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●【評決】援軍の可否(2005年07月08日 23時) サコンです。 先の戦に於いてトツカサ第3領を占領したジリュウ勢ですが、現状の所はまだ大きな動きを見せてはいません。しかし、これでジリュウ側の侵攻が終わった訳ではありません。 早ければ来週、遅くとも再来週末までには大きく仕掛けて来るかと思われます。
現在、『門出の国マウサツ』に所属している護衛士の皆さん全員の力を借りる事が出来るのならば、ジリュウ勢の侵攻に対して互角の戦いに持ち込む事も可能かと思いますが、参加される人数によっては、前回以上の敗北も覚悟しなければならないでしょう。 また、互角の戦いが出来たとしても、防戦で手一杯となる可能性も高く、今後、更に状況が悪化する可能性も否定出来ません。
そこで、護衛士の皆さんにジリュウとの戦いに向けた援軍の要請の可否に付いて、判断を仰ぎたいと思います。
選択肢は以下の通り――
1.援軍は必要ない 援軍は特に要請せずにマウサツのみの力でこの問題に対応致します。作戦への参加者の数が大きな問題となる事でしょう。
2.楓華列島に展開している他の護衛士団に援軍を請う 楓華列島に展開する他の護衛士団に協力を仰ぎ、共に戦って戴きます。ただし、他の護衛士団の動向によっては、援軍の要請は難しいかも知れません。現状で、カザクラの動向に付いては定かではなかったと連絡を受けていますが……
3.円卓を通してランドアース本土からの援軍を要請する 円卓に話を通して、ランドアース本土からの援軍を仰ぎます。同盟本土の力を借りるに当たっては色々と問題が山積みなのですが、中でも最大の問題は、果たして円卓を通しているだけの時間的余裕があるのかと言う事でしょう。
今回の評決の締め切りは、7月10日の23:59までと致します。期間が短い上、色々と難しい判断が必要かとも思われますが、護衛士の皆さんのお力添えの程、どうかよろしくお願い致します。
1.援軍は必要ない(10) 2.楓華列島に展開している他の護衛士団に援軍を請う(20) 3.円卓を通してランドアース本土からの援軍を要請する(9)
●【結果】援軍の可否(2005年07月11日 00時) 援軍は必要ない10票、楓華列島に展開している他の護衛士団に援軍を請う20票、円卓を通してランドアース本土からの援軍を要請する9票と言う事で、今回は楓華列島に展開している他の護衛士団に援軍を請う方向で、お話を通しておきますね。
◆トツカサへの旅(2005年07月12日 20時):ヒトの霊査士・イズミ(a90160) ○トツカサの王 セイカグド州東部の広大な平原と、州を東西に分ける山脈の統治を脈々と行ってきた、天子様による種族分割統治時代より続く歴史ある国トツカサ。 現国王にして稀代の紋章術士として名高いライオウ・トツカサの元に、一通の書が届けられたのは、星凛祭を終えた数日後のことだった。 「カザクラのイズミからじゃ……」 「殿、イズミ殿からは何と?」 書を読み、考え込むような視線で天守からトツカサの都を見下ろすライオウに、シュウセツ将軍が深く腰を曲げながら尋ねる。 「……マウサツのサコンから話を聞いたらしい。土産話を持って、一度トツカサを訪れたいと申しておる……」 「それは……」 シュウセツの表情が唖然としたものになる。 「いや、そうではない。じゃが楓華の歴史が動いたのじゃろう……大きく、な……」 老獪にして精鋭。 目を細めるストライダーの紋章術士には、天守より望む都の風景は映っていないように思えた。 遠く、遠く。 遙かに遠い何かを見つめているような、そんな表情だった。
