〜太平洋 紀伊半島沖〜
まばゆいばかりの金色に輝き、竜のようにも、馬のようにも見えるその巨体。
全長50mを超えるその怪物は、中国の伝説に語られる聖獣、麒麟のようでもあった。
麒麟は、穏やかな性質を持ち、殺生を嫌う聖獣であると伝わっている。
だが、真実は違う。
『大いなる災い』!
災厄そのものを己が名に冠するこの巨大妖獣は、一心不乱に海上を進む。 大いなる災いがみじろぎすれば、海の水も、大気でさえも、元の姿を保ってはいられない。
次々と歪み、不気味に変容し……それらは遂に、大いなる災いの吐き出す残留思念を取り込んで妖獣化する。蹴立てた波が、荒れ狂う嵐が、次々と妖獣に変貌してゆく。
これこそが、『大いなる災い』の所以なのだ。
生まれた妖獣の数、既に数百体。海中を泳ぐもの、海底を歩くもの、海上を浮遊するもの……。
それらのいずれもが、百鬼夜行の如く大いなる災いに付き従う。
この群れは、何処を目指しているのか。
忘却期以前、「源平合戦」の折。
大いなる災いは、平家側の兵器として解き放たれたという。
もし、大いなる災いに合戦の記憶が残っていたならば、目指す場所はひとつ……。
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