ステータス画面

青空を渡る水流の道

<オープニング>

「教主よ、準備が整いました……」
 何処とも知れぬ場所。居並ぶ重臣達に向かい、『教主』ウルカンダールが重々しく頷く。
 重臣のひとりが、おずおずと口を開いた。
「教主よ、今一度、お考え直して戴くことはできませんでしょうか。万一の事があれば、我々は……」
「我に万一の事あろうとも、『水神アクエリオ』が汝等を導くであろう。喜ぶが良い」
 ウルカンダールは話を続ける。
「『部位』の力をもってすれば、水神アクエリオのマスカレイド化さえもが可能だ。そして、ゼルデギロス双塔が完成していたならば、我は水瓶の外よりアクエリオのマスカレイド化が可能であった。だが塔はふたつとも破壊され、もはや再建の時間は無い」
 静まりかえる重臣達。襲撃者によって、彼らの築き上げたふたつの塔が破壊されたのは、いまだ記憶に新しい。

「ならば我自らが聖域へと出向き、水神直接アクエリオと対峙する。その為に、聖域への道を知るシーホースをマスカレイドとしたのだ」
「ならば、我等精鋭をお供に!」
「ならぬ。来るべき戦いは迫っておるのだ。
 汝等はその力をもって、さらに信者を増やせ。随従はミカエラとシビスだけで良い」
「はーいウルさま〜♪」
「やれやれ、それはつまり、僕らは軍団編成の役に立たないという事ですか?」
「らららシビスはみんなのきらわれもの〜♪」
「お前もだろうがこのバカトリ女!」
 ウルカンダールの前で口論する、一体のホワイトハーピーと一人の青年錬金術士。
 人呼んで「闇討ちのミカエラ」に「闇討ちのシビス」。同じ通り名をもつこの2者は、隠密機動と無差別殺戮を好む、教主の懐刀でもあった。
 ウルカンダール、ミカエラ、シビスは、道案内となる2体のシーホースマスカレイドを連れ、シーホースしか知らない「水瓶の入口」に向かうのであった……。



「あれ、リリアさん?」
「カディシュじゃん。何してんの? こんな所で」
 マスカレイド化したシーホースが来た方角を辿っていた不撓不屈の鋼・カディシュ(c01141)は、先日、その事件を共に解決した仲間の1人、舵輪の・リリア(c14179)とばったり出くわしていた。
 顔を見合わせてどちらからともなく笑うと、
「その様子だと、そっちも目的は同じみたいだな」
「じゃあ、リリアさんも聖域の様子を確かめに来たんだ?」
 おう、と頷き返すリリア。
 シーホースがマスカレイド化し、アクエリオを駆け巡る事件が多発した裏には、何が理由があるのではないか。だとすれば、その狙いは……水瓶に違いない。
 彼らは奇しくも同じように考え、聖域の入口の様子を確かめようとしていた。
 だが、シーホースが具体的にどこから現れるのかは判明していない。二人は肩を並べ、その場所を探していく。

「君達は……どうやら、お仲間のようですね」
 十字路にぶつかったその時、正面から優雅なポーズで歩いてきたのは鞭の魔曲使い・ティーア(c15145)だった。このような場所にエンドブレイカーがいる理由など、そうそうあるまい。
「じゃあ……」
「私もシーホースの事が気になりまして……責任も感じますし、ね」
 ふう、と物憂げに呟くティーア。更には東からも数人のエンドブレイカー達がやってくる。彼らもまた同様の理由から、この辺りを調査していた面々だった。
 目的が同じならば協力しようと、総勢10人のエンドブレイカー達が頷きあう。
 彼らが、まだ誰も調べていない西へと進み始めて、しばし経った時だった。




「えーと、ここを曲がって右向いて……あっ、本当にいた!」
 なにやら声がしたかと思うと、曲がり角の向こうから唐突に現れた人物からの声が、エンドブレイカー達に掛けられた。
 怪訝な顔をして、声の主の方に顔を向けてみる。
 君達に声を掛けたのは、快活そうな印象の、眼鏡を掛けた黒髪の女性だった。魔道書を抱え、ブラウスの上から革のケープを纏った姿は、魔法使いか学者のように見える。
「よっ、こんちは。あんたら、聖域の情報が欲しいんだろ? 調べてきてやったぜ!」