○サコンからの手紙 「イズミ、今この時期にトツカサに向かう意味は?」 同じ名を持つ武人に尋ねられて、霊査士のイズミは眉根を寄せた。 「クーヤさんが、サコンさんから預かって来ていただけた手紙に、こうあったのです。『トツカサ王との約定、今果たす時が来ました』と……」 「それはどういう意味じゃろうか? まさか、あの公に魔の手が?」 ソーウェも時折セイカグドについては気に掛けていただけに、いきなりの帰還には驚いた者の一人であった。 「ええ……今、トツカサ王に危機が迫っていると言うこと以外に私は考えられません。本来なら天子様の依頼を早くに遂行できれば、少しはカザクラの皆さんも楽になれると思うのですが……それでも、トツカサ王に危機が迫るというのであれば、それを見捨てて行くわけにはいけません。恩を仇で返す訳にはいけませんでしょう?」 「いや、そうだけどねェ……本当にいいのかィ?」 マトラは、何時にないイズミの決断に驚きを隠せないようでいた。それは居並ぶ隊員達も同じだった様子で、イズミが小さく笑うまでは彼女の変化には気がつかないようで居た。 「気を張り過ぎていたとでも言いますか……先般、本国に戻った時ですが……同盟での決議事項を厳しく捕らえていた私は、色々な意味で新鮮な意見をお伺いしました。……それで、判ったのです。私は規則に囚われすぎていたのだと。厳しく律し過ぎたと……。そこまでせずとも良かったのだと……背負いすぎることは止めよう、そう思います。この手で守れる物を護る……皆さんの信じる正義の為に、国の正義の為でなく、人の心の正義の為に自分の力を使おうと、そう思いました……」 だからと、小さく笑うイズミ。 「私の我が儘でしょう。お世話になったトツカサ王に報いる為に、出来る限りのことはしたいのです。ですが、それも天子様からの依頼を遂行するまでの短い間だけですが……」 限られた時間に何が出来るのかは知れない。 だが、セイカグド州の全てを知る霊査士、サコンからの依頼でもある。 イズミはそう言うと、カザクラ隊員の自由を奪うつもりはないと、己が心の正義に従って、行動して欲しいと告げてミナモから出る船上の人となったのである。
【トツカサの国へ→】 ************************************* 短い時間ですが、トツカサの国へはミナモから直行の船を出して貰っています。トツカサに向かう場合には、その船に乗ることが一番近道になりますので、別途移動関連のスレッドを設けていただいた場合には、そこでの発言者は移動を行えたと言うことで対応します。 また、あくまで天子様からの依頼を受けるかどうかは現時点では決定されていませんので、別の評決スレッドにもご意見を宜しくお願いします。
●【OP】リョウナンの決戦(2005年07月16日 18時) ジリュウ勢襲来、その凶報がトツカサの陣を駆け巡ったのは日も暮れ掛けた夕刻の事であった。直ちに陣を整え始めるトツカサ勢とは別に、マウサツ勢と今回の危急の事態に援軍として駆け付けたカザクラ勢は、貸与されていた陣幕に集結していた。 「決戦は、トツカサ勢が展開しているリョウナンの村近くの丘陵地帯で行なわれるかと思われます。先の戦勝を享けてジリュウ勢の士気は極めて高く、そのままトツカサ勢と激突したならばトツカサ勢の苦戦は必至でしょう」 広げた周辺の地図を指し示しながらサコンが集まった者たちに説明する。 「……苦戦とはずいぶんと楽観的な言葉を使うのですね」 サコンの傍らに立っていたイズミが小さく呟く。2人の霊査士が確認した戦況は、極めてトツカサ側に不利となるものであった。 いや、それだけジリュウ勢の戦力が増していたのだ。 「現在報告書を纏めている所ですが、シラトリへの偵察から帰還した方々からの報告では、先の戦を経験した事でジリュウ武士たちの錬度は上がっているようですね。