<死の行軍5日目>

 ここに来て、追っ手の数が少なくなりました。
 実はこのとき、ランドアースへと1体のドラゴンが放たれたのだけれど、このときの私達に知る由もなく。つかの間に得られた休息を経て、私達はまた先へと進むのでした。

□【特別業務】死の行軍5日目 荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)

場所:ドラゴン界   2007年07月27日 08時   発言数:16

●地下世界
 護衛士らは身を寄せ合うように抉られた大地の陰を一時的な拠点に選び、表面上は穏やかな休憩に心を浸した。皆の応急手当を手伝い、合間を縫って水を溜めながら鏡夜奏想・リア(a13248)はぼんやり思い悩む。自分には何が出来るのだろう。少し考えてから、案外と近くにある答えに気づいて息を吐いた。自身がドラゴン特務部隊の護衛士である理由なら、既に知っているではないか。
 言葉を紡ぐ代わりに、流水の道標・グラースプ(a13405)は琥珀の煌きを見詰めていた。その簡素な指輪を嵌めることは無く、再び懐に仕舞い直す。そんな彼らの様子を見た黒紋の灰虎・カラベルク(a03076)は、リアとグラースプの頭を気遣わしげに撫でた。
「ほら、顔が強張ってる。……そんなんじゃ、幸運も遠退くよ」
 普段通りの口調で紡いだつもりだが、違和感は無かったろうか。自然と真剣な鋭さを増す自身の言葉を意識的に緩め、カラベルクは顔を上げた2人に微笑み掛けた。
 彼の挙動を目にした荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)は、カラベルクと睡獅子・バルア(a31559)を何度か見比べた後、バルアの黒髪をわしわしと撫でてから通り過ぎた。
「……?」
 何だったんだろう、と思わず視線を向けるも霊査士は何事も無かったかのように荷物の方へ向かっている。小さく首を傾げてから、バルアは作業を再開した。槍に鎧に、そして靴についた血糊を丁寧に落とす。答えを知るものの故さえ、期待も無く尋ねたくなるような憤りがじっとりと胸に滲んで行く。声を張り上げて叫びたい。しかしその衝動は、現実の重みで押さえつけた。
 地上に設営した仮宿と同じく、適当な布で周囲を覆い、簡単ながら洩れる光を幾らか抑えて神の道化・メロス(a38133)ら吟遊詩人は交代に幸せの運び手を使う。久し振りの食事は、少なくとも身体を満たしてくれる。天秤の傾きを想い、ただただ感謝を抱き締めた。
「祈り願うだけじゃダメだから」
 ぽつり、と呟く。
「奇跡を起こすんだ。……21本の、蒼荊棘で」
 甘受出来ないにも関わらず圧倒的なものたちに、何としてでも抗いたい。

 水で冷やした指先を軽く目元に当てながら、楽風の・ニューラ(a00126)は霊査士と現状予測の突合せをする。一先ず、理由は判らないが地下世界にはドラグナーの姿が皆無らしいこと、しかしドラゴンロード降臨の儀の様子から考えるにドラゴンが多く居ることは疑いようもないだろうことを確認した。
「……私は起きていなかったから、何とも言えないのだけれど」
 霊査士は僅かに小首を傾げながら、地下に至ったことは当然あちらにも伝わっている筈だ、と答える。ドラグナーらの行動は追撃が始まった頃より変わらず、目の前の釣り糸に躊躇わず食いつくような、理性が無いようにも先を考える必要性を感じていないようにも見えた。渦に入るところが見られていないと考えるのは楽観視も過ぎるが、と霊査士は続ける。
「誰かが頑張ったから追っ手を防げた。……今は、それで良いと思うけど」
 植物では有り得ない硝子の花のような硬質の物体から情報を引き出しつつ、ドラゴンたちが今、見えない理由は闇の付近に設置されているからだろうと頷いた。闇を隔てた先で何が起きているのかまでは霊査の力も及ばない。今は想いを馳せるならば兎も角、ランドアースを案じる暇など当然のように無いのだが。
「地下世界は地上に比べて、ずっとずっと広大みたい。だから……、脱出までは更に時間が掛かるかも知れないけれど、隠れるものも多いし、そういう意味では安全かも知れない」
 霊査士は不意に表情を改め、ふんわり柔らかく微笑んだ。
「折角だから、言っておくわね。重たい役割は、本来、命を懸けても果たせるか如何か判らないものなの。戻るつもりがあるのなら、それは何も担えていないの。私が言わなければ理解し難いなら、次からは『この行軍を開始する前に誰か死ぬ人を決めて』って言っても良い」
 彼らは――
 彼らは、立派に務めを果たした。
 4人が死ぬ殿を、彼女は1人で担った。
 及んだ全滅の危機を、彼は1人で払った。
 足止めに当たる6人が死ぬような窮地を、彼と彼女は2人で防いだ。
 彼らの真似は誰にも出来ない。彼らは既に命を懸けて、奇跡と言うに値するほどの未来を導き出している。
「犠牲無く帰る為には神をも欺くような作戦が必要。でも、最良の結果を期待しないで、最悪の結果を避けて行けば犠牲が減る。もう一度繰り返すけれど、『その作戦が失敗したら足止め』と言うのは凄く遅いの」
 犠牲は約束されたものではない。
 犠牲を生まずに帰ることが、本当に本当に難しいだけだ。
「……知恵熱が出るくらい、考えるよ」
 メロスの返答に、霊査士は笑みを薄め頷く。
 もう、何度くらい脅しの言葉を口にしただろう。
 護衛士を募集した日にも、死の行軍を開始する前にも、ことあるごとに告げて来たつもりだ。皆はもう気づいていると知りながら、敢えて繰り返し紡ぐのは頭が痛くなる作業だった。しかし、もう後は無いのだ。甘い励ましを口にして期待を抱かれてしまえば、全てがそこで終わるだろうから。

