〜福島県 阿武隈峡〜
「これ終わったら、絶対温泉に行くんやからね!」
昼下がりのハイキングコースを楽しげに歩く、学生と思しき少女達の集団。
彼女達の中心には、黒衣を纏った外国人の少年が1人。
中高生の少女達の中で、彼だけが男性で、年齢体格も小学生程度に見える。
ただし、その落ち着き払った態度から、彼が一行のリーダーである事は間違いないようだ。
「≪黄金獣≫の気配を感じる……。この先か……」
ふと、その彼が、ハイキングコースの外れを見つめ、静かに呟く。
彼の言葉を受け、少女達はハイキングコースを外れ、山道に分け入っていく。
「前のは可愛い金色ウサギやったけど、今度は何やろか?」
「あと7体もおるんやろ? 早よ終わらそうよ〜」
「今日は終わったら温泉〜♪ でも混浴やないから残念やね、アル君?」
軽口を叩きながらついてくる少女達に、
「確かに残念だね。次の機会に期待しよう」
と、少年はこともなげに答える。何事を想像したのか、真っ赤になってうつむく少女達。
次の瞬間。
「あっ、アル君! あの鹿、金色や!」
少女達の一人、あゆみが指差した先には、確かに、黄金に輝く巨大な鹿が存在した。
「≪黄金獣≫にはメガリスの欠片が宿っている。逃がすな!」
少年の号令と共に少女達は速やかに戦闘態勢を整え、黄金の鹿へと攻撃を開始するのであった。
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