【OP】トツカサ遠征 ストライダーの霊査士・サコン(a90176)

場所:トツカサ遠征軍   2005年05月22日 01時   発言数:1

 サダツナ公の催した野点の席から護衛士たちが帰還を果した後、アルガとジリュウとの国境付近の情勢は大きく様変わりした。国境付近に広く展開していたジリュウの武士団が引き上げ始めたのである。
 同時にアルガ領内である噂話が広がり始めていた。

 マウサツとジリュウが手打ちをしたらしい――と言う噂話が、である。

「恐らく、サダツナ公が仕掛けて来た策の1つと見て間違い無いでござろうな」
 務めて冷静な声でそう告げるクラノスケ。戦渦に巻き込まれる事を怖れていたアルガの民衆にとっては、その噂話は朗報と言えた。そして、その噂を裏付けるかのように引き上げて行ったジリュウ兵。
 それだけに一度広がり出したこの噂を抑える事は難しかった。
「……早急にトツカサに援軍を送るべきでしょうね。先手を打たれた以上、このまま手を拱いていては手遅れになりかねませんから」
 暫く考え込んでいたサコンがゆっくりと口を開く。国境から武士団を引いたのは、マウサツとアルガとの間に楔を打ち込む為のサダツナ公の仕掛けであるのと同時に、トツカサ方面にその兵力を廻す為の施策でもあるだろう。
「しかし、こちらの守りは如何するのでござる? 今、トツカサへと護衛士の方々を派遣しては、国境はがら空きとなりますぞ?」
 そのクラノスケの危惧はもっともであった。相手が引いたとは言え、護衛士たちをトツカサに派遣したならば、アルガとマウサツの守りはがら空きとなるのだ。
 しかし、サコンは静かに笑ってクラノスケに言葉を返す。
「あのお2人は、機が熟さない限りはアルガとマウサツには手出しをしないでしょう。少なくともトツカサが健在であれば、こちらも安全と言う事です」
 サコンの言葉に大きく頷くクラノスケ。ならば、早急にトツカサへと援軍を送ってジリュウの侵攻に備えるべきであった。マウサツの護衛士たちに召集が掛かったのは、それから間も無くの事であった。
「只今よりジリュウの侵攻に備えて、トツカサへと遠征して戴ける方を募集致します。現時点では、希望のグリモアの力を得いてるとは言え、トツカサの武士とジリュウの武士との実力差は殆どありません。しかし、トキタダ公配下の30名ほどは、護衛士の皆さんにも匹敵する力を得ています。恐らくトツカサの武士たちでは、太刀打ち出来ないでしょう」
 集った護衛士たちにそう告げて視線を投げ掛けるサコン。確かに、現状でマウサツの護衛士たちと他国の武士たちとの実力差は明白であった。つまり、現状でトキタダ公たちに対抗出来るのは、このセイカグドに於いてはマウサツの護衛士たちだけであったのだ。
「このままジリュウの凶行を見過ごしたならば、遠からずトツカサは滅び、彼等の矛先は間違い無くマウサツへと向けられます。いえ、恐らくはこのセイカグド以外の地域にも――」
 淡々と続けられるサコンの言葉に、護衛士たちは無言で聞き入っていた。野点の席でサダツナ公が垣間見せたという野望。それが真実であるならば、ジリュウの侵攻を阻止する事はセイカグドのみならず、楓華列島全体の問題であるとも言えた。
「マウサツとアルガに付いては、来月初頭まで大きな異変はないでしょう。それも踏まえた上で、護衛士の皆さんのお力添え、どうかよろしくお願い致します」
 そう言って深々と頭を垂れるサコン。トキタダ公とサダツナ公、この2人のもたらした暗雲を振り払う事が出来るか否かは、護衛士たちの決断に託されたのである。

(マスターより)
 今後、トツカサで起るジリュウ勢の侵攻を阻止するべく、今後設置される行動決定用スレッドで対応して戴きます。トツカサへの遠征を希望される方は、別途設置の遠征板にて表明をお願いします。
 基本的に行動決定用スレッドは、29日までの間の18:00〜22:00頃に突発的に設置され、援軍に参加されている方だけが発言出来ますが、正確な日時と締め切りはスレッドが設置されるまでわかりません。
 其々、短期間での厳しい対応になるかと思いますが、よろしくお願い致します。 
 尚、トツカサ領までの移動時間がありますので、参加表明の書き込みは早期にお願い致します。ただし、現在までにアンケートで援軍希望を表明している方に限り、遠征板での参加表明が遅れても、以降突発的に設置される行動決定用スレッドでの発言を可能と致します。

【行動決定用スレッド】軍議 ストライダーの霊査士・サコン(a90176)

