七星将「廉貞」 & 洪・文曲
〜鎌倉市の路上〜

 1学期最後の登校日。文曲は銀誓館学園への通学路をてくてくと歩いていた。
 早くもなく遅くもなく。目立たない一学生として暮らすことを旨とする文曲は、通い慣れた通学路を
いつも通りのペースで歩いていた。

「連環の愚を見るが如し。奸佞邪智たる蛇蝎は清水で蠱毒を失いしか?」
 突然背後から掛けられた声に、文曲は久しく感じる事の無かった恐怖を覚え、通路の脇へと反射的に飛び退いた。思わず口から漏れてしまった絶叫を、誰が咎められるだろう。

「お、お久しゅうございます、廉貞(れんちょう)さま! そして……返す言葉もございません。わたしはかつてのわたしとは、すっかり変わってしまいましたゆえ……」

 妖狐七星将・廉貞は、文曲を見やって得心とばかりに頷き、言葉を続ける。
「逃兎を追うのが我が由ではない。此度の我は妖狐の特使である」
「それはつまり、銀誓館学園との交渉の仲介を、私につとめよとの事ですね……あっ、それはもしや、金毛九尾様は抗体ゴーストと戦うおつもりなのですか?!」
「当意即妙小気味良し。銀誓館学園へと案内せよ」