<毒沼を越えて>


【移動】毒沼を越えて

仮面の霊査士・エドワウ(a90136)
場所:部隊本部   2008年11月24日 01時   発言数:23
  「諸君、疲れていることと思うが、聞いてもらいたい」
 イカダを作り終えて休んでいた隊員達に、エドワウが声をかけて来た。
「我々は準備が出来次第、ドラゴン界へと潜入する。分かっているとは思うが、ここから先、後戻りは出来ない。魂の石を奪い、脱出するまで、だ」
 改めて覚悟を問うように、霊査士は隊員達に視線を投げる。

「ドラゴン界への潜入は諸君が作ったイカダを用いて行うが、その際にもドラゴンに発見されないよう細心の注意を払わなければならない。もし戦闘となってしまえば、たとえ勝利したとしても、もはや任務の続行は不可能となる」
 必要な偽装や、潜入のタイミングについては隊員達に一任するとエドワウは語った。

「また、ドラゴン界の内部の様子は一切不明だ。ヴァラケウスのドラゴン界、ブックドミネーターのドラゴン界双方を経験した者ならば分かっていると思うが、ドラゴン界内部は支配するドラゴンロードによって全く異なる世界となっている」
 灼熱の世界であったヴァラケウスのドラゴン界に対し、ブックドミネーターのドラゴン界は極寒の世界だった。ブックドミネーターのドラゴン界は蒼氷の大神ザウスがもたらした神命維持装置と一体化したルラルによって予め内部の情報が分かっていたが、今回はそれもない。
「とはいえ、ドラゴン界に共通の性質は変わらないと予想されるが」
 エドワウはそう前置きし、一呼吸置くと、
「だが最悪、ブックドミネーターのフリージングタイムゲートのような、悪辣な罠が仕掛けてあるとも限らない。十分に注意してくれたまえ」
 そう、洒落にならない警告をした。

=======イカダについて=======
 ドラゴン界に向かうためのイカダは複数あります。行動内容を発言する際に、乗るイカダの名称を【 】をつけて記載して下さい。(なお、エドワウもどこかのイカダに一緒に乗せて下さい)
 つまり最大20艘のイカダで行けますが、数が増えると発見される可能性は上がりますし、漕ぐ人数が減る分、移動速度は下がります。
 逆にイカダの数が少ない=イカダが大きい場合、移動速度は上がりますが、発見される危険度も上がってしまいます。相談の上、適切な数のイカダに分乗して下さい。

========注意事項=========
行動の内容を200文字以内で纏め、このスレッドに発言して下さい。
なお、選択肢は各自の行動方針を決めるものです。

締切: 11月25日(火) 8時のタイムスタンプまで
 締切までに当スレッドへの発言を行わなかった団員は強制退団となります。
 また、このスレッドに発言を行った団員は、締切と共に冒険者の酒場、闘技場、ドラゴンズゲートが使用不能になります。

 行動内容によっては、重傷・死亡が発生する可能性もあります。
 なお、必ずしも全員が描写されるわけではありません。


1. 毒沼の突破重視
   (15)
2. ドラゴン界内の情報収集重視
   (5)

