1

 ゲート転送に関する資料を読み終え、イリュードはテーブルにそれを置いた。
「念のために聞いておこう。『この資料に書かれている内容は全て正しいか?』『これ以上ゲート転送について隠している事は無いか?』」
「どちらも肯定する。そこに書かれているのが、我々の知る全てだ。戦意の無い証と受け取って貰えればありがたい」
 ユーヴィの言葉に小さくため息をつき、深く椅子に腰掛ける。
「……ともあれ、これについてはディオン殿達にも報告させてもらおう。お前達が自分から情報を開示したことも併せてな」
 その言葉に頭を下げたユーヴィに苦笑を向け、
「まぁ、お前達が何らかの特殊な移動手段を用いているだろう事は以前から薄々分かっていたのだが」
「……そうなのか?」
 軽い驚きの反応が返って来るのにイリュードは肩をすくめた。
「ノスフェラトゥ戦役の時に集結した冒険者の数について、以前にセルフィから報告を受けていたからな。二千を超える人員を一時に移動させるのは、お前達の国力では厳しいものがあろう」
「なるほどな……」 
「しかし、希望のグリモアというのは不思議なものだな……多種族の共存が可能、それにゲート転送……」
 イリュードは腕組みして考え込む。彼の知る限り、希望のグリモアと同様の力を持つグリモアというのは例が無い。ソルレオンの心や樹木の結界なども、あくまで種族能力であってグリモアの力では無いはずだ。
「……考えても詮無き事か。ああ……そうそう」
 腰を上げかけたユーヴィに意地の悪そうな視線を向け、
「今後も情報の伝達は隠し事無く迅速に頼む、とシルフィアやフェイムに伝えておいてくれ。……会議室では丸聞こえだったぞ」
「……伝えなかったら、どうするのだ?」
 背中に冷や汗を感じながらの問いかけに厳しい視線を向け、
「お前達が我等に情報を伝えぬのであれば仕方が無い。監視としての本分を果たすべく……我等に隠している事は無いか、と問わせてもらうだけのことだ。ソルレオンの前に、隠し通せる事など無いと知れ」


「イーゲルは西方面に逃走したという目撃情報を最後に消息不明、ですわね」
「そう……」
 大きくため息をついたオウカは、噂を収集していたコレットに視線を向けた。宿場街での騒ぎは、結構な噂になっている。ノスフェラトゥが逃亡したという情報は、早晩イリュード達の耳にも入るだろう。
「国境線の方から連絡は入ってないけど……モンスター地域に抜けられた後なら、ソルレオン領に入り放題ね。あっちの国境線沿いには同盟側の担当護衛士団も無いし」
「そうなると厄介よね〜……」
 ミリティナの言葉に頭を抱えたオウカに、コレットが怪訝な視線を向ける。
「イリュードに手配書でも渡せば、あちらでの活動も防げるのではありませんこと?」
「色々事情を説明するのが面倒そうで……」
 ゲート転送の一件を思い出したらしい。コレット達はオウカに呆れたような視線を向けた。
「面倒でない仕事なんて、ノルグランドにありはしないでしょう?」
「……ま、それもそうね。適切に処理するように皆に伝えといて」
 分かりましたわ、と言葉を返し、コレットは団長室の戸を開けた。


 ソルレオンの監視員達は、定期的にマルティアスに戻り、団長のディオン達と連絡を取り合っている。
 報告から帰って来た乙を出迎え、ライナーはそのまま国境線の村で一泊する事にしていた。
「こんばんは」
「ルナさん、お疲れ様っす」
 頭を下げたライナーの横に座ったルナは、ライナーの様子に怪訝な視線を向けた。
「どうしたの? なんだか雰囲気硬いわね」
「イーゲルはこっちには来なかったっすか?」
 ああ、とルナは気の毒そうな視線を向け、首を横に振った。
「残念だけど目撃情報は無いわね。……そういえば、乙も硬い雰囲気だったけど」
「そうっすね、イリュード様に伝えないといけない事が、とかなんとか。詳しい内容までは教えてくれなかったっすけど」
 その言葉に、ルナは小さくため息をついた。
「信用されてないのは分かるけど……」
 東方同盟諸国がソルレオンの正義に適う存在であるとあちらが認識していたならば、こう面倒な話にはならなかっただろう。
「ザンギャバス戦とかの経緯をきっちり伝えれば、少しは信頼回復に繋がるのかもしれないっす」
「……今度の円卓決議の結果次第ってことね」
 ソルレオンにとって受け入れ難い結果になれば、同盟に対する彼等の警戒心は否応無く増すだろう。説明によっては許容範囲も広がるかもしれないが、
「……結局、前はカディス城塞の破壊までしてやっと手に入れた信用を、もう一度取り戻さなきゃいけないのね」
 ルナが呟き眉を寄せる。
 自分達に何が出来るのか、考える時期に来ているようにライナーには感じられた。
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