【1月15日】茨城県つくば市


<オープニング>

 冬の緩やかな陽射しに包まれた街は、死につつあった。
 斜めに差し込む陽射しに混ざって何か黒い疾風のようなものが街路を行き過ぎると、笑いさざめきながら街路を歩む人々は首や胸から赤い花を咲かせて、次々に冷たい骸と化して路上に横たわった。
 何が起きているのか気付く間もなく、また気付いても悲鳴を上げる余裕すらなく。
 沈黙を保つことが死者の仲間入りの儀式だとでもいうように、百余りを数える黒影のいずれかとすれ違った人々は静かにその命を冬空に撒き散らし続け、静寂が支配する領域は波が溢れるように街の内から外へと広がっていった。
 やがて無音の殺戮劇が終了し、昼の白光と活気に包まれた街が万を越える屍と鮮血の赤に染め上げられた死の街に化したとき。
 唐突に日常を失った異様な光景のただ中に、ふらりとその男は姿を現した。
「ふむ、一つの街に黄昏をもたらしたのは久々だ。『抗体』とやらの力、悪くはないな」
 長身の初老の男は満足げに呟くと、己の背後の従う二名のフード姿の男たちをちらりと見遣った。
「……しかし来ぬな、銀誓館とやらは」
 中世末期の欧州風の豪奢な衣装をまとった男は銀色混じりの金の髪を軽く掻き上げ、視線を上げて南の方を透かし見た。
「まあ良い。この田舎くさい島国に居座っておれば、いずれ出逢う機会もあろう。伯爵様すら退けたというその力……」
 笑みが浮かんだ。人であることをとうの昔に放棄したものの、暗くおぞましい笑みだった。
「果たして我が下僕どもを乗り越えて、この『黄昏』の命に届くかな?」

 銀誓館の講堂の一つ。
 百人以上の生徒たちを収容できるその場にあって、壇上に立った白金色の髪の少女の顔は心なしか緊張していた。カヤ・クリューガー(突貫追撃娘・bn0310)――欧州出身の処刑人の少女は、皆の顔をゆっくり見回してから抑えた口調で話し始めた。
「今からみんなに、あたしの知り合いの運命予報士、真名崎・空(高校生運命予報士・bn0284)が視た予報を伝えさせてもらう。ついに吸血鬼たちが動き出した。『伯爵』の配下の原初の吸血鬼だ。奴らは抗体となった配下のゴーストたちを解放し、幾つもの街を死の街に変えようとしている」
 その標的の一つが茨城県つくば市。
 研究学園都市として知られ、大学を中心にした幾つもの研究施設とのどかな田園風景が共存するこの街は、1月15日の午後にゴーストたちの殺戮劇の舞台となる。
 そう語ると、少女はわずかに目を伏せた。
「もう聞いている人もいるだろうけど、同じ日に銀誓館学園への、運命予報士たちを狙った襲撃が予報されてる。この虐殺もきっとあたしたちの戦力を分散させるためのものなんだろうね」
 それでも。
 戦わないわけにはいかない。
 何も知らない人々を守らないわけにはいかない。
 これは運命予報士たちが、自らの命を狙われつつも誇りをかけて皆に伝えた予報だから。
 少女はそう言い切ると、凛とした顔を上げた。
「つくば市に現れる原初の吸血鬼は『黄昏(ダムルンク)』って名乗ってる。奴は北欧の神話に登場する魔物のような狼めいたゴーストを――抗体化して凄まじい速さを誇る黒い毛並みの獣人たちを解き放ち、目にも留まらぬ速さで人々を襲い、擦れ違いざまに音を立てずに殺戮する。でもあたしたちなら奴らが視える。奴らと戦うことができる!」
 目を光らせた少女は皆に向かって身を乗り出した。
「殺戮部隊の指揮を執る獣人は二体だ。名は『疾風(シュツルム)』と『怒濤(ドランク)』。『疾風』は獣人の中でも飛び抜けて速く、また戦術を考えて配下を指揮するだけの知能を持つ。『怒濤』は素早い上に、群の先頭に立って強烈な豪腕を振るう。どちらも接近戦では強烈に強いけれど、この二体を倒せば配下の抗体ゴーストたちはきっと戻ろうとする――『黄昏』のところに」
『黄昏』は異形どもから派遣された二体の案内役のデッドエンドを従え、街のどこかで悠然と殺戮劇の終焉を待っている。だが己の計画に異変が生じたことを悟れば、自ら乗り出す可能性は高い。そうなればおそらく戦いの状況は一変するだろう。彼は強力で賢く、しかも狂っている。虐殺と殺戮を遊戯とみなし、配下のゴーストたちはおろか自らの命すら嬉々として駒として扱う、卓越したゲームの遊び手だ。
 そう言い終えた彼女は溜息をつき、再び声の調子を抑えた。
「奴らは街の路地の暗がりで、あるいは木立の陰で、おそらくは駅があって国道が走る人の多いあたりに潜んで襲撃の時を待つ。あたしたちの存在を悟られたら、あるいは街の様子に何か異常を感じたら、奴らはその場を去って新たな街に矛先を向けてしまうかも知れない。だから、あたしたちも待たなくちゃならない」
 殺戮を始めるそのとき、『黄昏』は合図の角笛の音を響かせるという。世の終末を告げる角笛のように。
「その瞬間が勝負になる。速さを誇る敵よりも、もっと早く、速く、疾く! 殺戮が開始されるその直前に、一体でも多く奴らを止める!」
 少女は叫ぶように告げた。
「百体を超えるゴースト、知能を持つ獣人にデッドエンド、そして強力で狡猾な原初の吸血鬼。楽に戦える要素は何一つない。でも勝たなくちゃならない。街に黄昏をもたらす者を倒さなくちゃならない。街の人々を守るために、それにこの事実を教えてくれた運命予報士たちの信頼に応えるために!」
 少女は右手を――武器を持つ方の手を高々と振り上げた。
「例え百を超えてはいても、奴らはただの数の寄せ集めだ。でもあたしたちは違う。ここに集まってくれたみんなは、同じ目的のために戦う一つの意志だ!」
 一つの強固な意志は、ただの数を凌駕する。
 己の意志の力を敵に、示せ。

■マスターより

 Krieg! Krieg!
 ……失礼しました、九連夜です。ついに終局へと向かう戦いが始まりました。規模は小さいながらもこれは紛れもない戦争ですので、十分な覚悟の上で戦いに臨んで下さい。
 以下、内容詳細に関する業務連絡。