仮面の霊査士・エドワウ(a90136) 2008年11月24日 13時
追加。締切り後は、この護衛士団を除く旅団も使用不能になる。
翠玉の祈花・リアンシェ(a22889) 2008年11月24日 23時
【三号】共通方針に従う。事前に沼を観察、流木等で速度を落とさぬ進路を探す。ウィーの合図後仲間に触り急を連絡。ドラゴン界突入後は追跡技能で敵痕跡を確認、常に隠れられる場所がないか探しつつ痕跡の少ない方向へ移動、万一はそれらに隠れ敵を遣り過す。拠点は障害物が多い、出口が複数在る洞窟や岩を基準に選定。行軍中反射に注意し遠眼鏡で随時上空の敵影確認。必要に応じ眠りの歌や静謐使用、HWは遮光し使用。(2. ドラゴン界内の情報収集重視)
導き手・カナ(a59024) 2008年11月24日 23時
【二号】共通方針には従う。出発前から沼をよく観察。動物の動きがないかを確認。動きがあったら即座に報告。これは沼を渡る時も同様。もし沼の生き物がこっちに近づいてきたらまず魅了の歌。反応ありなら付近の状況を聞く。反応なしならすぐ眠りの歌。ドラゴン界突入後、周りの地形できれば記録。移動の時常に警戒しながら進み、怪しい影は遠眼鏡で確認。戦闘になった場合は高らかな凱歌で支援。その際できるだけ声は絞る。(2. ドラゴン界内の情報収集重視)
黄昏の疾風・ブリュネル(a37293) 2008年11月25日 00時
【一号】漕ぎ手。共通方針に従う。筏の偽装は隠匿持ちを手伝う。左上方を警戒し視覚だけではなく風の流れや匂い・音にも注意を払う。少しでも異変に気づいたら筏内の仲間に小声で知らせる。タスクリーダーでの指示に従い、他の漕ぎ手と息を合わせ可能な限り静かに力強く漕ぐ。速やかにドラゴン界に乗り込む事を最優先。ドラゴン界突入時には、どんな反動があるか判らないので自我をしっかり持つ。戦闘時には血の覚醒を使用し攻撃。(1. 毒沼の突破重視)
白銀の舞風・セルフィ(a09437) 2008年11月25日 01時
【一号】漕ぎ手。ユナさんのタスクRに従い、主に進路修正に留意して漕ぎます。櫂の入水・出水時は音を立てないよう特に注意。可能なら夜目で沼面の監視も行い、異変を感じたら小声で周囲に連絡。障害物等、異変の元が避けられるものであれば、なるべく避けるようにします/共通方針:隠匿所持者の指示に従い、筏は沼色に近い色の布(テントを裂く等して調達)で覆って偽装し、各人も同色のマント・覆面を着用。各共通方針に従う。(1. 毒沼の突破重視)
黒鴉韻帝・ルワ(a37117) 2008年11月25日 02時
【一号】各共通方針に従う。召喚獣に消音指示。出立痕は隠匿技能を用いて隠蔽。遠眼鏡で周囲警戒、近付く生物は眠りの歌(乱発は控え使用後素早く召喚獣待機命令)で無力化。進行中は毒消しの風使用。突入後、目立つ建造物や自然物の有無や遮蔽物の多い地点を確認。その周囲で何か行っている場合其処を遠眼鏡で観察、見えた事を地図に記入してもらう。敵発見時は遮蔽物に隠れ可能なら会話を聞き進行のヒントになる情報は仲間に伝達(2. ドラゴン界内の情報収集重視)
燬沃紡唄・ウィー(a18981) 2008年11月25日 02時
【三号】各共通方針遵守。出立前隠匿を用い沼で目立たぬ色や形に偽装。仲間と連携入し念に手早く。団長を乗せ筏では極力屈む。筏の大きさは必要最小限。使用可能なら夜目で自筏と他筏の周囲や水中を警戒。敵影や気になる点・団長が気絶する事態があれば即タスクRで詳細伝達。夜目とタスクが同ターン内使用不可なら先にリアンシェに合図しタスクで連絡。ドラゴン界突入時等邪竜導士として気になる事はその方角や感覚を覚えておく。(1. 毒沼の突破重視)
黎旦の背徳者・ディオ(a35238) 2008年11月25日 02時
【一号】渡航中は背後・上空の警戒。敵対意思のあるモノと遭遇した場合は眠りの歌。召喚獣は再度待機命令。気分を害した者には毒消しの風を。浸入後は指示に従い隠匿行為。次いで、ドラゴン・ドラグナーの動きを監視。守護していそうな場所・向かう先に一定性がないかを確認・記録。遠眼鏡使用時は射光せぬよう留意。他者記載共通方針厳守。/共通方針:水面を激しく波立てぬ範囲で、速やかに渡航。上空に敵がいる際は一時停止。(2. ドラゴン界内の情報収集重視)
武騎士・アレスタ(a32233) 2008年11月25日 02時
【三号】漕ぎ手。各共通事項に従う。出発前に部隊痕跡を隠し、上空から目立たぬよう偽装した筏で出発。自身には偽装用マントで目立たぬよう処置。毒沼に気をつけつつ、左沼面方向を重点に目を光らせ、何か異変があったらすぐに手や小声で合図して知らせる。漕ぎの効率が上がるよう、漕ぎ手全員の息が合うよう努力。ドラゴンが視界に入った場合は漕ぎを一時停止。ドラゴン界突入後も気を抜かず、速やかに岸に上がり、身を隠す。(1. 毒沼の突破重視)

