〜兵庫県 神戸市〜

 「アル君、おはよ〜」
 暗く、カーテンを閉ざした部屋。
 仲間を代表して様子を見に来た山崎・あゆみは、部屋の中央に佇む黒衣の少年に言葉を掛ける。

 黒衣の少年の傍らには、淡く輝く黄金の欠片が3つ。
 「なぁ、これ、いつ頃メガリスになるん?」
 あゆみの言葉に、少年が口を開く。
 「虚ろなる月が、中天に輝く時……。要は新月の事だから、今日の11時37分、という事になるね」
 11時37分、欠片のどれかが、メガリス「黄金の林檎」に変わる。
 欠片は全部で8つ。そのうち、吸血鬼が所有する欠片の数は3つ。

 8分の3。
 その確率は、期待するには低く、絶望するには高い。

 今は、ただ待つのみ。少年は瞳を閉じ、瞑想に入る。
 「(メガリス手に入ったら、ええね)」
 あゆみは、黒衣の少年に向けてそう呟くと、静かに部屋を退出するのであった。