(1)シナリオへの参加について
 この事件は1月15日の午後に発生します。【1月15日】に発生する他の事件に参加することはできません。重複参加した場合は、参加が無効になる場合がありますのでご注意下さい。
(2)事件発生時の状況について
 事件発生の場所と日時が判明しているため、事前に都市に移動しておくことが可能です。しかし彼らの侵入経路が不明であるため、侵入の事前阻止は不可能です。また市民の避難活動やその他傍目にも明らかな防衛行動を取れば、『黄昏』は近隣の都市に向かったり襲撃の方法を変えるなど、作戦を大幅に変更してくる可能性が大です。オープニングの光景は誰も何もしなかった場合の運命予報ですので、良くも悪くも皆さんの行動によって変化します。
(3)敵の布陣とその行動について
・『黄昏』は約10体の直属の抗体ゴーストとデッドエンド二体を従えています
・部隊長『疾風』と『怒濤』はそれぞれ50体弱の抗体ゴーストと共に作戦を遂行します
・『黄昏』を撃破しても部隊長の指揮があれば、抗体ゴーストはそのまま作戦を続行します
・部隊長を倒した場合、その配下の抗体ゴーストは、『黄昏』のいる場所に戻ろうとします
・『黄昏』を倒した場合、部隊長に率いられていない抗体ゴーストは街から逃走します
・『黄昏』も部隊長も倒された場合は、配下の抗体ゴーストは街から逃走します
(4)備考
 戦争の舞台の茨城県つくば市の状況は大雑把に現実のそれに準じます。ただし一部にゲーム的な脚色やシルバーレインの世界観に準じた変更がありますのでご了承下さい。
 また、この戦争にはカヤ・クリューガー(突貫追撃娘・bn0310)が同行します。
「あたしに構う必要はない。そんな暇があったら一秒でも速く敵を倒せ!」(カヤ・談)
 なお、本文中でカヤはああ言ってはいますが。
「質がある程度近ければ、戦いは数だよ。数の暴力を舐めちゃいけない」(真名崎空・談)
 戦力差が圧倒的に大きければ、相応の戦術を練らない限り素直に敗北の危険性が跳ね上がりますのでご注意下さい。

■選択肢解説

(1)原初の吸血鬼を狙う
 敵攻撃部隊の指揮官である原初の吸血鬼の撃破を主に行います。
 ただし(2)を選択した能力者が不足していた場合、抗体ゴーストの妨害を受けます。

(2)抗体ゴーストと戦う
 原初の吸血鬼を守る抗体ゴーストとの戦闘を主に行います。抗体ゴーストを早期に撃破できる工夫があれば、作戦全体の成功率を大幅に上げることが出来るでしょう。

(3)街を守る
 街を襲う抗体ゴーストの撃破を主に行い、街と人々を守ります。
 この選択肢を選ぶ能力者が多ければ、被害を抑えることが出来るでしょう。

(4)その他
 その他、独自の行動を行います。

●担当マスター
  九連夜

●同行NPC
  カヤ・クリューガー(突貫追撃娘・bn0310)
 
●【注意!】参加制限
 このリアルタイムシナリオに参加した能力者は、他の【1月15日】に発生が予報されている事件に参加することが出来ません。
 全体シナリオ「【1月15日】」に参加していたり、他の【1月15日】のリアルタイムシナリオに参加している能力者がこのシナリオに参加した場合、このシナリオへの参加は取り消されます。

●プレイング締切
 1月10日(火)朝8時30分
 
●作戦ルーム
 このシナリオに参加する能力者のための作戦相談用一行掲示板です。
 

●重傷と死亡
 このシナリオでは、リアルタイムイベントと同様に『重傷・死亡』を負う危険があります。
 参加する場合は、充分な覚悟を持って挑んでください。




<リプレイ>

 茨城県つくば市。
 研究学園都市として知られるその街は、落ち着いた雰囲気を持つ地方都市だ。とはいえ数年前に秋葉原まで短時間でアクセス可能な路線が開通したこともあり、休日ともなれば都心と行き来する人の流れが加わって活気の度合いを増していた。
 そんなごく当たり前の街の、とある普通の一日。
 2012年1月15日。
 その日、つくば市は「普通の人々には意識することのできない非日常」のただ中にあった。

●1時間前 〜駅にて〜
「間違いなくいる。うじゃうじゃ、と表現するべきかな」
 人々の往来の絶えぬ休日のつくば駅、その空中歩道の一角。
【怠惰】の面々と共にこの場に集った赤目・虚太刀(神攻鬼怖・b03674)は、ゾンビハンターとしての己の感覚を周囲の能力者たちに告げていた。
 100体を超える抗体ゴースト。原初の吸血鬼に率いられ、この街のどこかに潜伏しているという強大な敵の気配は、感覚を研ぎ澄ませるまでもなく皮膚を圧迫するような強さで感じられていた。まるで大規模な戦争が始まる前のときように。
「特定することは…できませんか…?」
【向日葵荘】の花村・衛(中学生ヘリオン・b65157)が小さな声で尋ねるが、虚太刀はあっさり答えた。
「方向に関しては『あちこちに』としか言いようがない。おそらくは駅の回り全体にいる」
「大正解! ってトコかしら」
 巣霞・野露(鋏角野伏衆・b32975)が手にした携帯電話を元気に上げてみせる。スピーカーから吐き出されるのはひどい雑音のみだ。
「さっきからどこに行ってもこんな調子よ。この街全部、通信障害にやられちゃってる感じね。とにかく歩いて回って警戒するしかないんじゃないの?」
 衛が軽く頷いた。
「わかりました。では【向日葵荘】は予定通り西大通り方面を警戒します」
「じゃあ、【桜並木】は私他3名で駅前ショッピングセンターとバスターミナル近辺を調べてくるね」
 苑田・歌依(赤いリボンと飛び道具・b53326)は緊張感を感じさせぬ元気さで宣言すると、手にした何枚かの地図を示して見せた。
「怪しそうな場所に印をつけといたから、良かったら土地勘のない人は手分けして回ってね」
「ちょっ見せていただけますか?」
 フルオリーテ・ペリーニ(月色の目の乙女・b72057)は地図を受け取り、ざっと眼を走らせると、眉をわずかにしかめて歌依に問いかけた。
「調査点がつくば駅付近に限定されているようですね」
「ああ、わざとよ。他の場所には直接行ってる人たちがいるから、そっちはその人たちに任せて……」

