|
サダツナ公の催した野点の席から護衛士たちが帰還を果した後、アルガとジリュウとの国境付近の情勢は大きく様変わりした。国境付近に広く展開していたジリュウの武士団が引き上げ始めたのである。 同時にアルガ領内である噂話が広がり始めていた。
マウサツとジリュウが手打ちをしたらしい――と言う噂話が、である。
「恐らく、サダツナ公が仕掛けて来た策の1つと見て間違い無いでござろうな」 務めて冷静な声でそう告げるクラノスケ。戦渦に巻き込まれる事を怖れていたアルガの民衆にとっては、その噂話は朗報と言えた。そして、その噂を裏付けるかのように引き上げて行ったジリュウ兵。 それだけに一度広がり出したこの噂を抑える事は難しかった。 「……早急にトツカサに援軍を送るべきでしょうね。先手を打たれた以上、このまま手を拱いていては手遅れになりかねませんから」 暫く考え込んでいたサコンがゆっくりと口を開く。国境から武士団を引いたのは、マウサツとアルガとの間に楔を打ち込む為のサダツナ公の仕掛けであるのと同時に、トツカサ方面にその兵力を廻す為の施策でもあるだろう。 「しかし、こちらの守りは如何するのでござる? 今、トツカサへと護衛士の方々を派遣しては、国境はがら空きとなりますぞ?」 そのクラノスケの危惧はもっともであった。相手が引いたとは言え、護衛士たちをトツカサに派遣したならば、アルガとマウサツの守りはがら空きとなるのだ。 しかし、サコンは静かに笑ってクラノスケに言葉を返す。 「あのお2人は、機が熟さない限りはアルガとマウサツには手出しをしないでしょう。少なくともトツカサが健在であれば、こちらも安全と言う事です」 サコンの言葉に大きく頷くクラノスケ。ならば、早急にトツカサへと援軍を送ってジリュウの侵攻に備えるべきであった。マウサツの護衛士たちに召集が掛かったのは、それから間も無くの事であった。 「只今よりジリュウの侵攻に備えて、トツカサへと遠征して戴ける方を募集致します。現時点では、希望のグリモアの力を得いてるとは言え、トツカサの武士とジリュウの武士との実力差は殆どありません。しかし、トキタダ公配下の30名ほどは、護衛士の皆さんにも匹敵する力を得ています。恐らくトツカサの武士たちでは、太刀打ち出来ないでしょう」 集った護衛士たちにそう告げて視線を投げ掛けるサコン。確かに、現状でマウサツの護衛士たちと他国の武士たちとの実力差は明白であった。つまり、現状でトキタダ公たちに対抗出来るのは、このセイカグドに於いてはマウサツの護衛士たちだけであったのだ。 「このままジリュウの凶行を見過ごしたならば、遠からずトツカサは滅び、彼等の矛先は間違い無くマウサツへと向けられます。いえ、恐らくはこのセイカグド以外の地域にも――」 淡々と続けられるサコンの言葉に、護衛士たちは無言で聞き入っていた。野点の席でサダツナ公が垣間見せたという野望。それが真実であるならば、ジリュウの侵攻を阻止する事はセイカグドのみならず、楓華列島全体の問題であるとも言えた。 「マウサツとアルガに付いては、来月初頭まで大きな異変はないでしょう。それも踏まえた上で、護衛士の皆さんのお力添え、どうかよろしくお願い致します」 そう言って深々と頭を垂れるサコン。トキタダ公とサダツナ公、この2人のもたらした暗雲を振り払う事が出来るか否かは、護衛士たちの決断に託されたのである。
(マスターより) 今後、トツカサで起るジリュウ勢の侵攻を阻止するべく、今後設置される行動決定用スレッドで対応して戴きます。トツカサへの遠征を希望される方は、別途設置の遠征板にて表明をお願いします。 基本的に行動決定用スレッドは、29日までの間の18:00〜22:00頃に突発的に設置され、援軍に参加されている方だけが発言出来ますが、正確な日時と締め切りはスレッドが設置されるまでわかりません。 其々、短期間での厳しい対応になるかと思いますが、よろしくお願い致します。 尚、トツカサ領までの移動時間がありますので、参加表明の書き込みは早期にお願い致します。ただし、現在までにアンケートで援軍希望を表明している方に限り、遠征板での参加表明が遅れても、以降突発的に設置される行動決定用スレッドでの発言を可能と致します。 |