場所:トツカサ遠征軍   2005年05月22日 18時   

「援軍の派遣、ありがとうございます。これで我がトツカサの将兵たちの士気も上がる事でしょう」
 トツカサへと到着した護衛士たちをジンオウ将軍が出迎える。今回の国境周辺での緊張の高まりに、部隊の増援を準備していたトツカサにとって、マウサツからの援軍の派遣は歓迎すべき事柄であった。
 しかし――
「残念ですが、歓迎の声ばかりではないのです。将軍たちの中には、此度のマウサツよりの援軍を受け入れるべきではないと軍議で発言される方もいまして……」
「……どう言う事だ?」
 そう告げて表情を曇らせたジンオウに護衛士の1人が聞き返す。
「実は現在、我がトツカサ領内にてジリュウの動きの影にマウサツありとの噂が広まっています。それだけでしたら、ジリュウの間者が流した虚報であろうと無視出来たのでしょうが、折り悪くアルガ領内での情勢の変化が我が国にも報告されたのです」
 ジンオウの説明を聞いて護衛士たちは言葉を失う。トツカサ領内での噂とアルガ領内での噂、そしてそれらの噂を裏付けるかのようなジリュウ武士団の動き。トツカサの将軍が疑念を抱くのも無理はあるまい。
「そこで私から1つ提案があります。これより軍議の席が開かれますので、そこで直接皆さんの口から現状の説明をお願い出来ないでしょうか?」
 提案と告げるジンオウであったが、既にその席に護衛士たちが参加する事の了承を他の将軍たちにも取り付けているのだろう。
「ジリュウ側が手に入れたと言われる力に付いても、その席にてご披露して戴ければ皆さんの援軍が必要だと再認識してもらえると思います。説明されただけでは納得されぬ方もおられますので」
「つまり、上級アビリティの『演舞』を見せろってコトか?」
 護衛士の1人が思わず確認の声をあげる。
「ええ。無理にとは言いませんが、そうして戴けた方が、皆さんの今後の活動にも便宜を図り易くなります」
 爽やかな笑みを浮かべてジンオウが返答する。確かに、この軍議の席で将軍たちの持つ不信を払拭し、更に実力を示す事が出来たならば、反マウサツの声はなくなるだろう。
「それでは後ほど、軍議の席で」
 軽く会釈をして護衛士たちの下から離れるジンオウ。
 軍議の席は間も無く始まろうとしていた。

【最終締切】5月22日 23:59まで

(マスターより)
 状況の説明についての補足ですが、現在までにトツカサが知り得ている情報は、『ジリュウ国内での異変』、『ジリュウが新たな力を手に入れたとのマウサツよりの通報』、『アルガ領内での情勢の変化』となっています。
 ジリュウが希望のグリモアの力を手に入れた経緯やトキタダ公の情報、野点の席で入手した情報などは、マウサツ側のみが知り得ている情報です。以上の事象を踏まえた上で発言戴けますと幸いです。
 また、上級アビリティの実演ですが、威力の低い武具を使っての模擬戦なども可能と致します。トツカサの将兵に対してアビリティを使って見せるなどの演出も、効果が高いかも知れませんね。
 尚、余り字数が多過ぎますと五十嵐の処理能力に支障を来たしますので、行動宣言は200文字程度に治めて戴けますと幸いです。
 それでは皆さんのお力添えよろしくお願い致します。

【結果】シラトリの合戦 ストライダーの霊査士・サコン(a90176)