個々の錬度の上昇は然程ではないようですが、ジリュウ勢全体として見たならば、かなりの戦力増強となっていると見ていいでしょう」 淡々とした口調で語るサコンの言葉に集まっていた冒険者たちの間に重苦しい空気が漂い始める。 「トツカサとジリュウ、この2つの軍勢がまともに戦うのでしたら、私たちが加勢に加わったとしても、トツカサの敗北を僅かばかり長引かせるだけです」 更に追い討ちをかける様にイズミが続ける。その言葉の端々に険があるのは気のせいではないだろう。 「義姉上、それはトツカサにはもう勝ち目がないって事なのか!?」 イズミに向かってそう問い掛けたのは、トツカサの兄王子にして将軍職にもあったチオウであった。現在はライオウ公により勘当されカザクラに身を寄せてはいるが、故郷の危機を聞いてその口調も自ずと荒くなっていた。 「勝ち目がない、とは申しません。優勢であるが故の油断か……ようやく付け込めるだけの隙をジリュウ勢が見せてくれましたので」 口調を変えずにチオウに言葉を返すサコン。が、その口元に何時もの笑みが浮かんでいた事をマウサツの護衛士たちは見逃さなかった。 「現在、ジリュウ勢は将兵を2つに分けてここリョウナンの地を目指して進軍中です。1つは元トツカサ第3領方面から、そして残る1つは元々のジリュウ・トツカサの国境線を越えて。この2つの軍勢でトツカサの陣に挟撃を仕掛け必勝を期する作戦のようですね」 トツカサ勢との間に大きな戦力差が生じた事によってジリュウ勢が選択したのは、軍勢を2つに分けての二面作戦であった。連携が巧く決まれば、ジリュウ側の完勝は揺ぎ無いだろう。いや、2人の霊査士には、その有様が見えていたに違いあるまい。 「ですが、挟撃を仕掛ける事が出来なければ、数に勝るトツカサ勢がジリュウ側の一軍を退ける事は可能でしょう」 静かに集まった者たちに視線を向けてイズミが続ける。その有無を言わさぬ迫力の前に、猛者と呼んでいい筈のカザクラ・マウサツの両護衛士たちも思わず気圧されてしまう。 「皆さんにお願いしたいのは、ジリュウ勢の一軍を撃退する事です。これまでの偵察などで両軍の進軍経路に付いては、ほぼ把握しています。併せて、寡兵を以って大軍と互角以上に戦えるであろう地形なども確認済みです。シラトリ方面からの一軍の指揮は、前回同様にジリュウの大将軍カツシゲが執るようです。そして、ジリュウ側の国境を越えて来る一軍を率いるのは、ジリュウ国王サダツナ公です。どちらを抑えるかは、皆さんの判断に委ねたいと思っています」 そう説明を終えたサコンにイズミが視線を向ける。その視線に気付き静かに頷いてみせるサコンに一礼するとイズミは静かに口を開く。 「サダツナ公は、希望のグリモアの力を得たのは偶然だと、ひどく曖昧な理由を口にする俗物と聞いています。必然に、自らの意志で希望のグリモアに集った皆さんの心と力で、その野望を打ち砕きましょう」 それは、偽らざるイズミの真意であった。これまで、楓華列島に於いて自分たちが行ってきた様々な活動を土足で踏み躙るかのようなサダツナ公の行為に、少なからずの憤りを感じていたのだ。 その言葉を受けて意気の上がる両護衛士団の冒険者たちに2人の霊査士たちは、作戦の要旨を語り始める。 トツカサの興亡を賭けたリョウナンの決戦。その戦いの幕は切って落とされようとしていた。
