＜死の行軍４日目＞ 　少しずつ歩を進めていく護衛士達。 　次に向かうのは、砂の中に生まれた渦の中。 　本隊を無事、渦の中へと導く為、２人の護衛士が敵を引きつけました。 □【特別業務】死の行軍４日目　荊棘の霊査士・ロザリー(a90151) 場所：ドラゴン界　　　2007年07月26日 08時　　　発言数：15 ●不安 　護衛士団の空気は時折、不意に微笑ましく変わる。微温湯に腰まで浸かるような感触を、何と表現すれば良いのか判らない。仲間の遣り取りに笑みを返し、レディ・リルケ（a44136）は伸ばし掛けた手を止める。予感めいたものを振り払おうと静かに瞳を閉じた。 　背負子にちょこんと腰掛けながら、荊棘の霊査士・ロザリー（a90151）は蒼褪めた顔を伏せている。悲しいかな、ドラゴン界では幾らか見慣れた光景だ。霊査士は一度だけ、不安そうに護衛士たちを見回す。今現在護衛士たちが身を潜めている場は、「本隊が立方体の岩場を抜けたと察された瞬間に次の標的とされる」位置だと言うのに、護衛士たちは戦闘の発生を未然に防ぐつもりが無いようだ。 　予感を得る間も無く、硝子を削るような、甲高い咆哮が響き渡る。 　それは、とっくに死んでいた彼の血肉が、最後の最後まで惹き付けていた敵の意識からとうとう逸らされた瞬間だった。贖われた猶予が終わりを告げる。此処に至って護衛士は、漸く、本当の「危機感」を胸に覚えた。 　ドラゴンが空を翔ける。立方体の岩場を抜ければ、身を隠す位置など護衛士らの潜んだ奇妙な形の巨石のみだ。苛立ちと共に吐き出された紫の稲妻は、巨石のひとつを跡形も無く吹き飛ばした。岩の欠片が爆発に弾かれ、護衛士らの眼前を通り抜け霊査士は再び意識を失う。 　護衛士は合図よりも早く、此処を出なければならない事態に追い込まれた。 　誓桜の重騎士・キースリンド（a42890）は急ぎ、足止めを担う第一陣の護衛士の防具へ加護の力を齎す。そして己の青いグランスティードに鏡夜奏想・リア（a13248）と共に跨った。此方を既に殺せる位置に居るドラゴンから、ドラゴンよりも足の遅い護衛士が逃げる道程が果てしなく遠い。更に、ドラゴンに追従する形で無数のドラグナーが我先に我先にと砂地を駆けて来た。設置したクリスタルインセクトは一瞬で踏み潰されたことだろう。 　憎い人間を前にして、彼らは死に対する恐れも怯えも抱かない。 　ひたひたと音を立てて死が迫っている。 　振り向けば其処に戻れない闇がある。 　二つ目の巨岩が破壊された直後、急ぎ用意を整えた護衛士らは岩陰から飛び出し、河沿いに上流へと向かった。幾ら大地と同色の布を被っていても、「探している」ドラゴンの目を晦ませるには数秒分の役にしか立たない。ただ、ひしひしと染み入る脅威を悟った。 ●抗戦 　重傷者で構成された足止めの第一陣は、瞬く間に夥しい量の血を吐いた。 　渦が視界に入るまで待ち、白刃の影騎士・ブレイズ（a34294）は身を反転させる。刹那にも満たない間を悩み、彼は出来る限り辛辣な声を張り上げた。 「――足手纏いです！　さっさと行ってください！」 　本隊が渦に飛び込めない未来は、即ち護衛士団の全滅を指す。 　不意に思い出したのは霊査士の言葉だ。 　殿に意味は無い。 　本隊が逃げ切る時間を稼げない殿に意味は無いのだ。 　本隊が発見されるよりも早く、敵の気を惹いておく必要があったのだ。 「２０秒は……、無理だな。奇跡が起きても１０秒か」 　ひとり５秒生きれば良いな、と酷く穏やかな声がする。 　続けて、ぶつり、とロープを切り落とす音がした。 　リルケは本隊と自身を繋ぐ命綱を躊躇わずに断つ。 「結局、付き合わせてしまいましたね」 　無い意味を作らねばならない。 　生き延びる彼らは、同じ轍を二度とは踏むまい。 「いや……、気にするな。まさか、『相棒』を置いては行けないだろう」 　リルケから返された言葉に戦場の風を感じ、ブレイズは微かな笑みを浮かべた。ドラゴン特務部隊に入隊したあの日、立てた守護の誓いを想う。最後まで傍で守り切ることは出来ず、少しばかり残念にも思う。けれど閉じた目蓋の裏に、愛しい人の笑顔が見えた。