「!!! な、なんでそんな事知ってるんだよ? キミだれ?」
 あまりにもあっけらかんに言う女性に、碧誓・セフィラム(c22154)は思わず問いかけるが、女性からの返答はいまいち要領を得ない。
「いやー、なんかこう、ピカーッってひらめいたんだよ、ピカーッと。まぁあたしら錬金術士にはそういう事ってよくあるけど、でもそれとは全然違ったんだ。で、何か赴くままに調べてここに来てみたら、あんたらがたむろってたって訳だ。なんか、あんたらとは他人じゃない気までするんだよね……」
「いや、ピカーッと、って……」
「ちょっと待ってください、あなた錬金術士なんですか?」
 カディシュは呆れ、光と影の回旋曲・トレイル(c06908)は驚く。
 そして、
「ひらめいたって、もしや天啓? だとしたら彼女はもしや……?」
 明るく澄んだ空・シエル(c12577)は、ひとり考え込むのだった。

「ま、こまかい事はいいじゃん。理由は知らないけど、あんた達水瓶の中にいく通路を調べてるんだろ? 物凄く昔の『アクエリオの星』が残した書物に、それっぽい記述があったぜ」
 彼女が出した書物の写しを、黄金の羅針盤・ナシャ(c03314)と樹氷の華・コルネリア(c12931)は覗き込む。
「「青空を渡る水流の道……?」」
 タイミングを計ったかのようにピッタリのタイミングで2人はそれを読み上げた。
「ああ。本によると、シーホースがその場所で儀式を行うと、水の通路が噴き出して、水瓶の聖域への道を作るらしい」
「なるほど」
 錬金術士の言葉にコルネリアは頷く。それならば、シーホースしか聖域に入れないというのも道理だ。



「なるほど、青空を渡る水流の道さえ守れば問題は無さそうだね」
「ねぇ……」
「どうしました?」
「あれ……」
 トレイルの話を遮って、セフィラムは前方を指さした。
 道があるとされるその場所には……。

 シエルとカディシュが叫び声を上げた。
「水の通路が、出現している!?」
「馬鹿な、一体誰が……。あれは!」

 水の通路の上には、今まさに通路をさかのぼり聖域に赴かんとする、2体のシーホースマスカレイドが存在した。その背にはホワイトハーピーと闇色のローブの男、そしてもうひとり。

「あれはまさか『教主』……ッ!?」
 その姿を見て、白銀の月影・ルシエル(c08810)は声を硬くする。格上のマスカレイドである事を示す独特の形状の仮面と、体に備わった『魔王の部位』。
「おいおいおい、なんかヤバそうな仮面の奴らが聖域に向かってるぞ!」
 ルシエルに続き錬金術士の女性も叫ぶ。
「今すぐあの道に飛び込めば、奴らを追って聖域に行けるはずです!」
 スノードロップ・メイベル(c20884)はそう主張する。おそらくその主張は正しい。今いかなければ、聖域への道は消えてしまうだろう。
 だが、それならそれで、正気に戻ったシーホースを後ほど連れてくれば良い話だ。時間さえあれば、頼もしいエンドブレイカー達を数多く集めることもできるだろう。

 行くべきか、あえて立ち止まるべきか。
 10人は決断を迫られていた――。

参加者(NEXTエンドブレイカーズ!)
不撓不屈の鋼・カディシュ(c01141)
黄金の羅針盤・ナシャ (c03314)
光と影の回旋曲・トレイル (c06908)
白銀の月影・ルシエル (c08810)
明るく澄んだ空・シエル (c12577)
樹氷の華・コルネリア (c12931)
舵輪の・リリア (c14179)
鞭の魔曲使い・ティーア(c15145)
スノードロップ・メイベル(c20884)

 プレイング締め切りは『9月7日(水)朝8:30』です。
 相談用の一行掲示板もあります。下記URLからどうぞ。
 ⇒⇒⇒『青空を渡る水流の道』相談所

■さあ、君達はどうする?

 自分が何をするかを、ひとつ選択してください。
 錬金術士の女性は、特に何もなければ、いちばん多い意見と同じ行動をします。

(1)『教主』を追って聖域に向かう!
(2)引き返して援軍を集める

■プレイング(全角600文字まで)

 プレイングの受付は終了しました。

<プレイング>


不撓不屈の鋼・カディシュ(c01141)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

魔王を抑えてる水神さんがマスカレイド化…
とどのつまり、魔王が復活しちまうって事だよな?
んなエンディング、俺の大剣でぶっ壊してやんよォ!

