〜愛媛県今治市 笠松山〜

 むせ返るような匂いを放つ、肉の群れ。
 一糸纏わぬ姿で折り重なるように絡み合う、百を越える数の男女。
 その中心に、彼女は座していた。
 しばしの惰眠から目覚めた彼女は、大きな背伸びをひとつした後、傍らの男性を淫らに愛撫する。
 そして、たちまちの内に人外の快楽に陥った彼の脳を切開し、肉片を可憐な口元に運ぶ。
 噴出した鮮血が周囲を赤く染めるが、男女は自らの営みに夢中で、気にかける様子すら無い。
 既に、この空間は死と快楽に支配されているのだ。

「えっちなのうみそおいしいです」
 少女のように無垢な、彼女の姿。しかし彼女の肌の上には不気味な蛇が這い回り、周囲の男女は欲望に濁った崇拝の眼差しを向ける。彼女はリリスであり、また、リリスを従える者でもあった。
 周囲に侍る女性の中には、多くのリリスも存在した。彼女の淫蕩さは同属すらも魅了するのだ。
 裸身のまま蠢く者達は、口々に彼女を『揺籠の君』と呼び、崇拝していた。

「みずきんはいいひとです。ゆりゆりはやりたいほうだいです」
 揺籠の君はすっと立ち上がり、爽やかな風を浴びる。
 能力者を察知する彼女の本能が、風と共に彼女を敏感に刺激する。
 能力者達が、この今治市に集結する気配……彼女はそれに昂ぶっているのだ。

「むげんはんえいぷらすてんりんしゅうばーさすぎんせいかんがくえんです。よそうどおり、のうりょくしゃほいほいでたべほうだいです」
 そして、周囲のリリス達に向き直り、言葉を続ける。
「もうまちのひとはあきました。ゆりゆりはそろそろのうりょくしゃがたべたいです。みんなはどうですか?」
 嬌声を上げて主に応じるリリス達。そして、自らの望みを叶えるべく、リリス達は行動を開始するのであった。