●30分前 〜南側の一場面〜
「敵の呼称から、電撃戦を得意とする、または好む性質の筈……」
 つくば市の名物、総延長43kmに及ぶ長大なペデストリアンデッキ――遊歩道。冬の穏やかな午後の陽射しの下、散歩を愉しむ学生たちや家族連れが談笑しながら行き交うなかに混ざり、高倉・和真(中学生太陽のエアライダー・b81684)はまだ見ぬ敵に関する己の考えを舌に乗せた。
「本来なら要所の迅速な制圧を旨とするだろうが、今回は人口密集地域を狙うものと推定できる」
「同感だぜ」
 稲垣・健流(高校生青龍拳士・b55016)は元気に応じ、拳を握ってみせた。
「『疾風』に『怒濤』なんて名の奴なら、ちまちました小規模殺人を繰り返すより、人口密集地域を狙って一気に大戦果を狙うだろ。まして日曜……都心に出る奴も多いだろうから、狙いは駅周辺だろうな。まあ、同じように考えている奴は多いみたいだが」
 ぐるりと周囲を見回す。遊歩道を同じ方向に、あるいは逆方向に歩いて行く顔のうちの幾つかは彼が見知ったものだった。
「ん、でも」
 及川・悠那(さくらいろたいふーん・b59028)はピンクのリボンのついた豊かな黒髪をなびかせ、周囲を見回しながら指摘する。
「デイズタウン、国際会議場……駅から少し離れたところも、人が多いところあるよね」
「そうだな。敵はどこに潜んでいるかわからねえし、俺らは離れたところを警戒してみるか」
「了解だ」
「りょうかい!」

●5分前 〜国道を行くもの〜
「えっほ、えっほ……はぁ」
 山本・真海(晴色忍者姫・b05587)は疲れていた。戦闘が始まる前から無茶苦茶疲れていた。
 敵に見つかっても怪しまれないようにランニング中の学生を装って国道沿いの建物の影の敵の有無を調べる……その発想は良かったのだが、肝心の敵の襲撃が始まらないのだ。おかげで軽めのランニングはいつの間にかガチのマラソントレーニングと化していた。
「うう、イグニッションもできないし……あ、あそこにもいるなあ」
 途中で行き会った仲間たちには、敵が潜んでいそうな場所を伝えてある。自分自身も、うまくタイミングが合いさえすれば、数体の敵が潜んでいる場所に牙道大手裏剣をぶち込んでやる予定だ。
 真海は大きく息を吐きだし、唐突に首を上げた。なぜか、空気が変わったような気がした。
「そろそろかな?」

●1分前 〜黄昏の予兆〜
「ラグナロク……神々の黄昏とでも、自分は神話の神だとでも、思ってるのかな」
 つくば駅にほど近い公園の片隅にて、日向寺・まひる(緋色のそよ風・b65922)は冬なお緑の葉を茂らせる樹に背中をもたせかけて目を閉じていた。
 ここへ来る途中でも、またここでも、幾つもの悪しき気配を周囲に感じた。神を気取った吸血鬼が、終末の角笛に見立てた角笛の音を鳴り響かせるとき、その気配は黒い狼に形を変えて人々を襲い始めるのだろう。
(「思い上がるのも此処まで……貴方たちは絶対に許さない!」)
 心の中で呟いたのと同時に風が吹き、木々がざわめいた。まるで何かの予兆のようだった。まひるは薄く目を開いた。
「……来る!」

●零 〜黄昏の始まり〜
 それは、長々と尾を引いて響き渡った。
 どこからともなく流れ出したその音色は高く低く、立ち並ぶビルの群の合間に反響して、幾重もの複雑な木霊を残してから消えていった。
 だが、街を行く人々のなかで、それを聞いて振り返る者は決して多くはなかった……それは決して聞いてはいけないものだとでもいうように。自分たちには関わりの無い、別の世界の出来事だとでもいうように。
 その通りだった。本来は。
 本来ならば。

「イグニッション!」
 星宮・りぃん(ハッピーホッパー・b40661)は叫び、振り返らなかった人々の一人を襲うべくビルの影から飛び出した獣人の前に立ち塞がる。
「貴方がたの殺戮の黄昏…赦す訳にはいきません!」

「イグニッション!」
 木々の合間に潜んでいた月見里・和(月夜の射手・b80731)は右手を上げるや、ベンチで会話を交わす老夫婦に迫る獣人に、雷の槍を投げつけた。

「イグニッション!」
 草那岐・勇介(眠れる月の獅子・b36494)は手にした文庫本を置き捨て、轟風を呼びだしその身に纏う。手近な位置に出現した黒い影を見定めるや、普段通りに歩む人々の合間を抜けて、超低空を飛翔する飛行機のごとく走り始める。

 百を超える叫びと、無音のまま動き始めた黒影と、普段と変わらぬ様子でしかしなぜか手近な建物の中へと向かう姿勢を示しつつある人々と。
 その交錯が、つくば市の運命を定める戦いの幕開けだった。

●もう一つの零 〜終わりの始まり〜
 皆が走り始めた、同じ頃。
「…………」
 ミーシェ・ヴァーレル(我が鎌は悪を刈り取る為・b79461)は6階立てのビルの屋上で考え込んでいた。
『ビルからビルへと飛び移って敵を探す!』という、一つ間違えば運命予報士に小一時間ほど説教を喰らいそうな無謀な計画を立て、実際につくば駅に近い某ビルの屋上に入り込んだ彼女だったが。
「北の方。それに多分……下じゃなくて、上から聞こえた? ということは、もっと高いビルの屋上かどこか?」
 同じ高度に建物が少ないそこからは、角笛が響く方角が予想外によく聞き取れた。
「……確かめるか!」
 ミーシェは一気に地上に飛び降りようと金網から身を乗り出し、下を見てためらい、それから踵を返して非常階段に向かって走り始めた。

●つくば駅
 黒い疾風が街の通りを吹き過ぎた。
「え?」
 何が起きたか分からぬ風の二十歳前後の娘に牙の形をとった疾風が襲いかかり……その直前に、何かに足を絡め取られたように動きを止めた。巨大な文字のようなものが宙に浮かんでいた。
「ハッ!」
 そこへ空を裂いて雷が飛び、直撃を受けた黒い狼のような影は、遠吠えのような悲鳴を上げて消失した。
「ふう」
 倉澤・青葉(直線少女・b59474)は手にした箒を下ろすと振り返った。
「足止め、ありがとう」
「なあに」
 佐川・鴻之介(湾曲男子・b20654)は軽く手を上げて応じると、何が起きたか分からぬという風な娘に忘れろと小声で囁いて走り出す。
「奴ら、やっかいじゃ。足止めでもせねばどうもならんて」
「そうね」
 青葉が言葉少なに同意する。つくば駅の周囲に現れた大量の黒影――黒い毛並みの獣人たち。その狙いは徹底して一般人だった。襲いかかるところを邪魔しても反撃はしてこない。戦うのはあくまで囲まれて逃げ場が無いときだけだ。
 この戦いに集まったメンバーの大半がつくば駅の周辺で警戒していたのと、戦闘よりも一般人の救援に回る者が少なからずいたため、人々の被害は最小限に留まっていたが、敵の狙いを制することが主眼になり――つまりは追いかけっこになっている分、なかなか数を減らし切れない。
「やはり頭を潰さなければ駄目じゃな……いたか!」
 立ち止まり、見上げた空に、背景よりもやや濃い青の煙が上がっていた。『疾風』発見の知らせだった。