夜を染める白・フリッツ(a66410) 2008年11月25日 02時
【三号】漕ぎ手。右前側で沼面警戒担当。エドワウに同乗して貰う。共通方針遵守。筏内にタスクリーダーで声を掛けつつ漕ぐ。ドラゴン発見時は待機。沼生物襲来時はエドワウを庇い眠りの歌で足止め。予め一号に武器を渡し、ドラゴン発見(一時停止)・ドラゴン界内部で戦闘発生時にウェポン・オーバードライブで合図。二号からの武器が消える等の異変時はタスクリーダーで伝達。/共通方針:各漕ぎ手は櫂の保護に細心の注意を払う。(1. 毒沼の突破重視)
幼き眩惑の狐姫・セレス(a16159) 2008年11月25日 03時
共通方針に従う。【二号】の漕ぎ手、位置は右側後方で上空に注意を払い異変を感じたら小声で伝達。雲(雲で見逃す可能性有り)・黒い点に注意。少しでも水が跳ねない様、水音が少しでも抑えれる位慎重に、タスクリーダーの掛け声に合わせて漕ぐ。泥水(≠毒水)を黒外套に塗り偽装、漕ぐ際は身を低く立て膝、少しでも発見され難くなる様に。出立時に自分含む隠匿技能者と協力し泥水で筏を偽装し、到着後も同じ要領で筏を隠す。(1. 毒沼の突破重視)
永劫の剣・エッセン(a52445) 2008年11月25日 03時
全体の共通方針に従う。【三号】筏の漕ぎ手。出発前に部隊の痕跡を消すのを手伝い、自身は目立たぬ偽装したマントを羽織る。出発後は筏の左前で櫂で漕ぎつつ常に上空を警戒する。上空を監視し僅かでも何か異変等があれば、仲間に報せる。同じ筏の漕ぎ手と息を合わせ、連携し効率良く漕いで素早く沼地を渡れるよう努力する。ドラゴン界へ突入後は、筏の隠匿を手伝い、敵に発見されぬようにしながら上空及び周囲を油断せず警戒する。(1. 毒沼の突破重視)
八葉蓮華・セリハ(a46146) 2008年11月25日 03時
【二号】右側後方漕ぎ手兼合図。共通方針には従う。移動時はタスクリーダーにて、漕ぐタイミングを合わせる為音頭を取り、預かった一号乗船者の武器がWODによって消えたり敵影発見時には停船を合図。移動再開は安全確認後。また、効果範囲か否かで他の筏との距離を知る目安に。筏は同班の方と共に沼と似た色の布や植物で偽装を施し、突入後は周辺の閉所や物陰に隠匿。場所探し序に地面や空等、界内の特徴を大まかに観察、伝達。(1. 毒沼の突破重視)
絶対零度の剃刀・ヨイヤミ(a12048) 2008年11月25日 05時
【三号】の漕ぎ手。共通方針順守。右側上空の警戒担当。ドラゴンに発見されないコトを念頭に雲などの陰に注視を払う。警戒の際は「上空を飛ぶ自分は何に違和感を感じるか」を常に考えながら状況確認。また漕ぐ際は他の漕ぎ手と呼吸を合わせるコトで移動速度の向上を。湖面で停止する際には予め似せたマントを用意するなど配慮。突入成功後も引き続き周囲の警戒にあたり「ドラゴン界にどんな印象を受けるか」に留意。(1. 毒沼の突破重視)
風来の冒険者・ルーク(a06668) 2008年11月25日 06時
【一号】の漕ぎ手。移動、毒沼対策等は共通方針に従う事が前提。周囲を警戒しつつ息を合わせて水音を大きくたてないように漕ぐ。毒沼にも注意を払い、毒気な場所は出来る限り避けながら移動する。万一誰かが筏から落ちたのなら用意しておいたロープですぐに救助する。射光に注意しつつ遠視鏡で上空を重点に警戒してドラゴンの気配を感じたらWODで【二号】に預けておいた武器を呼び出して知らせる。その後は方針に従い身を隠す。(1. 毒沼の突破重視)