・入り口
仲間が会話で時間を稼ぐ様なら様子見

失敗、或いは中断され逃げられた場合は
真っ直ぐ教主を追って行くつもりだ
が、道を防がれたなら
ワイルドスイングの吹き飛ばしを狙って抉じ開けてやらァ
他班の仲間に一礼して聖域へ向かうぜ
(エアクッション等で道を作られた場合、それに便乗する様試みる)

・聖域侵入後
水神さんを護る発言に関しては、全てプロミスを使うよ
敵と対峙するなり、聖域中に広がる声で叫ぶぜ
「刺し違えても構わねェ。水神さんよ、絶対ェにっ、アンタを護り切ってやらァ!」

可能なら水神配下の協力要請
ただ水神ががら空きになってしまうのなら
自分を守る事に集中してもらう様に

・戦闘
前衛位置
水神が傍に居るなら教主との間に立つ様にするぜ

シーホース達等の援護がある場合
教主に近付かないように
俺達EBの後ろから遠距離攻撃で狙う様に頼んでおくよ
マスカレイド化させる暇なんざやらねェぞ?

何があろうと教主狙いの一点張りよォ!
バトルトークで引き出せる情報は引出してェな
基本的にはヘブンリィスラスト
倒れそうな仲間にはコールオブヴァラー
(200程度の回復で教主の一撃で耐えれそうな場合。ただし1回のみ)
「此処で倒れたら…アクエリオ中のやつらが不幸な目に遭っちまうぜェ!?」
俺は凌駕の限り立ち続けてやらァ!

黄金の羅針盤・ナシャ(c03314)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

教主達が開いた道に僕達も便乗
聖域へ到着後すぐ教主達を捜索、発見次第接触
教主達が僕達の会話に応じない素振りを見せたらすぐ攻撃、戦闘開始

配下達とシーホース達が応戦、教主のみ水神を目指す場合と
シーホース達のみ応戦、教主と配下達が水神を目指す場合を想定
立ち塞がる敵を黒鉄兵団の紋章で吹き飛ばし教主を追いかける仲間への道を作る
狙いは行動を終えた敵を優先
空を飛ぶミカエラがその中に居る場合更に優先して吹き飛ばしスカイランナー達の道を作る
配下&シーホース達を相手にする場合配下達の奇襲を警戒して守備を重視
シーホース達のみ相手にする場合短期決着を試み皆へ一刻も早く加勢する

コルリ施療院の紋章は
敵が教主を含まない敵2体以下の場合負傷度が8割を超えている者へ
敵の数がそれ以上の場合負傷度が7割を超えている者へ使う
初戦に勝利したら一番負傷度が高い者のそれが5割を超えていた場合一度だけキャンプ効果を使用して治療し、皆を追う
追う際はフットプリントを後続に残す

上記以外の場合狂王アニールの紋章で攻撃
何をするか不明なシビスと杖を持っている教主へ優先して暴走をかけ
また教主と水神が共に居る場合マスカレイド化の狙いを逸らす事を願い教主へ暴走をかける
それ以外の状況では他の仲間が狙った敵を狙い積極的に数を減らす

許さないよ、この前この子達を盾にする様な戦い方をされたからね
森育ちの獣好き、ぎりりと犬歯も顕に怒り心頭
で、誰から頚椎砕かれたい?

光と影の回旋曲・トレイル(c06908)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

もしアクエリオ様がマスカレイドになってしまったら…
…そんな事は僕達が許しません。
最悪、援軍が来るまでの時間稼ぎで良い。止めてやります


・戦闘前

教主達に声をかけ、時間稼ぎの為の会話を行う。内容はメイベルさんのプレイングに沿います
会話が失敗、もしくは終了時点で戦闘に持ち込みます

戦闘前には、アクエリオ様の姿が見えずとも、隠れて貰えるよう叫びます
聖域内の星霊ディオス達かシーホースさん達が、アクエリオ様に伝えてくれるかもしれませんしね


・戦闘

水流の道の上で戦うにしても、聖域内で戦うにしても、僕は教主を狙います
配下に教主への道を塞がれた場合は、仲間が吹き飛ばしで開いた隙間を通って近づく
スカイランナーの方がエアクッション等で道を作った場合、タイミングを合わせそれに便乗出来る様試みる