(マスターより) マウサツ・カザクラの部隊には、トツカサの軍勢とは別行動でジリュウ勢の一軍を撃退すべく活動をして戴きます。 ジリュウ勢の其々の部隊には、本隊とは別に別働隊が付き従っています。カツシゲ軍の別働隊は仮面の兵団、トキタダ公の精兵たちです。そして、サダツナ軍の別働隊はジリュウの最精鋭部隊、霧幻衆です。数の多いであろうマウサツ勢は本隊に、精鋭の揃っているカザクラには別働隊に当たって戴きます。 カツシゲ軍とサダツナ軍、其々の一軍の撃退に関する長所や短所などは、別記の行動選択用スレッドで詳しく説明致しますのでご確認ください。 大変厳しい戦いになるかと思われますが、護衛士の皆さんのお力添えの程、どうかよろしくお願い致します。
●【行動決定用スレッド】止めるべき敵(2005年07月16日 19時) 2つに分けられたジリュウの軍勢のどちらを押さえに行くかを決定する為、護衛士の皆さんの決断を仰ぎたいと思います。危急の事態となりますので、決断までの時間は大変短いものとなりますが、皆さんのご協力をお願い致します。 サダツナ軍とカツシゲ軍、両軍勢を迎え撃つに当たっての作戦等の説明は以下の通り。
1.サダツナ軍を迎え撃つ ジリュウとの国境付近にある峠へと向かい、これを撃退します。両脇の山中に潜んで奇襲を仕掛ける事も可能でしょう。ただし、それ以外の仕掛けは時間的に難しく、以降のジリュウ勢とは正面から戦う事となりますので、厳しい戦いが予想されます。 また、本隊が襲撃を受けた場合、別働隊の夢幻衆は本隊の元へと取って返す事が予想されます。その際に通ると予想される間道に伏兵を配すれば、大きく優位に立つ事も出来るでしょう。 別働隊の夢幻衆が壊走するか、本隊に多大な被害を与えれればサダツナ軍は撤退します。また、サダツナ公を討ち取る事が出来た場合も同様にジリュウ勢は撤退するでしょうが、分の悪い賭けになる可能性が高くなります。 敵軍を速やかに撃退出来た場合には、比較的近場での決戦となるでしょうからトツカサ勢への加勢も可能でしょう。
2.カツシゲ軍を迎え撃つ シラトリ方面から続く街道に向かい、これを撃退します。山間の道に最近まで続いていた長雨によって地盤の緩んでいる場所が幾つかありますので、進軍中のジリュウ勢に土砂崩れを仕掛けて混乱に陥らせる事も可能です。ただし、相手も冒険者ですので土砂崩れだけでは致命的な打撃を与えるには至らないでしょうから、如何にして敵軍の混乱に乗じて優位に戦いを進めるかがカギとなるでしょう。 別働隊のトキタダ公の部隊は、最短経路と目される別の道を通っています。崖崩れで通行が困難になっている地点を迂回する為に山林へと入る時が、襲撃の大きなチャンスでしょう。 本隊に大きな被害を与えるか、主将のカツシゲを討ち取る事が出来ればジリュウ勢は壊走する事でしょう。また、トキタダ公の部隊も被害が甚大になれば撤退します。 ただ、場所的には決戦の行なわれるであろうリョウナンの地から離れる事となりますので、トツカサ勢への加勢は難しいでしょう。
伏兵の潜む場所や奇襲を仕掛けるタイミングなど仕掛けなどに付いては、サコンやイズミの霊査によって、最適の場所やタイミングを選定出来る物として扱います。状況によってはリョウナンの決戦の後に、ジリュウ勢に奪われたトツカサ第3領を取り戻す為にトツカサ勢と共に追撃を行なう事も可能かと思われます。 極めて短時間での選択となりますが、全ての状況を考慮した上で、ご決断戴けますと幸いです。尚、今回の作戦は、マウサツ・カザクラの双方の参加者による投票を纏めた上での多数決で決定致します。
【最終締切】7月17日 7:59まで
1.サダツナ軍を迎え撃つ(56) 2.カツシゲ軍を迎え撃つ(8)
●【結果】止めるべき敵(2005年07月17日 08時) 以上、両護衛士団での投票の結果、『サダツナ軍を迎え撃つ』98票、『カツシゲ軍を迎え撃つ』9票と言う事で、サダツナ軍を迎え撃つ事と致します。 追って詳しい作戦を発表致しますので、今しばらくお待ちくださいね。