●研究学園駅、『怒濤』
「いきなり本命か」
 研究学園駅の、すぐ前の通りにて。
 ルーファス・ジーヴェン(在りし日の夢を抱く者・b35718)は敵の巨体と向かい合っていた。
 狼というよりはむしろ熊の鼻面を伸ばしたような異形の獣人――『怒濤』。そして彼の咆哮に合わせて襲い来る、小型で素早い獣人たち。そして数十体はいる敵に対し、仲間たちはその半数を超えるかどうかだ。
「やるべきことをやるだけだ」
 冷静に吐き捨てた岩倉・基久(番犬・b76216)が獣の巨腕をかいくぐり強烈な蹴りを叩き込むが、さほど聞いた感じもない。
「ともかく仲間が来るまで耐えるしかないか……と?」
 先ほど合図に上げた花火の発射台をちらと見た基久の視線が流れる。
 東の通りの先からかなりの人数が走ってくる。
「……早かったな」
「つくば駅の人数が多かったので、何人かに声をかけて、こちらに来ました。お知らせが見えたのは来る途中、です」
 龍蘭・嵐(知護の火蜥蜴・b26119)は一緒に来た仲間たちをちらと見遣ると、ガトリングガンを一瞬で構えて撃ち放った。かわしきれずにくらった獣人が悲鳴を上げる。
「我々や運命予報士はともかく、一般人が殺されるのは許せないからな」
 表情を動かさぬまま神山・秀一(空ろの灯篭・b01609)がスケルトン仕様の懐中時計を軽く掲げる。眠りの城を覆う茨のように地面から茨が生えだし、皆に襲いかかろうとしていた4匹の獣人の動きをまとめて縛る。
 新たに戦線に加わった仲間たちの言葉に、ルーファスは口の端に微かに笑みを浮かべて、己の悪夢を――悪夢クラスターの玉を一気に『怒濤』へと投げつけた。
「よし、倒す!」

●『疾風』
 それはまさに疾風だった。
 かなりの速さを誇る獣人たちよりなおも速く、その爪もまた強烈な速さで能力者たちを切り刻んだ。
 が。
「このッ! 逃げるなっての!」
 佐久間・雄基(高校生魔弾術士・b10324)が放った炎の魔弾を『疾風』はその細い身体をうねらせるようにしてかわした。
 駅の北側、幾つかの学校の校舎が建ち並ぶあたりに出現した『疾風』に付き従う獣人は15体ほどで戦力としては大きくなかったが、その全てが動き続けていた。自分たちに有利な状況でしか決して戦わず、無理なときは逃げ、襲いかかるときは必ず集中攻撃……しかも前衛を避け後衛を狙うという戦い方だ。戦い続けるというよりも追い続けるうちに戦場は次第に北へと移っていき、それに伴い新たな民間人との接触の機会も増えてしまっていた。
「いいから倒れろっ!」
 通りかかった学生らしき若者に襲いかかろうとした獣人に雄基は銃口を向けた。猛烈な火線を避けて獣人が後方に跳び下がる。
「……なんだ、こいつら? 被害を抑えたいって、それだけじゃないような……いや、これも命令されての動きか?」
 雄基は考える表情になった。彼の前で展開される敵の動きは、通常考えられるゴーストの動きとは大きく異なっていた。
「うん、ひょっとして何か狙ってる……」
 同感の意を示した稲垣・晴香(発展途上の仔猫レスラー・b10327)が汗をぬぐったときだった。
 空に血の色の煙が上がっているのが見えた。
「なに? 『黄昏』がもう出たの?」
 それは事前に取り決めていた、敵首魁の出現の合図だった。少し遅れて白煙も上がる。「増援至急送られたし」の合図だ。
 晴香は一瞬考え込んだ。
 ここでこのやっかいな『疾風』を放り出すことによる、民間人の被害。
 十全の準備をしているであろう『黄昏』を放置する全体の被害。
 すぐに決まった。
「『黄昏』を担当することになってたみんな、行くよ!」
 叫んで晴香は走り出した。それまで戦っていたメンバーのうち、約半数が彼女と共に離脱を開始する。
 これで増えるであろう民間人の被害のことを歯を食いしばって考えながら、彼女はふと思い当たった。
「『黄昏』……まさか、最初から部下がやられる前に出るつもりだった? 『疾風』の動きも狙いのうち?」