最早、恐れるものはない。己に絶望は無縁のものだ。 　行軍のたび、ブレイズは覚悟を重ねていた。 　その瞬間が今に来たのだと強く感じる。 　殺到する敵を眼前にリルケは逡巡した。雪輪紋の刻まれた愛しい重槍を構え、何を生み出すべきなのか。倒すことの出来る量ではないならば、一秒でも長く断ち続ければ良い。彼女は纏ったスーツに聖なる守りを齎した。曙に移り行くネクタイを締め、着心地の良いドレスシャツに身を埋め、友の存在へ僅かばかりの思いを向ける。後ろ髪を引かれているのだとしても、そうと認めるつもりはない。 　いつものように、ただ成すべきことを成す。 　それが彼女の鉄の意志だ。 　銀のマントを翻し、馴染む槍を振り翳し、彼女はドラグナーの攻撃を受けた。全身を襲う痛みにも表情は変えない。癒しなど気休めにしかならぬと知っていたから、一瞬の攻勢を阻むためにブレイズは白く粘着いた糸を振り撒く。此れで彼女の命は、数瞬、きっと長引いた。 　腹が熱い。 　何かが、ぼだぼだと音を立てて零れて行く。 　顔を下に向ける余裕の無いことが、きっとリルケの幸運なのだ。 　腕がへし折れただけだ。未だ立てる。べろりと肩が剥がれただけだ。未だ立てる。指が数本飛んで行った？　だから何だと言うのか。膝を砕かれたならば片脚で立ってやる。意識の消えた身体に二撃目が届くのならば、充分な時間稼ぎを成せるはず。 　嗚呼、今度は喉笛を突かれた。 　熱い。痛い。息が出来ない。 　降り注いだ竜の吐息は、人間を嘲笑うドラグナーごと周囲の地形を変えて行く。 　彼女を支えようと手を伸ばしたブレイズは、足を前に出すことが出来ず砂地へどさりと倒れ伏す。こんな時に如何したと言うのか。無様な己を叱咤する。肘を使い、這って進み、これ以上相棒を傷付けさせてなるものかと彼女の身体を引き寄せた。しかしこの足は竦みでもしたのかと忌々しげに目を向ければ、腰から下が既に無かった。避けたつもりの稲妻は半身を呑み込み、跡形も無く消し去っていたのか。紫の炎が、黒地の衣服の裾辺りをちらちら揺らめいている。 　視界がゆっくりと暈け始めた。 　腕がぶるぶると震え、掌から女神を象る銀の剣が零れ落ちる。 　血溜まりを踏み荒らす周囲の音すら聞こえなくなる。 　腕の中に引き込んだリルケの温もりが何故だか無性に胸を突いた。自分よりも背の高い、自分と同い年の女の子は、最期に少しだけ唇を開いて何も言えずに微笑んだ。誰も、何も、失いたくなんてなかった。身体よりも、心が痛い。酷く苦しい。 　けれどブレイズは掠れていく風景の中に、渦巻いていた砂の静止を見て留める。そして彼は、深い安堵に意識を沈めた。 ●束の間の休息 　不意に覚醒した焔を纏う一陣の風・ディーン（a32427）が跳ね起きる。 　数秒か、数分か、意識を失っていたらしい。 　慌てて縄を手繰ると、無事、霊査士に行き当たった。やはり負担はかなりのもののようで、早くリアを見つけて命の抱擁でも施して貰わねばと周囲を見回す。 「此処は……」 　ドラゴン界の地下は、いっそ美しいと言える地だった。 　碧色に煌いた水晶が立ち並び、きらきらと光源の判らない輝きが擦り抜ける。透明な茸を思わせる、植物とも鉱石とも言い難い何かが並び、足元は細やかな砂と白く平らな石とで固められていた。周囲に敵の気配は無い。飛ぶドラゴンの姿も見えない。周辺を探せば、水場すら見つかりそうだ。澱んだ血の固まる傷を洗い、身を清める程度の役には立ってくれるかもしれない。 　行軍を開始して４日目。 　護衛士らは漸く、束の間の休息に辿り着いた。 冒険結果：成功！ 重傷者：黒紋の灰虎・カラベルク（a03076）　流水の道標・グラースプ（a13405）　睡獅子・バルア（a31559） 死亡者：白刃の影騎士・ブレイズ（a34294）　レディ・リルケ（a44136） ！死の行軍４日目！ ■締め切り：７月２７日（金）０時５９分 ■行動内容は２００文字以内に纏めてください。 ■必ずしも全員が描写されるとは限りません。 ■業務に参加した護衛士は、行動次第で重傷・死亡を負うことがあります。 ■命を使う覚悟がある場合は、規定文字数に＋２００文字して構いません。 　但し、行動内容が覚悟に見合うとは言えない場合、護衛士の多くが不必要に命を使おうとした場合、次回以降の行軍に何らかのペナルティが発生します。 ※今回は「ホーリーライトで『魂の石』の色に近い赤を灯しながら、大声を上げて周辺を走り回りつつナパームアローを打ち続ける」等の行為を取らない限り、まず敵とは接触しません。 　４日目の間に、心情や他者との会話などを重視することを推奨します。 睡獅子・バルア(a31559) 2007年07月27日 00時 水滴作成の手伝う。一通り探索予定者の汚れ落としが終わったら自分の装備品についた血糊をゆっくりと丁寧に落とし、傷の手当てと止血を行い血の臭いを出来るだけ消す。休息は取れる範囲で確りと。仲間が探索を行っている間は見張りを兼ねて、拠点から遠眼鏡で周辺に取り立てて目立つものがないか、見える範囲に闇の壁はあるか確認。共通事項は仲間の指示に従う。……無性に声を張り上げ叫びたくなる。隠密行動中なのが酷く残念だ。 チャンピオンハート・トウガ(a42909) 2007年07月27日 00時 「魂の石」ドラゴン等やロードとの繋がりは何か、泣き所とはどんな弱点か、石自体の現在地は感知されているのか、破壊は可能か、グリモアと何か関係は等を霊査依頼。事前に光が漏れぬよう覆い、ロザリーに取り扱いと霊査時の危険性について伺いを立てた後安全なようなら頼む。【心情】…あいつらの死に顔、きっと良い笑顔だったろう。託されたものが重たいぜ。くよくよするのは今日だけだ。明日は…負けねえ！/他行動は共通に準ず 灰眠虎・ロアン(a03190) 2007年07月27日 00時 先ずは水滴で水生成の上汚れ落とし。皆の血水は穴を掘り底に流し埋め、匂い等の痕跡抹消の手伝いに。探索も行きたいけど…、今は休息専念。…４人の繋いでくれた道と希望が潰える事の無いように、今は少しでもケガを治しておきたい。あと二日もすればきっと前のように動ける…。ロザリーの霊査位は手伝うぞ！（疑問）オレは儀式の時の「完全なる結界」っていうのが気にかかってるんだけどな。神様の、とは違うものなんだろうか…？ 悪を断つ竜巻・ルシール(a00044) 2007年07月27日 00時 【共通】まずは部隊が隠れるのに適した場所を探して一時拠点とする。一時拠点を定めた後は交替で見張りに立ち、各自睡眠等をとって十分休憩する。休息を取れたと判断した者から随時周辺探索に赴き、周辺状況の把握や敵の有無の確認・霊査物の収集（渦から落ちてきたと思える物他）等を行う。【個人】拠点に武器を置いておき物陰に隠れつつ探索。敵や脅威となりえると判断したモノを発見した場合はＷＯＬを発動して仲間に知らせ帰還 飄風・カーツェット(a52858) 2007年07月27日 00時 探索。基本行動は共通項に従う。【共通】事前に隠蔽を教わり汚れ落としをする。いずれも発見の際無害であるか確認。常に音を立てず足跡を消しながら移動。【個人】目についた障害物を目標に移動しながら地図作成。水場と霊査材料（落下物など拾える物で）を探す。目的を達成次第皆の所に戻る。深追いはしない。　……今ここで体験している危機がランドアースで待つみんなにも及ぶとしたら…やはり前に進むしかないんだろうな。 流水の道標・グラースプ(a13405) 2007年07月27日 00時 【隠匿】一時拠点決定時、目に付き難い場所を探す際に協力。探索へ出る者へ出来る限り技術を伝える。念の為拠点に留まる者にもある程度教示。また出立時には隠匿持ち全員で協力し痕跡の抹消を徹底【個人】拠点で癒しの水滴で水を作り出し探索へ出る者へ必要に応じ分配、後自身の血糊等の汚れ落とし。また応急手当を教わりつつ止血等の処置を行う。休憩時は邪魔にならぬ様隅で休息。……今は泣き言しか出ない気がするので黙ります。 鏡夜奏想・リア(a13248) 2007年07月27日 00時 休憩中は癒しの水滴で水を溜め、汚れを洗うのに水が足りない人へ渡したり、他の人の傷の具合を見てそれに応じた応急手当を施す。休憩後、探索を中心に周囲の警護。