「ロザリー、ちょっといいか?」
 灰眠虎・ロアン(a03190)は、『魂の石』を入れた鞄に手を伸ばしている霊査士に近付いた。身体の痛みも随分引いている。気持ちを抑えながら、ドラゴンロードの語った「完全なる結界」とは恐らく『魂の石』が作り出すものだと考えられるが何なのだろうと相談する。
「ん。……ドラグナーからの情報を整理すると、多分。ドラゴンロードが意識するだけで、特定の存在をこの世界から外に出すことが出来ると言う『結界』じゃないかしら。ランドアースじゃなく、虚無の中に放られて消滅する。……私たちに今、その力が向けられていないのは『魂の石』ごと外に追い出すことになるから、だと思う」
 石の力が強過ぎて、人の力が弱過ぎて、細やかな調整は効かないのだろう。更に『魂の石』の危険性は勿論、特にドラゴンロードに関わる事柄であればさっぱり判らないと霊査士は言い添えた。
 チャンピオンハート・トウガ(a42909)はがりがりと後頭部を掻いた。少なくとも、『魂の石』をそう簡単に破壊することは出来ないらしい。彼が思い切り蛮刀を叩きつけても、腕が痺れるばかりで傷ひとつ付かなかった。『魂の石』の在り処を感知されているか否かを現状からは判断出来ないが、何にせよ、何処から地下に落ちたかが伝わり次第この付近に追っ手が差し向けられるのだろう。
「いや……負けねえ」
 決意は、ひとつだ。
 それだけの話なのだ。
「まずは移動しましょう。水晶柱の立ち並ぶ辺りを抜けて、透明な丘を登る感じ。足場が悪いから、気をつけないと大変かも。それに、グランスティードだと狭くて通り抜け難いかもしれないわ。……未だ誰も死ぬ必要は無いから。どれくらい素早く、多くの距離を移動出来るか……それが、今後に響くと思っていて? 次に身を潜めた時、掛けられている追っ手の数から、改めて次の動きを考えましょう」
 霊査士は敢えて告げなかった。
 希望の灯火が、徐々に近付いて居ることを。
 何事も無ければ、残すところ数日で脱出が叶うだろうことを。

冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし


!死の行軍5日目!

■締め切り:7月28日(土)0時59分
■行動内容は200文字以内に纏めてください。
■必ずしも全員が描写されるとは限りません。
■業務に参加した護衛士は、行動次第で重傷・死亡を負うことがあります。
■命を使う覚悟がある場合は、規定文字数に+200文字して構いません。
 但し、行動内容が覚悟に見合うとは言えない場合、護衛士の多くが不必要に命を使おうとした場合、次回以降の行軍に何らかのペナルティが発生します。