耀う祈跡・エニル(a74899) 2008年11月25日 07時
【二号】各共通方針準拠※共通方針:毒対策に覆面の口元に布をあて、毒状態は状態異常回復アビで処置/移動時はドラゴン界側を警戒。敵影確認次第タスク活性者へハンドサイン。三号へWODで連絡を。同筏内の負傷者は静謐と癒水で回復。到着後、発見されないよう注意。特徴的な建造物や儀式様式等あれば遠眼鏡併用し趣味の絵画で描写。敵がいれば戦力、警備状況を確認する。出発前到着後の擬装は隠匿所持者の指示に従って手伝う。(2. ドラゴン界内の情報収集重視)
綺羅蟠る帷・イドゥナ(a14926) 2008年11月25日 07時
【一号】共通方針に従う。漕ぎ手。ユナの合図に合わせ、櫂の音や水の波を余り立てぬ範囲で皆との速度を保ち続けるよう心掛ける。沼水面状況(不自然な物体・隆起・影・波・音・匂い)の変化を意識。異変があれば小声で周囲に伝え、息を潜めてその箇所を警戒。対応は仲間に任せ、完全に収まれば移動を再開。上空の異変は微動せぬ様に潜み、その際に筏の状況を見、無理がないか確認/共通方針:各筏の角線位置に体能力値が近い者が配置(1. 毒沼の突破重視)
ヒトの武人・ヨハン(a62570) 2008年11月25日 07時
【二号】左側漕ぎ手※共通方針:事前に一号→二号→三号の順でタスクリーダー活性化者へウェポン・オーバードライブ活性化者が武器を渡しドラゴン発見(一時停止)ドラゴン界内部で戦闘発生時で知らせる。到着後隠匿持ちの指示で筏を隠す。各共通方針順守/セリハの合図に合わせ身を低くし周囲と上空を警戒。力が偏らないよう静かに漕ぎ落ちた者はロープで即救助。生物接近時眠りの歌。ドラゴン出現時は静かに漕ぎやめやり過ごす。(1. 毒沼の突破重視)
幻葬舞踏・エミリオ(a48690) 2008年11月25日 07時
【二号】共通方針には従う。出発前に部隊がいた痕跡を極力排除。隠匿持ちの指示に従って片づけを手伝う。出発したら夜目と遠眼鏡を併用して上空を主に周囲を警戒。ただし遠眼鏡は常に反射しないよう注意を払う。動くもの、殊更ドラゴン等の敵対生物への警戒を厳に。発見次第味方に通達。毒に中った味方がいたら毒消しの風奥義での治療を試みる。無論周囲を警戒してから。ドラゴン界では違和感等感覚的な異常がないか気を配る(1. 毒沼の突破重視)
蒼の閃剣・シュウ(a00014) 2008年11月25日 07時
【二号】漕ぎ手、※共通方針『出立』:夕暮れに出発。召喚獣は待機命令。他、共通方針には従う。セリハの合図に合わせ漕ぐ。移動中、水面や他筏にも注意を払い異変発見時は筏内メンバーに小声で伝達。視界だけに頼らず音や匂いも留意。異変が迫るなら小声で眠りの歌を使用し無力化し再び召喚獣を隠し先へ急ぐ。対岸到着後(ドラゴン界突入後)、周囲に異変なければ筏は引き上げセリハ、セレスと共に擬装し森などへ隠す。(1. 毒沼の突破重視)
胡蜂・ユナ(a76447) 2008年11月25日 07時
【一号】合図役。共通方針は全て従う。イカダ中央で身を屈め、漕ぎ手対象にタスクリーダーの心の声で音頭を取り櫂漕ぎのタイミング統一。預かった武器が消えた時及び同乗者の敵確認連絡を受けた時は全員に停止伝達。/※共通方針・略称:タスク・タスクR=タスクリーダー、WOD=ウェポン・オーバードライブ。/※共通方針・ドラゴン界突入時:外壁に武器を差し込み安全確認後、イカダの掴める所を掴み意識を強く保ちつつ突入。(1. 毒沼の突破重視)
仮面の霊査士・エドワウ(a90136) 2008年11月25日 09時
全員の行動を確認した。ドラゴン界へ出発する。

【結果】毒沼を越えて

仮面の霊査士・エドワウ(a90136)
場所:部隊本部   2008年11月25日 11時   発言数:1
 夕暮れ時。
 魂の石奪取部隊の隊員達を乗せたイカダは、静かにドラゴン界へと水面を滑り出した。
 水面を行くイカダは3艘。
 掛け声一つ無い静かな滑り出しは、ユナ、ウィーらのタスクリーダーによって合図が為されたためのものだ。
 イカダのそれぞれは上空から発見されづらいよう色の面でも偽装を施され、分乗した団員達もまた同様の格好で身を包んでいる。

 沼の水面は静かで、生命の気配すらその内側に感じ取る事は出来ない。
「もっとも、このイカダを作った木みたいに、毒沼に適応した生物がいないとも限らないからね……」
 イカダ三号に乗ったウィーが周囲を見回す。
 とはいえ、沼の水は相変わらずの紫色だ。夕闇に沈み往こうとする今の時間において、水面下を見通すのは不可能に近い。漕ぎ手達はなるべく水音を立てぬように留意してはいるが、イカダの移動で起こる波が、他の情報も掻き消してしまっている。
(「もしいるとしても、存在を知る事が出来るのは、イカダが襲われた時でござるな……」)
 自分達はともかく、イカダはそれほど頑丈なものでは無い。攻撃を受ければ即座にお陀仏だ。
 そう思いつつも、アレスタはまた櫂を一漕ぎ。
 後戻りするという選択肢は、彼らには無いのだ。
 前方、ドラゴン界の周囲には、どこか心をざわつかせる黒い雲がわだかまっていた。