●【行動決定用スレッド】リョウナンの決戦(2005年07月17日 08時) 基本的には行動選択肢は3つになります。 先に注意を促していた『後の事に気をつける』と言う事は、作戦で地形を変化させたり、破壊を行った後の復旧作業についての注意でもあります。 これは、直接私たちには関わりが無いように思えますが、後のトツカサの国の国力を疲弊させて、周辺の国との関係を悪化させる、もしくはトツカサ国内の治世に不安定を呼ぶ事になりますので、結局は私たちにも影響を及ぼします。 その点に留意して、作戦行動を御願い致します。 また、カツシゲ軍に関しては、トツカサの武士団率いる軍がこれを受け持ちますので、私たちはサダツナ公の軍に専念する事になります。
引き続いて作戦の大まかな流れですが、基本的には以下の3つです。その他を選択される場合には、各自の行動宣言と共に詳細を書いてください。尚、行動宣言は出来るだけ200文字以内でお願いします。
1.本隊を迎え撃つ 敵本隊の兵全てを受ける形になります。寡兵を以って大軍を迎え撃つに有利な地形で戦えるとは言え、敵の人数が多い事と、少数対多の戦いをする為の広域攻撃が敵には効きづらいので、どうしてもこちらには人数が必要でしょう。現状、トツカサに移動しているマウサツ護衛士団員とカザクラの護衛士団員の総力を以って当たれば、跳ね返すだけでなく瓦解させる事も可能でしょう。楓華列島に於ける武士の、戦場での戦いになります。
2.別働隊を迎え撃つ 伏兵を忍ばせて、敵別同部隊の動きに合わせてこれを叩きます。伏兵を置く位置と時間は既に霊査で見終えております。最適な時と場所は用意できました。残るは人の利、皆さんの作戦と人数だけですので宜しくお願い致します。本来のランドアースの冒険者的な戦争という形の戦いになりますので、皆さんの行動を縛るものは明らかに少ない事でしょう。
3.サダツナ公を撃つ 先のシラトリでの決戦に於いて必要とされていた参戦人数、それを上回る参加者が集まれば、敵陣を突破してサダツナ公の本陣を叩く事も可能でしょう。ですが、裏を返せば人数が不足した時には、押し返される可能性もあるという事になります。敵の総大将を討ち取る事が出来れば、完全勝利となるのですが、それを成す為には戦力の集中はもちろん、状況に即した戦い方が必要となります。グリモア戦争と同じ、中規模相当の総力戦を考えて戴ければいいでしょう。ただ、参加人数はいくら増えても問題在りませんし、その方が優位に戦う事ができるでしょう。
4.その他 特に説明は省きます。 各選択肢内で行える行動など、皆様の英断をお待ちしています。
【最終締切】7月17日 21:59まで 1.本隊を迎え撃つ(60) 2.別働隊を迎え撃つ(0) 3.サダツナ公を撃つ(3) 4.その他(0)
●【情報文章】戦談義(2005年07月17日 18時) 霊査士2人、そしてトツカサの将軍ジンオウを交えての直前の戦談義は白熱を見せていた。 「兄上」 「それは止めろ。俺はもうトツカサの名は捨てた」 兄弟将軍が揃う戦と知って、いやが上にも部隊の士気は上がっているのだが、がんとしてチオウは戦場には一人のカザクラ隊員として立つ事を望んでいた。 「では、この戦はその様に致します。ですが、兄上、戦の後には必ず殿の元においで下さいませ」 殿という言葉を使うジンオウ。 それは、名を捨てても国の武士であるチオウには絶対の存在である者に呼ばれたという証であり、頭の上がらない身であるストライダーの狂戦士にはそれ以上言い返す事は出来なかった。 天幕の下に地図を広げ、駒を配して部隊の隠蔽と敵兵の配置予測、更には到着するだろう時間帯と襲撃のタイミングを合わせる予備作戦部隊間の伝令の配し方まで、綿密に練られた作戦案を一気に整理するのは大変な作業量が必要だったのだ。 