チャンピオンハート・トウガ(a42909) 2007年07月27日 23時
【共通】足裏にロープを巻き滑り止め対策。登り、下りともに注意しつつ、移動は迅速に。隊列は1列2列など適宜変更。上空、遠方へも警戒しつつ、進行速度を落とさない程度に。隠匿持ちは足跡隠匿。フワリンを使用可能且つ効率がいい場合に使用。スティードも同様。/何らかの存在(追跡者、監視者等)、罠があると想定し、全体へも注意喚起。万一の場合は残り戦闘行動。注意を惹き付け本隊離脱の時間を稼ぐ。命そのものをぶつける。
悪を断つ竜巻・ルシール(a00044) 2007年07月28日 00時
出発前に武器を移動の邪魔にならない様に背負っておきます。移動時は隊列中衛の前寄りに位置し、腕力駆使して重傷者の悪路移動や登攀・ロープによる補助等を行う。(必要なら蜘蛛糸も使用)召喚獣はグランスティードが必要な箇所以外では消しておきます。ただし一寸した段差等では召喚獣を台代わりにします。(その場合は召喚獣の足元もロープや蜘蛛糸で補強)なおその他の足元対策や記載外の事については部隊共通事項に従います。
紅のアサッシン・ヨイヤミ(a12048) 2007年07月28日 00時
本隊先行で行動。注意事項は皆に合わせて。腕や足に適時蜘蛛糸を巻きつけてバランスを取りながら移動する。蜘蛛糸による補強が必要そうな箇所を確認し、必要ならば事前に補強し、手を貸すなどして隊が迅速に進むコトを心掛ける。進行中は水晶に移る光景や音に特に留意。ひび割れる音などの異変を感じたら急ぎ後続に伝え、補強などで対処が可能なモノは大急ぎで補修する。
飄風・カーツェット(a52858) 2007年07月28日 00時
本隊最後尾で行動。基本は共通項に従う。移動中は常に足元と上空を含めた周囲の状況を警戒。足場に余裕がある状態であれば遠眼鏡使用。常に迅速に行動。敵など危機的状況を発見した際はすぐに本隊に知らせ先を急がせる。重傷者に対し移動補助を行う【共通】崩落に巻き込まれた際は蜘蛛糸で手近な壁に貼り付いてから手足に巻きつかせ急いで上へよじ登る。効果時間が切れる直前に再使用。回避路のない脆い足場には蜘蛛糸を束ねて補強
武勲詩抄・フレッサー(a37890) 2007年07月28日 00時
基本行動は共通に従う。先行として進む。移動は趣味の山登りで歩き易く、より滑らない、崩落等の危険が少ないルートを後続にも示す。歩き方の指示や指揮を行い、ペースの配分にも留意し最も安全に早く行軍できる様に計らう。武器は取り回しに最大限注意/何らかの事態で本隊が敵に見付かりそうな時は囮となる。本隊離脱時は、敵の視線に警戒、本隊の位置を悟られぬ様、出来るだけ見つからず本隊から離れ、可能な限り速く移動し姿を顕す。その直前に殲術の構えを使用、切れる毎に使う。距離が取れ、敵が気づかない様なら、わざと見える程度に隠れて音を立てて歩き、さらにはミストフィールド(以下MF)を使用、領域から出て敵の気を引きに走る。追う素振りを見せたら、何か(カンテラ)を抱えてる風を装い早駆けで攻撃が届くか届かぬかで逃げ、そうと悟らせぬ様本隊から遠くへ引っ張り逃げる。MFを適宜使用。食いつきが悪い時はホーリーライト、魂の石色風に
睡獅子・バルア(a31559) 2007年07月28日 00時
本隊中程で行動。棒を丁度良い長さに折り移動時の支えに使用。地面との接触面に革布を巻き滑り止めと消音を施す。移動と周囲の警戒を同時に行う事で、移動速度が健常者より遅れる場合は移動に専念。騎乗可能時は騎乗にて時間短縮。歩きの時は周囲の突起に手をかけたり棒で体を支えつつ一歩一歩確実に且つ迅速に。1人での移動が困難な箇所は健常者の補助を受ける。滑りやすい箇所は周囲に注意を喚起。記載外は仲間の指示に従う。
楽風の・ニューラ(a00126) 2007年07月28日 00時
共通事項に従い、身軽な格好で列半ばに位置して進む。フワリンが使える場所ではフワリンを使える人が手分けして重傷者優先で二人乗りで運ぶ。下が絶壁などの場所では時間切れで落ちないようにフワリンより前に土塊を呼び出して時計代わりにし、土塊が消えたら次のフワリンを呼んで乗り換える。ドラゴン等敵っぽい異物が視界にいないか、こまめに遠眼鏡で確認。怪しいものがあったら仲間に知らせ、近く退避できる場所を探し退避
黒紋の灰虎・カラベルク(a03076) 2007年07月28日 00時
