〜ポーランド森林地帯・ローラの塔〜
「そ〜れ、『グレイプニル』〜♪」
そう言った『異形』の放った長い紐にローラは絡め取られ、引き寄せられてしまった。
『異形』が現れて1分足らず。瞬く間に、戦場は地獄と化していた。
殺気を感じ塔を飛び出したローラ達を待ち受けていたのは、自らが殺害した人狼騎士『先駆けのヴィッシュ』の首を持った、まさしく『異形』であった。
あどけない声で話し、クマをかたどった可愛らしいパーカーを着用した『少女』。
だが、パーカーに覆われた頭部は、その全てが『脳』であったのだ。
人狼騎士達が何かを問いただすより早く、『異形』は装備しているライフルを手に、圧倒的な力量差による殺戮を実行したのである。『異形』は、人狼十騎士第2席『無血宰相トビアス』と名乗った。
ライフルをおろし、トビアスが再び少女の声で言う。
「裏切るなんて駄目だよローラ〜? 一緒に帰ろうね〜♪」
既に事切れたズィーベンとフォーヘンミアの上で、ローラを抱えたトビアスが踊る。
「本当は吸血鬼とやりあうつもりだったんだけど、誰かさんのせいでフェンリルが足りないからね。
ギンセイカンが相手でも別にいいんだけど、とりあえず目の前のあいつら殺そ〜っと!」
ライフルを生き残りのガムテラとアガテに向けたトビアスは、しかし意外な方向から反撃を受ける。
背後から突如現れた何者かが、剣でトビアスの後頭部を刺し貫いたのだ!
「「レオンハルト……!」」
「行け、ガムテラ、アガテ! 銀誓館に伝えるのだ!」
「『名も無き者レオンハルト』か、面倒だなぁ♪」
脳を刺し貫かれ、更にはローラを抱えたまま、人狼騎士レオンハルトと戦い始めるトビアス。
その僅かな隙を縫って、ガムテラとアガテは逃げ延びたのだった……。
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