基本行動は共通項に従う。事前に隠匿の技術を教わる。必要に応じて遠眼鏡を使用して周囲警戒を行い、不審な物や音等を見たり聞いた場合、気づかれぬ様その場所からすぐ離れて仲間に連絡。戦闘に不向き、回復もいざと言う時は意味を成さない今、私に何が出来るのだろう 焔を纏う一陣の風・ディーン(a32427) 2007年07月27日 00時 基本行動は共通事項、痕跡除去はグラースプに従う。【探索共通】武器を拠点に置き、有事の際はＷＯＬを使用。【個人】向かう方向を伝え周辺を探索。移動は静かに遮蔽物に沿い、周囲や天井を警戒。地面・水晶等の素材や様子、其れに足跡や何らかの痕跡がないか、足跡等があればどちらに向かっているか等追跡技術を活用し調べる。途中変わった物を見つけたら霊査用に持ち帰る。深追いはせずある程度調べたら帰還しマップ記載を頼む。 武勲詩抄・フレッサー(a37890) 2007年07月27日 00時 軽く睡眠後、水場で念入りに顔を洗い、天を暫し仰ぐ。剣をゆるりと見つめる／探索は隠匿技術を教わり、行く方向を仲間に言う。移動は痕跡を消しつつ静かに。警戒しつつ遠眼鏡を適宜使い遠方も確認。主眼はここがドラゴンズゲート（以下ＤＧ）の可能性を考え、類似性やパワーポイント等ＤＧの痕跡を探す。水晶・光源、水源についても様子を窺い考えてみる。生物の痕跡、地下世界ついての霊査材料も探す。基本行動は共通に準ず 黒紋の灰虎・カラベルク(a03076) 2007年07月27日 00時 基本は共通指針に従い活動と休息。水滴での水作成を行い、血糊を落とし止血を施し出来る限り血の匂いを落とす。また応急手当について望む者に知識を伝えておく。情報を纏める仲間にせめての安めに香草落とした水を差し入れ、休憩を挟めるよう見張りに立つ者同士交代で天井や周辺に動く影や見慣れぬものがないかに注意し見張りに。休息時は剣を抱えて、皆が見える場所で。顔が強張ったままだと幸運も遠のくよと皆の頭を撫でようか。 神の道化・メロス(a38133) 2007年07月27日 00時 拠点で過ごす。水滴で水を作り、傷口を洗った後に服に付いた血糊等汚れを落とす。その後ニューラさんと交代で運び手使用。光対策はチャドルとマントで。楽器は響きそうなので小声で小さな歌を…その後は静かに考え事しつつ休息。　…子供っぽいのかもしれない。甘いのだと思う。それでも…甘受したくないんだ、私は。祈り願うだけじゃダメだから、知恵熱が出るくらい考えるよ…犠牲が出ない方法を。２１本の蒼荊棘で奇跡を起こすんだ 誓桜の重騎士・キースリンド(a42890) 2007年07月27日 00時 共通行動に従う。拠点周辺の探索及び警戒をする。周辺探索の人達の向かう方向を確認しておき、WOLでの合図や、異変を感じたら速やかに状況を確認し、必要であれば援護する。休憩中は癒しの水滴で水を作り適当な器にため、皆に利用して貰う。その内の最小限の水を使い、体を清める。上手くいえないが…今日というこの時間は、ここにいない4人が贈ってくれたのだと思う。今はただ、心からの感謝を… 楽風の・ニューラ(a00126) 2007年07月27日 00時 メロスと交代で光を漏らさぬ様なるべく静かに運び手使用。水で顔を洗う前にこっそり少し泣き、身奇麗にしてからここの光源は何か、何処かを共通注意に従い付近で調査。予想突合せ：ドラグナーの姿が無いのは元々地下に居住を許されてないから？連中や竜が追って来なかったのは渦に入るのを見ていなかった？また竜が今見えないのは地上壁側に侵攻用か魂の石の奪還目的で配置され数が減っている為？ドラゴン達以外の生物の可能性は？ 紅のアサッシン・ヨイヤミ(a12048) 2007年07月27日 01時 【仮】一時拠点にて待機。癒しの水滴で作った水で覆面ごと顔を洗い、休憩に努める。休憩中は睡眠よりも体をほぐすストレッチを中心に。見張りや隠匿作業時には「追跡者の視点」からざっと周囲を確認、及び具体的なアドバイスを可能ならば行う。……旦那サマに手紙の一つでも書いておけばよかったな。 ●次の項目へ ⇒⇒⇒死の行軍５日目