〜敦賀港〜
神将「泰美鈴」の故郷での戦いで妖狐勢力に捕らわれた鷹星・迅(b46712)と終日・魁斗(b57167)は、中国の拠点で一通りの尋問を受けた後、貨物船に乗せられた。
そして船に揺られること数日……彼等は拘束されたまま、見慣れぬ港に連れ出された。
「……どこだ、ここは?」
魁斗が呟いた問いに、背後から答えがあった。
「嘗て都怒我阿羅斯等訪れたる、今や日の本の喉仏」
その答えは、迅達の背後に現れた長髪の男が発したものだった。
夜の港が沈黙に包まれる。
「……ここは日本で、福井県の敦賀市です」
長髪の男が言い直す。
ここで迅と魁斗は、長髪の男から発せられる圧倒的な邪気に気付き、本能からの戦慄を覚えた。
その力は、明らかに一人で一軍に値する。ここまでの力を持つ妖狐とは、まさか……。
「七星将たる我廉貞と相対し己保つとは、見上げた丈夫なり。『生命賛歌殺し』が為に供物とするは、些かの躊躇いを覚えん」
………………。
「……私は妖狐七星将のひとり廉貞(れんちょう)ですが、私と対面しても正気を失わないような立派な人達を、『生命賛歌殺し』の為の時間稼ぎに使うのはもったいないような気がします」
長髪の男が再び言い直し、ふたりを見据える。
「時間稼ぎ……だと!」
「俺達を人質にでもして、『生命賛歌』の効果時間を浪費させようって魂胆か!」
2人は相手の意図を察し、苛立たしげに舌打ちした。
(「生命賛歌殺し……だが、今はそれよりも」)
(「美鈴に、妖狐の虚偽のことを伝えられれば……」)
2人は思う。
故郷を守る見返りに、妖狐の神将になった美鈴。
妖狐が美鈴との約束を破り、彼女の村を滅ぼしていたのは間違いない。
その事実を美鈴に示すことが出来れば、もう彼女が戦う必要もなくなるというのに……!
横から別の妖狐が現れ、迅と魁斗を引っ立てる。
「あの松原公園が、お前達の処刑場となる。お互い、銀誓館学園がお前達を助けに来てくれることを願おうじゃないか」
言い放つ妖狐に引きずられるようにして、2人は再び日本の土を踏んだのだった……。
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