「人狼十騎士」狼使いローラ
〜ポーランド森林地帯・ローラの塔〜

 ここは、狼使いの森と呼ばれる場所にある、人狼騎士ローラの塔。
 洗脳を解かれ、密かに銀誓館に味方する彼女には、万一に備え、幾人かの護衛がついていた。

「状況的に、銀誓館の学生が出入りする訳にはいかんからな」
 スープの入ったコップを手に、螺旋剣ズィーベンがローラに話しかける。
「ありがとう、みんな」
「ローラは素直で可愛いですね。それに比べて」
「何でこっちを見るんですか、フォーヘンミアさん!?」
「アガテが可愛いのは、ガムテラの前だけですものね。残念です」
「な……! そ、それのドコが悪いんじゃボケェ!」

「まぁまぁアガテ、その辺にして」
 小太りの男『時計騎士ガムテラ』は、この場にいる人狼騎士『狼使いローラ』『螺旋剣ズィーベン』
『麗しの月フォーヘンミア』『西風のアガテ』を見回した後、ズィーベンに話しかける。

「ところでズィーベン、十騎士の誰がいわゆる『異形』なのか、手がかりは無いのかい?」
「う〜む。俺とローラ、アリスは除くとして……。確実に『異形』と判明しているのはカリストだけ、だな。皆と同じく、俺の過去の記憶は、ネジで改変されたものと考えるのが妥当だろう」
 ヨーロッパ人狼騎士団を統括する『人狼十騎士』のリストを眺めながら、ズィーベンは唸る。
「何か手がかりがあれば、銀誓館の助けになるかと思ったんだけど、そう上手くはいかないか」
「まぁ、仕方がありませんね。……そういえばズィーベン、ヤドリギの村に顔は出しました? ラプンツェルさんがあなたを探しているそうですけど」
「む、どうにも、あの女人は苦手で……」
「いい人なのに」「意気地の無いひと」「バカな男ねぇ〜」
第1席大騎士長ビスマルク
第2席無血宰相トビアス
第3席清廉騎士カリスト
第4席鈍色のシュルツ
第5席背徳のラダガスト
第6席紫煙公エリザベート
第7席狼使いローラ
第8席聖女アリス
第9席水晶剣ルルモード
第10席螺旋剣ズィーベン
 しかし、和やかな雑談は長くは続かなかった。
 次の瞬間、一同は一斉に塔を飛び出し、森へと躍り出た。
 塔の外から、尋常ならざる殺気を感じたからである……!