<世界結界>

■世界結界とは

 一人一人の個人が『不思議な事など存在するはずは無い』と思い込む事。
 それが、世界結界の力です。
 この強力な思い込みは、目の前で不思議な事件が起こったとしても、それを認める事が無いほど強力です。彼らは、目の前で巨大な猪に人間が踏み潰されても『よくある交通事故』であると認識し、不思議な事など何も無かったと考えます。
 もしかしたら、あなたの目の前に写っているのは、常識によって歪められた虚像かもしれません。

■シルバーレインの降りそそぐ地、日本

 世界結界は、数百年に渡って地球全土を覆っていました。
 しかし、この世界結界にも弱点が2つありました。
 1つは、世界結界が作り出した歪みが一点に集中する場所『日本列島』においては、その効果が充分に発揮できない事。
 もう1つは、人々が常識を疑い出すと、その効果が弱まってくる事です。

 シルバーレインが降り始めた1990年代は、急速なデジタル化と情報化により、一人一人の個人の思い込みが客観的に否定され、常識を信じる力が弱まり始めた頃です。
 つまり、世界結界が弱まった事が、シルバーレインが降り始めた直接の理由です。

 シルバーレインは現在の所、日本にしか降り注いでいません。
 しかし、日本でのゴースト事件が大きく取り扱われるようになれば、世界の常識は大きく崩れ、世界結界が完全に消失してしまう可能性もあります。

 詠唱銀によって発生するゴーストと戦い、怪異を取り除き、世界の常識を守る事こそ、現代の能力者達の使命なのです。

■世界結界によって引き起こされる不思議な現象

 世界結界の強力な常識の力は、時として、以下のような派生現象を引き起こします。

(1)事件に対する一般人の反応

 一般人は、ゴースト事件などの「常識が歪められるような出来事」を目撃しても、世界結界の効果により、それを何かの間違いであると認識してしまいます。しかしそれ以上に、そもそも一般人は「無意識のうちに、常識を歪める出来事から遠ざかる」ように行動します。

 公園で犬のリビングデッドを目撃した一般人は、「凶暴な野良犬がいると思い、悲鳴を上げて逃げる」ように行動しますし、その公園の近くを通りかかった人は、「何だか騒がしい物音がするが、変な事に巻き込まれたくないので、公園内を通るのは避ける」ように行動するのです。
 また、この時、一般人が事件の様子を記録したり、どこかに事件を知らせる事はありません。
 その為、ゴースト事件が起きている最中に警察が駆けつけたり、ゴースト事件の様子が報道されるような事も起こらないのです。

 また、例え直接ゴースト事件に巻き込まれてしまったとしても、世界結界の影響で「夢を見たか、何かの見間違いである」と思い込み、自分の記憶すら改竄してしまう為、後から事件を思い出したり、不思議に思う事は無いようです。

(2)「運命の糸」

 世界には、銀誓館学園の生徒の他にも、たくさんの能力者が存在すると言われています。ですが、全ての能力者が、互いに他の能力者の存在に気付いている訳ではありません。

 能力者同士は、「何らかの出会い」と共に、お互いが持っている霊的な「運命の糸」が結ばれない限りは、たとえどれだけ近い場所に居たとしても、お互いの存在に気付くことが出来ないのです。これは、世界結界の働きによって、「運命の糸」が結ばれていない能力者同士の出会いが阻害されているからだと言われています。

 銀誓館学園の能力者達は、過去の出会いによって「運命の糸」を得た事により、今は仲間として共に戦っています。
 しかし、この世界には、まだ他にも見知らぬ能力者が大勢存在しているはずです。「運命の糸」で結ばれた彼等を仲間にする事も、学園の目的のひとつかもしれません。


(3)「見えざる狂気」

 能力者は世界結界の影響を受けません。
 しかし、肉体年齢の高い者が、何らかの原因により能力者に覚醒した場合……常識を打ち破る力の弱い彼等の精神は、覚醒した能力に対する拒絶反応を起こします。
 その結果、肉体年齢の高い者は、能力を使用すればするほど、「見えざる狂気」と呼ばれる異常状態に陥ってしまいます。この症状は、多くの場合理性を保ちながら進行するので、発症に気付くのが困難な場合も数多くあります。

 このように恐ろしい現象ですが、銀誓館学園の学生達は、イグニッションカードを使いこなせることからも、将来「見えざる狂気」に陥る可能性は無いであろうと考えられています。