「ところで」 と、地図を見ていた姫将軍は続ける。 「……マウサツとカザクラは連携は取らぬのか? 部隊を分ける利は判るが……敵も本隊、別働隊、本陣と3つあるのなら、各個撃破も一つの策じゃが、此度の戦は守りじゃろう? 一つの部隊を完全に消滅させれば、戦は勝つぞ?」 「ん? ああ、セリカちゃん。この戦い方はランドアースでの戦争の時の戦い方やから、マウサツは本隊を、うちらは別働隊を狙うんやで。あっちの常識やと、部隊分けしたら基本的にその部隊以外の戦闘行動には余り動かんのや」 セリカにランドアースの戦争について思い出して伝えたアンジーに、ジンオウは眉を顰めて聞き返した。 「アルガ攻めの時には、貴女はマウサツと行動を共にしたのではなかったですか? 今の貴女の言葉と矛盾しますが……」 ジンオウが己の記憶を呼び覚ましながら尋ねると、乾いた笑いでアンジーは顔を歪める。 「うちはまぁランドアースの非常識やさかい……イズミちゃん、突っ込んでや!」 己の取った行動は、ランドアースでの戦争ではあり得ない行動だった。慌ててぼけて見せたものの、突っ込みのない沈黙に耐えきれずに鉄拳調理師が助けを求めると…… 「……いつも有り難うございます」 三つ指をついて返されてしまった。 「イヤ、それ、突っ込んでないし!」 「楽しそうだな」 のっそりという擬音が似合いそうな位の動作で天幕の中に入って来るカルロス。 「今更突っ込まんといてんか!」 「うむ」 アンジーの突っ込みを一言で無視するカルロスである。 「ところで、今更だが俺たちランドアースの冒険者の戦と、こちらの戦の常識に違いはあるのだろうか? 今の会話を聞くと、アンジーの取った行動はこちらでは普通のように言っていたが、俺たちの本国では作戦旅団、まあ目的に応じて編成された軍団みたいなものだが、それを5つ程作成し、後は各作戦旅団は各自の戦に備えて別行動になるんだが」 横で武道家が何か言っているのだが、完全に無視してカルロスはトツカサの歴々に向かい合う。 「なんと……他に特徴はないのかや?」 「……と、言われてもなぁ。直ぐに浮かぶか、おっさん?」 腕を組んで悩むシギル。 「初っぱなからは全兵力を出さないのか……」 唖然とするのはチオウとセリカ位だった。 「……道理で、一点集中の戦になれてない訳じゃな」 ついと、駒を動かしたチオウに合わせてセリカも2つの新たな駒を地図の上に配した。 「虎の子を完膚無きまでに叩き潰せば、戦は勝つ。奴らの奥の手を完全に消滅させて、2度と立ち直らない様に封じるんだ」 ジリュウ王の別働隊にチオウが重ねた黒いマウサツとカザクラの駒2つ。 「無血で勝つ気が無いのなら、敵兵を全て滅するのは戦の常識じゃ。さすれば、無用な戦を相手は仕掛けられぬ」 セリカが置いたのは、本部隊の上に2つの白い駒。 「ボクの記憶が正しければ、楓華列島の戦では主将を討ち取るか敗走させれば勝利だったはずだよ♪」 ニッコリ。 マウサツ砦で文献を読み漁っていたククイがあふれ出る薀蓄を語り出す前に、アンジーがほやなと手を打った。 「ランドアースの戦やと、敵の本陣だけを全力で全作戦旅団が狙うという戦は無かったわな。どんな時でも段階分けやっとるし……」 「今更だが……戦のやり方からして、違うのかよ……」 頭を抱え込んでしまうチオウだが、溜息混じりで肩を竦めるとすっくと立ち上がった。 「まぁ良いさ。皆が、戦うべき敵を選んでるんだろ? そこで決まった策で行けば勝てるさ」 戦場での動きは運気、勢いも大事だからなと、天幕を出るチオウに続いてサコン、イズミも久々にお天道様の下に出るのであった。
