七星将「巨門」
〜東京湾上空2000キロメートル〜

 はるか、上空。
 いまだ大気圏外から、巨門が、眼下の青をぎらぎらと睨みつけている。
 まがまがしい歓喜の目だ。
「さあてっと、帰っていいとは言われてないけど、これは不可抗力だもん。月の連中に、ひきずりおろされただけだもんねえ。それに……」
 ぺろりと、舌なめずり。
「いまの妖狐どもに、ぼくを従わせる力なんてあるのかな? しっぽの二、三本も引き抜いて、ぼくが仕切ってもいいように思うしね。どっちにしても、いまさらまた寝るとか……ありえないし」
 巨門が、生身で大気圏にダイブする。ルナエンプレスでもない身だが。
 彼は、自分が生き延びると確信していた。