場所:トツカサ遠征軍   2005年06月02日 01時   発言数:1

 トツカサの宿将シュウセツ、そしてジリュウの大将軍カツシゲ――両軍の中核たる両将軍の率いる本陣同士の真正面からの激突。それがこのシラトリの合戦の幕開けとなった。

 正面に重騎士部隊を配して防御重視のトツカサ本陣に対し、大将軍カツシゲの号令の下、ジリュウ本陣は容赦ない波状攻撃を開始する。
 数に勝るジリュウ勢の攻勢の前に、苦戦を強いられるトツカサ本陣であったが、シュウセツ将軍の巧みな采配、そしてマウサツ護衛士たちの奮闘も相俟って、数度に渡る波状攻撃を支え切る事に成功、両翼部隊による挟撃の開始を待つ。
 ここで大きく動いたのはジリュウ勢であった。挟撃の機を窺っていた両翼部隊の指揮官に、霧幻衆による奇襲が仕掛けられたのだ。霧幻衆への対応に動いていた護衛士たちによって、奇襲は未然に察知されたが、対応に動いた者たちとジリュウ最精鋭と呼ばれる部隊との間で激しい戦いが繰り広げられる事となる。
 だが、その所為でトツカサ両翼部隊による挟撃の仕掛けは遅れてしまい、厳しい戦いを続けていたトツカサ本陣がその煽りを受ける事となる。
 更に数度のジリュウ勢の波状攻撃を受け、両翼部隊の到着を待ちながら猛攻を耐え凌いでいたトツカサ本陣の粘りも、最早限界に近付きつつあった。防御に回った護衛士たちの死力を尽くしての行動、そして援護・回復に努めた護衛士たちの献身的な活動がなければ、ジリュウ本陣の猛攻に耐え切れず、トツカサ本陣は陥落していたかも知れなかった。
 此処で1つ目の転機が訪れる。トツカサ右翼部隊の到着であった。霧幻衆を早々に撃退した右翼部隊は、態勢を整えるとジリュウ本陣の側面に向けて進撃したのである。こうしてジリュウ本陣への果敢な横撃を敢行した右翼部隊は、先頭に立っての奮闘を見せた護衛士たちの活躍もあり、ジリュウ勢に多大なダメージを与えて行く。
 そして、右翼部隊の到着により防戦一方であった本陣の将兵たちの士気も上がり、ジリュウ勢を一時的に押し返す程の奮闘を見せる。
 しかし、ジリュウ側の対応も迅速であった。大打撃を受けた側面の部隊を後退させると同時に、新たな部隊を投入して右翼部隊の攻勢を凌ぎつつ、本陣への攻撃の手を更に強めたのだ。
 数の上では、まだトツカサの右翼部隊と本陣と比べてもジリュウ本陣の方が優勢であるが故の決断であり、対応であった。実際に、ジリュウ勢の大攻勢によってトツカサ本陣は一気に劣勢に追い込まれ、シュウセツ自身も輿から降り、自ら剣を抜いて敵兵と切り結ぶと言う窮地にまで陥ったのである。
 ジリュウ勢の勝利が確定したかに見えたその時であった。到着が遅れていたトツカサ左翼部隊が、無防備になっていたジリュウの側背面に突撃を開始したのは。
 この左翼部隊の参戦により戦いの形勢は完全にトツカサ側に傾いた。だが、ジリュウの大将軍カツシゲの決断も素早かった。形勢不利と見て取るや否や、即時全軍撤退を通達したのである。
 後に判明した事だが、左翼部隊の指揮官は霧幻衆の奇襲によって負傷したまま部隊を指揮していた。左翼部隊に身を投じていた護衛士たちが指揮官の負傷を補うべく勇猛果敢に戦い、他の将兵たちをも鼓舞した事がこの戦いの趨勢を決めたのだ。
 防備に徹し、整然と撤退に移るジリュウ勢に対して、トツカサの各部隊は追撃を仕掛けなかった。いや、疲弊の激しいトツカサの各部隊は、追撃を仕掛ける事が出来なかったのだ。

 こうしてシラトリの合戦は、ジリュウ勢の猛攻を凌ぎ切り、反撃に転じて押し切ったトツカサ勢が辛くも勝利を収める事となった。

 これだけの激しい戦いにもかかわらず、両軍の死者は驚くほど少なかった。マウサツ護衛士の加勢による各部隊の回復力の底上げも然る事ながら、有志による戦線を離脱していたトツカサ将兵への回復や援護も大きく寄与していた。
 しかし、最も大きな要因はトツカサ勢の取っていた戦法にあった。攻撃よりも防御、回復に重きを置き、自軍の被害を抑えるかのような戦い方であったのだ。思い返せば、カツシゲが撤退を決断したのも早過ぎるようにも思えた。後もう一押しでシュウセツの首級を揚げる事も出来たのだ。そうすれば、三度、戦況はジリュウ側に傾いた事だろう。
 ジリュウ軍撤退の直後に、ジンオウ将軍の派遣した増援部隊が到着した事もあり、その情報を察知した為の決断ではないかとの声も上がったが、結論は出なかった。

 また、ジリュウ勢の後方に位置していた遊軍がトキタダ公配下の部隊であった事が後に報告された。対応に当たった護衛士たちの活躍によって、ジリュウ側の切札とも言えるトキタダ配下の精鋭部隊の合戦への参戦を阻止出来た事も、トツカサ勢にとって僥倖であったと言っていいだろう。

 戦いは終わったが、刻み込まれた爪痕も大きかった。何より、国境を挟んでの両国の睨み合いは、いまだに続いている。戦乱の火は消えたとはとても言えなかった。
 勝利と呼ぶには余りにも際どい今回の戦の結果。しかし、この勝利がマウサツとトツカサの、いや今後のセイカグドにとって重要な意味を持つであろう事を感じつつ、護衛士たちはトツカサの将兵等が催したささやかな勝利の宴席に招かれ、互いの健闘を湛え合うのであった。

【END】