●『黄昏』作戦 〜真相〜
「このあたり、でしたね」
 周囲のゴーストへの対応を民間人の被害を防ぐための必要最小限にとどめて走り続けていた富田・真琴(闇夜を渡る剣士・b51911)は、つくば駅と大学のグラウンドの中間付近に位置する高い建物の前で足を止めた。
「このあたりだと…思うのですけれど」
 その横を走っていた鹿瀬・静(雪の於母影・b52849)もほぼ同時に足を止める。
「発生源が北の方だったのは間違いありませんが、何しろわかりにくかったですからね」
「はい…音が反響したせいで…あとは…細かく見ていくしか…」
 顔を見合わせ、どこかのんびりした調子で会話を交わした直後。
「おい、おまえたち! 能力者だな? 大急ぎでみんなに伝えてくれ!」
 唐突に上空から声が降り注いだ。二人が顔を上げると、最初の集会で見た覚えのある少女――ミーシェが建物の屋上の金網から身を乗り出して叫んでいた。
「気をつけろ、『黄昏』は多分この付近にいる! さっき、デッドエンドらしい奴がこの辺のビルの上から双眼鏡であちこちを見ていた!」
 ミーシェは下から見上げる真琴と静に向かって、肺の空気を全部吐き出す勢いで叫ぶ。首を傾げ、真琴が問い返す。
「つまり、この付近に『黄昏』が隠れて……」
「それだけじゃない! 奴ら、戦況を監視しているんだ。多分、みんなが戦闘に気を取られているところを奇襲する気だ!」
 その言葉を聞いた瞬間、静は自分たちの置かれた状況を正確に理解した。
 皆、良くも悪くも一般人を守ることしか頭にない。実際、150人を超えるこの戦いの参加者のなかで、意識的に『黄昏』を探していたのは自分と静と、あとミーシェぐらいのものだ。
(「そう…いえば…」)
 この戦いの説明をしたカヤという少女は告げていた、「己の計画に異変が生じたことを悟れば、原初は自ら乗り出す可能性は高い」と。つまり殺戮がうまく進まねばどこかの段階で原初は出てくる……それが部隊長の全滅の後という保証はどこにもない。むしろ状況を監視し自分から出てくるだろう、銀誓館を奇襲し戦局を傾ける機会を見計らって!
 そこで真琴は我に返った。ビルの上でミーシェはまだ叫び続けていた。
「……だから急げ! この辺で行動するときは目の前の敵だけ見るなって……」
「当たりだ」
 ザン、と。
 さほど大きくもない男の声と、それに続く強烈な斬撃の音を、静は確かに耳にした。
 そして目撃した――ミーシェの背中のおそらくは二筋の傷から、血潮が翼のように天に向かって吹き上がったのを。またその直後、少女の身体は黒衣の天使が飛翔するように金網を突き破って宙に舞ったのを。
「真琴さん!」
「任せて下さい!」
 墜落するミーシェのすでに意識のないその身体を、とっさに落下地点に駆け付けた真琴は、能力者としての身体能力の全てをかけて受け止めた。
 そして闇が落ちてきた。
 その男は、十メートルを超える高さからの着地の一瞬のみ舗装された地面を砕いて轟音を立てたが、そのまま何事も無かったたかのように歩き出した。静と真琴と等距離を保った位置で足を止め、その身に纏った貴族風の豪奢な衣服にふさわしく、二人に向かって優雅に一礼した。
「お初にお目に掛かる、私は『黄昏』という。銀誓館の方々とお見受けした」
「ご推察の…通りです。ご丁寧にどうも」
 静は思わず生真面目にお辞儀を返した。
「策としては初歩のものに過ぎぬが、よく見破った。この『黄昏』自らお相手しよう」
「あれ、どうかした……え!?」
 原初が悠然と言い放ったそのとき、一般人の避難誘導を終えて彼女らの背後を通過しかけた天宮・月魅(風纏い・b52699)が足を止めた。男の姿を見て顔色を変える。
「まさか、『黄昏』!? 大当たりなのですよ!」
 月魅は鞄の中から発煙筒を取りだし一動作で点火、赤い煙が空に向かって登っていく。それを仲間への合図と看破した『黄昏』が間を詰めようとした瞬間、真琴がとっさに割って入り、強烈なサーベルの一撃をかろうじて受け止める。
「……ほう。小娘どもがなかなかやる。下僕どもを存分に働かせてからと思っていたが、まあ良い。戦を始めるか」
 一歩下がった『黄昏』が指を打ち鳴らすと、ビルの裏口から黒いものが走り出てきた。獣人10体。デッドエンド。
 一方、月魅が掲げる発煙筒の煙に誘われたように、近くにいた能力者たちも次第に集まってくる。
 決戦の始まりだった。

●『疾風』の最期
『黄昏』に対応するために仲間たちが去ってしばらくすると、『疾風』とその配下のゴーストたちの行動は一変した。一般人の相手を止め、能力者たちの布陣の一角を集中的に切り崩す戦いに切り替えたのだ。
 それを見て取ったマリア・エスペランザ(蒼い戦姫・b52755)は呟いた。
「一刻も早く『黄昏』に合流、あわよくばそちらに向かった人たちの背後を突く……ってとこしら? それならそれで戦いようはあるわね」
 集まった敵のただ中に踏み込み、双剣で敵を薙ぎ払う。巻き込まれた『疾風』が苦しげな咆吼を上げる。それを見た高木・誠(廻明・b00744)は軽く眼鏡をかけ直した。
「なるほど。素早いには素早いが、当たれば脆そうだ」
 喚びだしたのは隕石の群れ。それは『疾風』とその周囲の数体の獣人たちを直撃し、蹂躙し……一匹残らずこの世から消し飛ばした。
「終わってみればあっけない、が」
 誠は呟き、一斉に逃げ出した残りわずかな獣人たちの背を見てから素早くマリアと視線を交わした。
「残った連中、『黄昏』の戦力にしてやるのはもったいないな」
 マリアは力強く頷いた。
「ええ、一匹残らず狩ってあげるわ」

●『怒濤』の最期
 研究学園駅前の激闘はなおも続いていた。互いの戦力を削り合う一進一退の戦いがしばらく続いたのち。
「さぁ…獣狩だ…。さっさと終わらせて帰ろうか!」
 つくば駅と南側の掃討を終えた南・優利(秋桜は舞い散るように・b61464)と数名の能力者たちが駆け付けたことで戦いの行方は定まった。
「そろそろ潰すか」
 秀一の白燐蟲の群が『怒濤』の巨体に食い込む。反撃の豪腕が打ち振られるが、その隙に基久がその背後に回り込んでいた。
「喰らえ!」
 背から腹まで衝撃が貫通するような強烈な拳の一撃は『怒濤』の巨体をゆるがせ、のけぞったゴーストはそのまま苦鳴を上げる間もなく消滅した。
 わずかに間を置き、群れの長の消滅を悟った獣人たちが逃げ出した。北東の方角――原初がいる方角へと。ルーファスが一瞥して呟いた。
「追う」

●番外編:大学にて
「くっ!」
 白昼の大学のキャンパス……身に迫る危険と世界結界の効果の両方によりすっかり人気の失せた、その一角。
 獣人が繰り出す凄絶な速さの一撃を、森野・早苗(翡翠樹姫・b00845)はサンダーピラーを上げて何とか弾き飛ばした。
「まったく、私はここに調べ物をしにきただけですのに」
 荒い息をつきながら早苗は誰にとも無く文句を言うが、目の前の現実は変えられない。
 筑波の名を高めているその大学の中に入り込んだ獣人、その数は9体。
 対するは……。
「危機的状況ね」
 冷静に告げたのは龍神・結奈(幼き月の遠征女帝・b82423)。大学への襲撃を読み、すでに1体を奇襲で打ち倒したのは間違いなく彼女の知略の賜物だったが、唯一読み間違えたのはこの地区の警備に当たる仲間の少なさだ。
 その二人の眼前で敵の一体が燃え上がった。
「無事ですか?」
 建物の角を曲がって紫の瞳の少女――柳川・真夜(紫紺の月魔術家・b32355)が現れる。
「音を聞いて来たのですが……お二人だけですか?」
 大声で問う真夜に即座に二体の狼めいた魔物が向かう。
「二人と一体ですわ!」
「きゅぴぃ!」
 自分もいるぞと言わんばかりに、早苗のモーラットが自己主張する。
「わかりました。多勢に無勢ですが、ここは勝負所ですね」
 敵の攻撃をかわしながらの真夜の言葉に、結奈が静かに答える。
「勝利のためには宿敵すら使う敵のやることだもの。私たちが倒れれば、大学の人たちの命はないわね」
 紛れもないその事実を前に、真夜に結奈、早苗もその眼に決意の色を浮かべた。