基本は仲間の共通指針に従い蜘蛛糸・召喚獣共に本隊にて距離を稼ぐに足るよう行動。装備類は音鳴り防止を施し進むに易く手足をあける様身に付け、脆い箇所や進み難い地点の進行を助け合いを心がける。周辺強度有り落下・負傷の可能性少なく止まるための窪みや手箇所があり時短のため滑り降りるが可能そうな場合は提言。万一の際はキースリンドの進行を易くフォローする為蜘蛛糸やロープを使用し危険直下域からの迅速な離脱を推進。
焔を纏う一陣の風・ディーン(a32427) 2007年07月28日 00時
基本行動は共通項に従う。本隊最後尾にて行動。足元・周囲地面の状態には注意し、なるべく音を立てぬよう留意。バランスを崩さぬよう重心を低くして本隊の速度を乱さぬよう進む。常に周囲と後方・上空を警戒、必要なら遠眼鏡も駆使。危険を感じたら即座に本隊に注意喚起し急がせる。必要に応じて蜘蛛糸にて足元や掌の補強を行う。可能であれば足跡等の痕跡は仲間に指示しつつ、隠匿の技術を活用し除去。
鏡夜奏想・リア(a13248) 2007年07月28日 00時
基本は共通項に従う。本隊中央で行動。踏破困難な亀裂や段差がある場合、周囲確認後大丈夫ならフワリンを随時呼び渡る(効果時間切れ前に再度召喚)登攀時少しでも装備重量を抑えたい時は、装備品等を纏めてロープで上げて貰う。誰かが転がり落ちた時は、即座に周りの者に補助を頼み蜘蛛糸を使い落ちるのを食い止める。進行に必要なアビの総量を考え、ある程度の距離を進んだ後、周囲に敵影が無く潜伏出来る場所を発見次第行軍停止
灰眠虎・ロアン(a03190) 2007年07月28日 00時
本隊で移動、共通項は倣う。止血と匂い対策は忘れず。蜘蛛糸使用も皆に倣う。先行からの異変伝達時は即隠れる。【共通】隊列…先行と本隊。重傷者&ロザリーを本隊中央で補助者と交互に配置。足場の脆い箇所は負荷分散の為固まり過ぎない。荷は分け合い速度を揃える。フワリン輸送等で僅かでも止まり待機時間があれば筋肉を解し疲労軽減に。召喚獣は待機を基本としスティード等必要に応じ喚ぶ。フワリン使用時可能な限り命綱併用。
魔王様・ユウ(a18227) 2007年07月28日 00時
本体にて行動。事前に編み上げ靴等で必要最低限の準備をする。共通事項には従う。行軍の阻害にならない程度に遠眼鏡で周辺の状況の確認と警戒を行い、周辺警戒を行っていないときは足場の確認をしつつ足場が崩れそうな場所があれば後ろに居る者にその位置を知らせる。何か有用そうな霊査材料があれば無理をしない程度に確保しておく。カンテラに布をかぶせ行軍に必要なだけでの光量を確保し、光は水晶による乱反射にも気をつける
誓桜の重騎士・キースリンド(a42890) 2007年07月28日 00時
本隊にて行動。ロザリーの後方に位置し、悪路移動時の補助を行う。安全に使用できる箇所では召喚獣に騎乗して貰い、体力の消耗を少なくする。魂の石は光が漏れない様、厳重にマントなどで包み、背負袋に入れて背負う。ロザリーが気絶する事態が起きた場合は、すぐに支え、適宜、鎧聖降臨・君を守ると誓うを使用して、安全確保を最優先にする。他に鎧聖降臨が必要な人がいれば使用。記入外のことは部隊の注意事項、共通行動に従う。
流水の道標・グラースプ(a13405) 2007年07月28日 00時
共通事項は他者に従う。本隊中程に位置。視認での警戒等は周りに任せ低い姿勢と確実な歩行で自身の速度を少しでも早める努力。但し可能な範囲で周囲の音に気を配り、異変を察したら周囲に伝達。通過が困難な場所では健常者に協力を求め可能な場所ではグランスティードに乗せて貰う。蜘蛛糸活性者と行動を共にし、フワリン召喚の際は効果時間に留意。足場が無い場所等での使用の際はその箇所の手前で新しく召喚し直し効果切れを防ぐ
神の道化・メロス(a38133) 2007年07月28日 00時
本隊中央配置。進み方、進む道筋をしっかり確認しつつ足元を確かめて進む。速度が落ちそうな場合は健常者に手助けをお願いする。蜘蛛糸は滑り易い場所全般で共通の対策では不足な場合に滑り止め、崩れそうな足場を進む必要がある場合等に足場の補強、転落時に何処かに摑まる為に使用。効果時間には常に注意し切れそうなら余裕を持って次を使用。フワリンに乗せて貰える場合はお願いし、短時間でも息等を整える。他、共通に従う
●次の項目へ
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