◆【結果】再会(2005年07月18日 15時):ヒトの霊査士・イズミ(a90160) ジリュウの精鋭部隊を壊滅に追いやった戦の最期で、楓華の風カザクラ隊員達は悪夢を見た。 「ええい、貴様ら、新入り! 遅れて来ただけ仕事をしろ! 俺達の撤退を助けろ!」 崖の遙か頭上に影が見える。 それら目がけて霧幻衆の武士が一人、叫ぶのだが崖の上からは誰一人として一向に動こうとしない。 「その様なご無体、流石に私達もお聞きするわけにはいけません」 凛とした青年の声が響く。 明らかに年配と思える人物に対しても、己の意志を伝える強い意志を持った声だ。 乱戦と、攻撃に重きを置いた部隊配置で戦いを挑んだカザクラの部隊によって開いた隙をついて、遅れて戦場に到着したと思われる彼等が戦場より僅かに離れた位置で、カザクラ隊員達と霧幻衆の最期の生き残り達を見下ろす位置に立っていたのは偶然の産物だったのだろう。 「お帰りなさい」 鈴の音と共に、崖の上から声が響く。 「イズミ様達、帰って来られたんだ」 幼い少女の声に、視線を上げた者達の中、一部の人間は相手の顔を見て固まった。 「お帰りって、あんた……」 マトラはそれ以上言葉を発することを忘れていた。 幼い顔立ちには見覚えがある。 だが、少女の纏う装束はジリュウの精鋭部隊、霧幻衆のそれだ。 「カスミね、お殿様のお誘いで、武士になったんだよ。マウサツの人も野点の時に会ったけど、気付いてくれなかったの。ね、これで、イズミ様達とカスミ、一緒だよね。カスミ、とっても嬉しいよ」 「だからって……何でそんな所で、霧幻衆なんてやってるんですよ! よりにもよって!」 ヴィルファの日に焼けた顔も赤く染まっていく。怒りとも、何とも知れない興奮が胸の中を駆けめぐっていたのだ。 「だって。カスミ達はお国のために頑張るんだもの……武士はお国を護るんだよ? そして、お国の人達が幸せに暮らせるように努力するの」 当然でしょと、小首を傾げる少女だが、カザクラ隊員達の攻撃からは間を置いて、確実に逃げられる位置をとり続けていた。 「カスミ引くぞ。あのような戯れ言を言う方々には、もうついて行けぬ。これからはあのお方の夢に賭けるぞ」 「……それじゃ、お姉ちゃん達、さよなら。カスミは、お殿様やトキタダ様と一緒に、お国の為に頑張るから」 「待ちなさい!」 ラヴィスの叫びも虚しく、崖の上に白拍子達の姿は消えた。 「あの、あの子っていったい……」 「なぁ〜ん?」「なぁ〜ん?」 スタインの左右でポチとタマが隊員達の苦い表情を読み取ったのか、不安げな表情を見せていた。 「……参りましたね。彼女は、ジリュウに戻っていたのですね……それも、最悪の形で……」 少女を知る、【マウサツの国救援部隊】当時からのメンバーの一人であるツカサも、何時になく重い表情になる。 「マトラ、一つだけ聞かせて欲しい」 「何だィ?」 ハガネがマトラに向けて真剣な表情で続けた。 「カスミは、貴女と比べて技術はどれ程の物でしょうか?」 「……少なくとも、あたしよりは上さぁね。よくぞそこまでと思える程に、ねェ」 「ジリュウがマウサツやトツカサと戦ったって聞いたが……つまり、冒険者になりたての筈のあの娘がそこまで育つ程に、英才教育が施されているって訳だ……俺達には関係ない……筈なんだが、トツカサ軍の方は大丈夫なのか?」 ぶっきらぼうに言うワイドリィだが、既に戦いで出来た傷は癒されて、臨戦態勢は整っている様子だった。 ジリュウの国の特殊部隊にして精鋭部隊、霧幻衆はこの日を境に歴史から永久に消える。 だが、その幕引きを行ったカザクラ隊員達には素直に喜びきれない難問が一つ残されたのだった。