 そしてしばしの時が過ぎ。
「こっちにもいるっ! まずい、キャンパス内にも入り込んでたみたい!」
「わかった、さっさと片付けて原初の方に向かうぞ……って! おいみんな、生きてるか?」
 紅麹・滴音(根性魔法使いアサルト・b19733)と神栖・然泉(水面を揺らす微風に乗せた音色・b20151)を先頭にした【雪蛍】のメンバーに、駅周辺の敵を片付けた他の能力者たちが駆け付けるまで、結奈たちは学生たちの楯となって、文字通りに血みどろの死闘を繰り広げ続けた。

●来なかった黄昏
 戦いは長く続いた。
 最初に敵の集中砲火をくらって静、月魅が倒れ、一時は危機的状況に陥ったが、『疾風』配下の対応に当たっていた主力が到着して戦況は逆転した。激闘が続くなか、やがて敵は次第に数を減らしていった……銀誓館が戦力を集中したときの、圧倒的な戦力そして回復力。『黄昏』の作戦が敗れ小細工が潰えたとき、彼らはそれを否応なしに正面から浴びることになった。
「【セプテントリオン】、仕掛けます!」
 残り3体となった獣人を見据えて雅条・ミルラ(赤にして柘榴石・b54088)がギターマシンガンを掻き鳴らす。仲間たちの吹雪や水弾がそれに続き、既に弱っていた2体が瞬時に消し飛んだ。
「いくぞ、成美、メイベル!」
 毛利・護(真水練忍者・b31704)が放った水刃手裏剣に導かれるように隕石と雷が降り注ぎ、最後の1体もまた消える。
「スキありっ!」
 派手な跳び蹴りの主は聖・夜白(舞闘猫娘・b03387)。華麗な朱色の戦衣が着地したとき、標的となった最後のデッドエンドの姿はすでに無かった。
「部下はもういないよ、あとはキミだけだね」
 フェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)は魔弾を撃ちつつ、笑顔で敵を挑発する。
「それがどうした。くらえぃ!」
 『黄昏』の豪奢な外套の下から、その日の何匹目かりの妖獣が現れて疾走し、フェリシア他5名の能力者たちをまとめてぶち抜いた。
 が。
「すぐに癒すぜ。皆も合わせろ!」
『疾風』を駆逐した面々と共に駆け付けた山陽・昼楕(ここにも土蜘蛛の巫女・b59999)が舞い、結社【みんなが集まる巣】の面々が続き、さらに治癒の力を持つものたちが次々に加わる。5人の負傷がたちまちに癒えていくのを見て、『黄昏』は微妙に表情を歪めた。
「なるほど、これが物量に押し潰されるということか。アドルフめの戯言が少々理解できたわ」
「結束力の高さ、と言うて欲しいの。減らず口もここまでじゃ!」
 仲間たちの援護を受け、能力者たちの群れを突き抜けるようにして黒髪の少女が突進した。手にした無骨な武器――刀というよりはどこか魚を思わせる形のそれに、空間を歪めんばかりの強烈な紅蓮の炎が宿る。その様を見て『黄昏』は笑みを浮かべた。
「面白い。雑魚どものなかでは、今日一番の手練れと見える。名乗るがいい!」
「常陸・朝霞(土蜘蛛に新しい風を吹き込んで・b50975)、憶え置くが良い!」
 激突。
 渾身の力を込めた朝霞の武器はそれを絡め取ろうとした『黄昏』のマントが及ばぬ速さで老吸血鬼の肩口を打った。『黄昏』の全身が、その名にふさわしい滅びの色に、武器から移った炎の色に彩られ、彼は始めてよろめいた。反撃のマントの一撃は朝霞の戦装束の一部を裂くに留まっている。
「そろそろ終焉を迎えて頂きましょう」
 黒い頭巾の下から戦況を見定めていた奇亜求・智明(上位侵魔・b46037)の合図と共に、18名を数える【黒星具現社】が一斉に動いた。魔弾が、蟲が、呪言が、光の槍が一斉に投じられ浴びせかけられ、かわしきれず受けきれぬ『黄昏』の全身が奇怪な色に染め上げられる。
「き、貴様らは……」
「終わりじゃの」
「ここまでです」
 何か言おうとした『黄昏』に再び朝霞が凄絶な打撃を叩き込む。それに続いて、タイミングを見計らっていた美崎・曜子(人形小町・b15178)の細い指から白く輝く蟲の群が放たれた。それは普段のゴースト退治のときのように、原初の吸血鬼の胸に食い入った。そして、その肺を、肋骨を、心臓を貫いて爆散した。
「これが私の、黄昏、か……」
 呟きと共にその膝が落ち。
 多くの街に黄昏をもたらしてきた原初の吸血鬼は虚空に溶け込むようにして消え失せた。
 曜子は敵の消えたその空間に一礼すると、軽く微笑んだ。
「あとは、残っている敵の確認だけですね。街から逃げ出されると面倒です」
「了解だ。後片付けはさっさと済ませちまおう。学園都市だからって宿題は欲しくないからな。……急ぐぜ!」
 藤堂・名虎(虎狼穿牙・b49678)がすかさず軽口混じりに応じ、駅の方へと振り返った。

 そして皆は笑顔で散った。
 為すべき事を為し終えた誇りを、それぞれの胸に抱いて。
 偽りの黄昏ではなく、つくば市に間もなく訪れるごく普通の黄昏を背にして、銀誓館に帰るために。



<結果発表>


 ⇒⇒⇒(1)原初の吸血鬼を狙う
 ⇒⇒⇒(2)抗体ゴーストと戦う
 ⇒⇒⇒(3)街を守る
 ⇒⇒⇒(4)その他

■(1)原初の吸血鬼を狙う(参加者:44人)

名前一言
相馬・雪菜(朧月夜の蒼魔・b06028)
原初とはいえ、一人では無謀と憶えておきなさい
稲垣・晴香(発展途上の仔猫レスラー・b10327)
私達の意地、思い知りなさい!
美崎・曜子(人形小町・b15178)
お疲れ様でした。
紅麹・滴音(根性魔法使いアサルト・b19733)
根性ーっ!
神栖・然泉(水面を揺らす微風に乗せた音色・b20151)
まぁ、なんとかなったってもんさ
小梅井・乃和那(中学生白燐蟲使い・b40599)
ふ…妾の策の勝利じゃ!
奇亜求・智明(上位侵魔・b46037)
なんとか終わった。
篭乃・雪絵(白燐蟲使い・b46076)
生き残れた。
無名・影郭(強行偵察員・b46424)

エリザベート・フランケン(フランケンシュタインの花嫁・b46533)

獅子悪・砕牙(魔剣士・b46559)

アクシス・フルキフェル(エフェクトス・b46812)
勝てて何よりです
セム・パランティア(高校生霊媒士・b47002)

グシオン・アバダー(中学生ナイトメア適合者・b47299)

