〜とある街角にて〜

「あの……女は……!」
 彼は、視線の先にいる、一人の女に気が付いた。
 長身で精悍な姿の女。銀色にたなびく長髪は……まるで狼の如く……。
 次の瞬間、男は弾かれたように走り出す。
「(今は戦うべき時ではない。これを、奴等の手に渡すわけには……!)」

 しかし。
「騎士の力を侮ったな、吸血鬼!」
 銀髪の女がそう叫ぶと同時に放った詠唱銃の弾丸は、走り出した男を的確に捕らえる。
 平和な市街の中央で、乾いた銃声が響き、男の全身が血に染まる。
「……ぐっ!」
 男はアタッシュケースを後ろ手にかばいながら、それでも女に反撃を加えるべく、懐からガンナイフを取り出し、応戦する。
 だが、それも一時の仇花。
 更なる女の射撃を浴び、男は血まみれで路上に倒れ伏すのであった。