 心配したような危険な生物の襲撃も無いまま、沼上に出て数時間が経とうとしていた。
 漕ぎ手達の腕にも、疲労が溜まりつつある。
 ここまでに、心配されていたようなドラゴンや危険生物の襲撃は無かった。
 偽装が功を奏したと言えるだろう。だが、逆にこちらからも、上空への警戒はほとんど出来ないような状況だった。
 既に日は落ち、周囲は暗い。
 光を灯すわけにはいかず、他のイカダの位置もほとんど見えない。時折微かに聞こえる水音、タスクリーダーの心の声が届いている事だけが、他のイカダがそこにいる事を示していた。
 やがて頭上に見えていた星明りも消え、隊員達は自分達が先程見えていた雲の下に入った事を知る。
「なんだろ、あの光?」
 セレスがそう言葉を発したのは、そんな時だった。
 遥か頭上、おそらくは雲の中で、眩い光が閃いたのだ。
 すぐさまエミリオのタスクリーダーによってその情報は伝達され、一同は頭上を見上げる。
 瞬間、
「――!?」
 思わず上げた声は、しかしすぐさま起こった轟音にかき消されていた。
 真白き稲光がイカダの近くの水面を撃ち、水が弾け波が起こる。爆発的な波が起こり、水しぶきが隊員達に降り注いだ。
 いきなり気絶したエドワウを庇ったフリッツは、怒鳴るように声を上げた。
「急いでここを突破するんだ!」
 稲光と雷鳴は続き、巻き起こる波にイカダは木の葉のように翻弄される。怒鳴りでもしなければ、隣の者にも声は届かない。
 もはや形振り構っていられる状況ではなく、隊員達は全力でイカダを漕ぎ始めた。
「こっちに反応したのか!?」
「いや、どうやら違うようだ……!」
 眩さに目を細めながら頭上を見上げたブリュネルが、ルークに答える。
 雷の源は、ドラゴン界だ。
 ドラゴン界から放たれた雷は雲に潜り込み、雲の中で威力を増して水面に叩き付けられて来る。
 場所に法則性が見て取れないのが、却って不安だった。
「『始まった』ということか……!?」
「ギリギリセーフってところか! 正直こんなの中に突っ込む気にはなれないな!」
 その問いに答えが返る事は無い。
 眩く照らされる沼の上をイカダは進み、やがてドラゴン界へと突っ込んで行った。

 ドラゴン界に入った瞬間、隊員達が感じたのは激しい水音だった。
 これまでの沼とはまるで異なる水の流れが、イカダを押し流して行く。
 その前方にあるのは、滝だ。フラウウインド大陸の南北を遮る断崖を思わせるような落差で、水が轟々と流れ落ちている。
「落ちる……!?」
「飛ぶんだ! セリハ、セレス、イカダを!」
 咄嗟にドラゴンウォリアーの力を解放したシュウの声に、セリハ、セレスの2人が飛んだ。重量のあるイカダとはいえ、ドラゴンウォリアーの力を持ってすれば容易く支える事が出来る。
 他の隊員達も次々と飛翔し、周囲を見渡した。
「それにしても……また凄いところだね」
 呆れたような声を上げたのはカナだ。
 空中を飛んでいる隊員達の足元には、外の沼地に倍するような毒々しさを漂わせた水面が一面に広がっていた。ドラゴンウォリアーになっている今ならばあの水に浸かっても死ぬような事は無いはずだが、望んで潜る気には到底なれそうにない。
 頭上は暗雲に覆われ、そこから生まれる雷が、ひっきりなしに水面へと降り注いている。その衝撃が毒気をはらんだ蒸気を産み、その蒸気は雷を生む暗雲へと成長していくのだ。
 そして何より、陸地と呼べるようなものが、全く見当たらない。
「海の真ん中に出たようなものだな……」
 ドラゴンやドラグナーの姿が見えないのは幸いだったが、これでは休むことも隠れることも出来そうに無い。
「早急に移動するとしよう。魂の石を探さねばならないし……今戦闘になると私が落ちるからな」
 眼下で波打つ水面を見下ろしながら、エドワウは隊員達にそう指示を出した。

●次の項目へ
⇒⇒⇒【探索】毒海のドラゴン界