風菜・詩火(刀姫・b47442)

ナイアル・ブラックマン(惨劇過剰・b47570)

左藤・理奈(真シルフィード・b49467)

歯車・零香(ギアダンス・b49670)
これでいいですね
常陸・朝霞(土蜘蛛に新しい風を吹き込んで・b50975)
常陸の国には妾がいるのじゃ、好きにはさせん!
富田・真琴(闇夜を渡る剣士・b51911)
ひとまず、この街を守ることはできたでしょうか…?
鹿瀬・静(雪の於母影・b52849)重傷真琴さん‥御免なさい。
苑田・歌依(赤いリボンと飛び道具・b53326)
銀誓館は、負けないんだもん…!
苑田・歌穂(日だまりでたそがれて・b53333)
ここを狙ったこと、後悔すればいい
暁・光瞑(光と闇を喰らふ蜘蛛・b53663)
敵は片付いたのか?
奇亜元・智継(高校生太陽のエアライダー・b53953)
ブラボーだ。
ノゼ・ザルガンディ(ブリザードメッセンジャー・b54393)

奇亜故・外印(不在再帰・b55924)

夜宮・満天(星満つる夜のそら・b56297)
殲滅できた…か?
ファリエル・ランバール(高校生魔剣士・b56933)

フォーナ・フォレスト(高校生ヤドリギ使い・b58037)

雪峰・雫葉(儚き雪路の道標・b58661)
そうそうはやられませんの
時原・悠亜(風とともに・b59169)
みんなやったねっ♪
山陽・昼楕(ここにも土蜘蛛の巫女・b59999)
やったねー!
佐伯・千草(ダークコマンダー・b63709)
ジーク・ドアクダー!
冷然・理緒(小学生雪女・b66694)

アラクネ・フォビア(高校生黒燐蟲使い・b67616)

春原・まり(ゴーストチェイサー・b68001)

アトラス・クライム(ファイアフォックス・b68150)

フルオリーテ・ペリーニ(月色の目の乙女・b72057)
やった、勝ちました。
奇亜元・千鳥(断絶力学・b72649)

ヤウズ・ジャナバル(鉄楔の魔女・b72977)
なんとかなったかしら
マエリベリ・マクロード(小学生貴種ヴァンパイア・b75873)
みんなは大丈夫?
門岡・秀悟(中学生処刑人・b79909)

ルイスフィル・エンプティ(中学生サンダーバード・b83942)
……。



 ⇒⇒⇒(1)原初の吸血鬼を狙う
 ⇒⇒⇒(2)抗体ゴーストと戦う
 ⇒⇒⇒(3)街を守る
 ⇒⇒⇒(4)その他

■(2)抗体ゴーストと戦う(参加者:52人)

名前一言
月村・理代(翠天剣士・b03267)
久しぶりに能力者復活!カンは鈍ってなかったみたい
聖・夜白(舞闘猫娘・b03387)
思い通りにはさせないっての
樺黄・英志(白絶蛛刃・b23501)
久々の実戦だったが、腕は鈍ってないみたいだな。
桜川・律子(虫二病クランケ・b24227)
癒し系律子様参上っ!
アリア・バロック(月光の使徒・b28810)

毛利・護(真水練忍者・b31704)
第一陣は…という所か
ウタ・テネドール(驟雨と・b37074)
グレイプニルは要らない
マタル・ドミニオン(トリップダンサー・b40565)
うへー…まぁーだ動けますか私…
星宮・りぃん(ハッピーホッパー・b40661)
……良かったぁ(ミカミカをギュッ!と抱きしめる)
ロウ・アクス(鎧マイスター・b41892)
…ふう。
古鷹・成美(魔装猟兵・b42816)
これで終わり、かな?
イヴ・ハーブラ(魔弾術士・b46421)

南雲・達磨(黄にして砂丘・b46497)
さて他のやつは無事か?
セイシィス・リィーア(橙にして琥珀・b46500)
なんとかなったかな?
ニュクス・ゴーゴン(貴種ヴァンパイア・b46984)

ガルダ・トマホーク(トマホーク族の戦士・b49588)
トマホーーーク!
藤堂・名虎(虎狼穿牙・b49678)
いよし、うまく行ったか
エレン・ウォーカー(中学生コミックマスター・b50939)

メイベル・コトフォード(魔導騎士・b51440)
これでおしまいかしら?
アンディ・サイゾウ(白にして霧雨・b52313)
HAHAHA!
パメラ・ウエストフィールド(ツンデレヴァンパイア・b52652)
ふ、ふふん!と、当然の結果だよ!(ガクガクブルブル)
マリア・エスペランザ(蒼い戦姫・b52755)
何とかなったみたいね。
雅条・ミルラ(赤にして柘榴石・b54088)
ふぅ・・・
フェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)

雨柳・水緒(科学忍者・b56023)

竹・映夜(覇那神速・b58490)
やったぞー!
南・優利(秋桜は舞い散るように・b61464)
うっし!!お疲れ様、みんな!!
ナインチェ・ティーチェンス(黄金の螺旋姫・b63212)
さあ、次にいきますわよ?
古藤・瑠真(虎瞳・b63817)
うん、みんなの力になれてよかった!
眠莉・草(ミモザ・b64500)
よかったー
東雲・鋭角(濃緑玉髄・b64797)
やりました!
日向寺・まひる(緋色のそよ風・b65922)
相手が悪かったね♪
ミタヨーナ・デマゴーゴス(天災美少女詐欺師・b66773)

波多野・燈(埋もれ処代理団長・b67858)

セラフィナ・ソニィ(水練にプラス・b69013)
やりましたわ!
ユメル・アナスタシア(鴬語花舞・b70293)
やりましたね
小黒・花(高校生土蜘蛛・b70694)
他の都市はどうなったかな
ザコム・ザッパ(高校生科学人間・b71185)
いよっし、終わり!
正午・密美士(遡潮轍駆・b72187)
いいぜ、俺の左手今こそ真の力を解放しろおおお!
ユフライム・ナッドサット(時計仕掛け・b73047)

凍柴・魅夕鬼(変革を司りし者・b75845)
やったわね!
燈夜・真葉(中学生真貴種ヴァンパイア・b78165)
何とかなりました……
夜半・勝利(ヒズマスターズボイス・b78378)
勝利の名のもとに!
ミーシェ・ヴァーレル(我が鎌は悪を刈り取る為・b79461)重傷く…この程度で…
月見里・和(月夜の射手・b80731)
成功ですね。
式町・圭(中学生真書道使い・b81828)
これで良し、っと
久谷・今日子(赤い髪の滑空者・b82031)
敵も味方も冗談みてえに強ええな
龍神・結奈(幼き月の遠征女帝・b82423)重傷…参ったわ。
永代・志緒美(小学生ルナエンプレス・b82703)