●【結果】リョウナンの決戦(2005年07月18日 14時) 険阻な地形を利して、サダツナ公率いるジリュウの軍勢に戦いを挑んだマウサツの部隊は、兵力をジリュウ勢本隊の迎撃に集中させた事によって、序盤から優位に戦いを進める事となった。 鋭い斬撃や打撃がジリュウ兵を切り裂き、叩き、穿ち、凄まじい威力を秘めた幾筋もの光条が、ジリュウの先陣に控えていた将兵たちを薙ぎ払う。 圧倒的な力の奔流が、ジリュウの先陣に向けて一気に解き放たれた。 この一戦に、勝敗の全てを賭けるかの如くの奮闘を見せたマウサツ勢の猛攻をまともに受ける形となったジリュウの先陣部隊は、反撃の暇すら無く散々に陣容を突き崩され、多大な被害を被る事となる。 遅れ馳せながらジリュウ勢も反撃に転じるが、霊査の力を得て、地の利を活かした事によって、一度に戦う事の出来る人数が制限され、数の上では互角の戦いをせざるを得ないこの状況下に於いては、地力に勝るマウサツ勢が同数で相対するジリュウ武士たちに後れを取ろう筈も無かった。 更に、険阻な地形に阻まれて、ジリュウ勢の第2陣以下の部隊が満足に展開する事も出来ず、連携はおろか数の優位を活かす事すらままならなかった事が、結果的にジリュウ勢の傷口を更に深く抉る事となった。 無論、ジリュウ勢もただ手を拱いていた訳ではない。先陣からの伝令を受けたサダツナ公は、素早く状況の把握に努め、現状に於いて優位に戦いを進めているマウサツ勢に対して逆襲の一手を打つべく、ジリュウ勢全軍に対して指示を出そうとしていたのだ。 だが、そのサダツナ公による指示は、ごく少数の護衛士たちによって敢行された捨て身の特攻により阻まれる事となる。実質3名によるその突撃は、間を置かずして撃退されたものの、更なる襲撃を予測して部隊を大きく展開してしまった為、ジリュウ側にとっては致命的とも言える貴重な時間を使わせる事となる。 サダツナ公からの指示が遅れてしまった事により、先陣に続いて第2陣までもがマウサツ勢と交戦状態となり、傷口を大きく広げてしまったのだ。 更に、ジリュウ勢にとっての凶報が続く。別働隊として展開していた霧幻衆が、本隊への襲撃を察知し救援の為に引き返している途中で、カザクラ勢による待ち伏せを許してしまい、壊滅的な被害を被ったとの報がサダツナの元に届けられたのである。 さしもの霧幻衆も、用意周到に準備されたカザクラの隊員たちによる完全な奇襲の前に、ある者は全身に矢を受け、またある者は紅蓮の炎に身を焼かれて、次々と倒れて行く。攻撃の手を逃れた霧幻衆からの果敢な反撃も、カザクラ勢の優勢を覆す物にはなり得なかった。 起死回生の一手になるかと思われていた得意とする状態変化系の攻撃すらも、状態回復系の技を揃えていたカザクラ勢にはさしたる効果をあげる事が出来ず、霧幻衆の勝機は完全に潰える事となる。 カザクラ勢の追撃の手を掻い潜って、落ち延びる事が出来た者も多少はいたものの、霧幻衆は壊滅的な被害を被り、潰走を始める事となった。 虎の子の奇襲部隊の潰走の報を受け、更にマウサツ勢との戦いを続けている先陣と第2陣の両部隊の瓦解が避けられぬ状況となった事も受けて、ついにサダツナ公はトツカサへの進軍を諦め、全軍に撤退の指示を出す。 だがそれは、マウサツ勢と尚も絶望的な戦いを続けていた先陣部隊と第2陣の部隊を撤退の為の捨石とすると言う事に他ならず、程なくして浮き足立った両部隊は、マウサツ勢の攻勢の前に完全に崩壊する事となった。 こうして、マウサツとカザクラの両陣営の勇戦によって、戦場に多数の死傷者を残したまま、サダツナ公の率いるジリュウの軍勢は本国への撤退を開始したのである。
此処でカザクラ、マウサツの両部隊の者たちは1つの決断を迫られる事となる。 このまま勢いに乗ってサダツナ公の軍勢に追撃を仕掛けるか、それともリョウナンの地に取って返して、カツシゲ率いる一軍とトツカサ勢との戦いに加勢するか―― 両部隊の者たちに、勝利の余韻に浸っている余裕は無かった。 【つづく】 |