ビート・サンダーボルト(高校生フリッカークラブ・b83177)

鎌田・厚志(中学生カースブレイド・b83666)

レオナ・ネフェルト(中学生白燐蟲使い・b83928)




 ⇒⇒⇒(1)原初の吸血鬼を狙う
 ⇒⇒⇒(2)抗体ゴーストと戦う
 ⇒⇒⇒(3)街を守る
 ⇒⇒⇒(4)その他

■(3)街を守る(参加者:66人)

名前一言
高木・誠(廻明・b00744)
一人でも多く、助けるぞ
九我・綾羽(過去と踊る・b00924)

神山・秀一(空ろの灯篭・b01609)
多少なりとも、被害が抑えられればよいのだが。
赤目・虚太刀(神攻鬼怖・b03674)
なんとか勝てたようだな…
山本・真海(晴色忍者姫・b05587)
みんなを守ることができたなら、とっても嬉しいよ
立湧・深冬(嵐を呼ぶかも知れない前向き娘・b07602)

天喰・鶫(フューネラル・b09663)
よっしゃあ! 勝ったあああ!
佐久間・雄基(高校生魔弾術士・b10324)
知恵が回るのは、お前らだけじゃないんだぜ?
白銀・恭一(白い夜のイリア・b13897)
なんとかなったね
空知・麦丸(高校生真魔弾術士・b18308)
なんとかなったな、やれやれやでー。
佐川・鴻之介(湾曲男子・b20654)
義親父殿の鳩サブレ、無事かな(笑)
伊那谷・桃香(ネビュラ・b22774)

シャローム・シュレスウィヒ(真土蜘蛛の巫女・b23389)
まだまだ!
ウル・ラッセトゥ(蒼碧の炎は静かに咲く・b25717)
お疲れ様です。
龍蘭・嵐(知護の火蜥蜴・b26119)
よかった…街を守れたんですね…。
月臣・朔夜(闇に疾る銀光・b26431)
無事に乗り切れたな
南部・飛鳥(ちみっこ魔銃士・b26437)
どうにかなった…のかな?
神原・勝義(真ムーンサルトリ・b28635)

荊木・紀陸(日向虫・b30419)
もうこんなのは嫌じゃの、
柳川・真夜(紫紺の月魔術家・b32355)重傷
巣霞・野露(鋏角野伏衆・b32975)
狩られるのは、うぬらでござるよん
ラック・リバー(蒼黒の闇鬼・b33630)
とりあえず役目は果たせた、ってとこか。充分だろ。
ルーファス・ジーヴェン(在りし日の夢を抱く者・b35718)
…やった…の…?
草那岐・勇介(眠れる月の獅子・b36494)
街は無事?
神鳳・慎吾(凱歌を描く鳳・b36840)
やれるだけはやったよ
中井・昌巳(宿命を紡ぎ直す者・b37295)
お疲れさん
高梨・透子(風渡り・b39968)
よし。
雨宮・和巳(ナイトメア適合者・b45935)
上手くいったのかな
奇亜求・清和(光影の七星軍曹と白にして天雷・b46167)
完了であります。
壬柳・惣一(黒ノ奔流・b46550)

フェイラ・ノースウィンド(光影の北風又は白にして十字架・b48217)
これで大丈夫でしょうか。
クリム・ベネット(コゴエグリーン・b49515)

天宮・月魅(風纏い・b52699)重傷まだ、守らなきゃならない所あるのに
白嶺・諒雅(を調理場に入れないでください・b54101)
っし、とりあえず任務完了、ってな♪
稲垣・健流(高校生青龍拳士・b55016)
普段の鍛錬が、少しは生きたかね?
行波・足穂(小学生ヤドリギ使い・b58871)

及川・悠那(さくらいろたいふーん・b59028)
ぴーこ、おつかれさま!
倉澤・青葉(直線少女・b59474)
お母さんの好きなかまくらカスターも無事(笑)
伯備・詩夢(図書委員・b61754)
……
犬飼・華(黒燐蟲使い・b62063)

ハララ・ヒララ(中学生コミックマスター・b62259)

佐藤・馨(月煌・b63457)
よーし!
ミュリアリード・エレクセリア(朱金の天災・b63923)
どんな手で来ようとも、銀誓館は挫けませんわ
永代・七緒(燃えろコミックマスター・b64279)

花村・衛(中学生ヘリオン・b65157)

熊野・三太郎(森のくまさん・b66043)

北澤・のりこ(突撃となりのエアライダー・b69255)

岩永・千陽子(銀鏡の舞巫女・b70321)

北澤・七生(魔剣士・b71115)

ソニア・アンバーロン(何時もだるい魔弾術士・b71614)
ふぅ。……これで一安心ね。
鬼城・蒼香(青にして蒼雷・b73557)
なんとかなりましたね。
橘・唯子(高校生書道使い・b73724)
お疲れ様でした。
高天原・綾姫(従四位花守稲荷神使・b73766)

御代・美紅(中学生妖狐・b73982)

暁・桃龍(高校生科学人間・b76141)
まあ、なんだ。最善は尽くしたよなァ、俺達。
アレクシス・サカガミ(戦闘犬・b76215)
ま、こんなとこかな?
岩倉・基久(番犬・b76216)
とりあえず、乗り切ったな。
来丸・結太(おやつ時のインベイダー・b78811)
うまくいったなら、よかったよかったー
城・元親(鋼鉄の妖狐・b79445)
まあ、このぐらいで妥当でしょう…
滝沢・志乃(高校生雪女・b79780)
よかった…。
ベート・ジェヴォーダン(名を失いし鬼狼・b80739)
はー、なんとか勝てたっすねえ
高倉・和真(中学生太陽のエアライダー・b81684)
この程度で済みゃあ御の字だぜ!
フェリア・エールハイト(中学生ルナエンプレス・b82427)
適材適所
有栖川・詩子(中学生雪女・b83192)
よかった…うまくいって
朝比奈・天花(中学生ルナエンプレス・b83570)
どーんなもんです!
アニタ・フェレイロ(琥珀の瞳・b83652)
……これで、守れたのかしら?



 ⇒⇒⇒(1)原初の吸血鬼を狙う
 ⇒⇒⇒(2)抗体ゴーストと戦う
 ⇒⇒⇒(3)街を守る
 ⇒⇒⇒(4)その他

■(4)その他(参加者:3人)

名前一言
森野・早苗(翡翠樹姫・b00845)重傷きゃあぁっ! 痛いわ。
聖・嫦娥(紅月司りし漆黒の魔女・b73861)
やらねばならぬことを、こなすだけ、よ。
クリサリス・アイレンベルク(日常の謳歌・b78070)
……終わったのかしら?