僕の立ち位置は後衛
基本はマザーズウィスパーでの攻撃を行い、ハイパーが溜まればハイパー幻獣魔曲を使用
もし立っているのが自分一人だけになれば、基本攻撃方法をウィスパーから幻獣魔曲に切り替えます
翼のメロディ(ハイパーが溜まっていればハイパー翼のメロディ)は、残りGUTSが四割近くになった人に使う
ただし使用は二回まで

配下達が追いついてきても、ひたすら教主を狙い続ける
マスカレイド化する技を使用する兆候がないか警戒、それがアクエリオ様に向くなら庇います

凌駕の続く限り攻撃を続けて、倒れたとしても、奴の脛に齧り付いてでも妨害をしてやりましょう

白銀の月影・ルシエル(c08810)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

●伝言
錬金術師に残ってもらい酒場と
余裕があればアクエリオの星へ援軍の伝言を頼む。
EB、マスカレイドに関すること、アクエリオで起こっていること、
聖域に残った印を頼りに来て欲しい全て伝える。
また援軍の仲間には錬金術師について詳しく教えてもらう。

●追跡
教主を追って聖域へ。
教主らに存在を気付かれていなければ
ディオスに水神の危機を伝えてもらう。
可能なら位置を教えてもらい、魔王の封印を守る手段を聞く。

●時間稼ぎ
錬金術師の一方か可能なら教主にチェイスを使用。
怪盗がEBと手を組もうとしている事などを話し、援軍までの時間稼ぎ。

●戦闘
もし戦闘となり、教主が手下を残し先へ行く場合は手下の足止め。
また手下を囲み牽制し、教主班を先へ通す。
教主班:シエル、コルネリア、カディシュ、トレイル、リリア
足止め班:メイベル、ルシエル、ナシャ、セフィラム、ティーア
バッドハーピー>錬金術師>シーホース
サンダーボルトを使用してチャージを得て薔薇の剣戟の繰り返し。
ハイパー状態になったらチャージを得た上で
ハイパーフェイズストライク。
負傷度の高い敵を優先して集中攻撃。

●教主
チェイスかフットプリントを頼りに教主班を追う。
フットプリントが無ければ援軍への目印として砂に印を残す。
もし戦闘になっていれば加勢。

万一全滅の場合は力を振り絞って教主らの行った方向くらいは残す。

●心情
アクエリオ様のため、延いてはアクエリオのため、撤退の文字はない。

明るく澄んだ空・シエル(c12577)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

戦闘前
まずは大声を挙げ、相手に追走者がいることを気付かせるわ
教主たちと対峙したら、援軍をすでに手配した
尻尾を巻いて逃げ帰りなさいと脅しをかけ、相手の動揺を誘ってみるわ

もし、敵が別々に行動した場合は、教主を追いかけるわ
他の敵が邪魔するなら
「ロープ」や「エアクッション」を利用して相手の頭上を飛び越えたり、
仲間が開けてくれた隙間を突破したりして追いかけるわ


戦闘
基本はスカイキャリバーで教主を優先的に攻撃
バステになったらドリルインパクトで攻撃しつつバステ回復を試み、
ダメージがGUTSの半分以上になったら、ゲットセットで回復するわ

戦闘の際は、なるべく武器同士がぶつかる音などを鳴らし、
聖域内が異常事態であることを、聖域内に住まう者たちに分からせるようにするわ


もし水神アクエリオと教主が対峙し、
教主がアクエリオに怪しい魔法や何かの薬品などをかけようとするなら、
そうなる前に間に割って入り、身を挺して守ることも考えておくわ



錬金術師には、引き返して援軍を集めてもらう
どこに向かえばいいか分からないようなら、
私たちエンドブレイカーがよく出入してる酒場の場所を教え、
教主が、水神アクエリオのいる聖域に侵入した。
聖域への援軍と、万が一アクエリオ全体がヤバい事態になっても
すぐ対応できるよう警戒態勢をとっておいて欲しい、という内容の伝言をお願いするわ

それと、会ったばかりの人にこんな事頼んじゃって悪いわね、と謝っておくわ

樹氷の華・コルネリア(c12931)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

【目標】水神様の無事
その為の犠牲は厭わない
出来る限り時間を稼ぎ、そして勝利を
刺し違えてでも教主を退けるわ
貴方なんかにアクエリオ様は渡さないから…残念だったわね?

基本作戦は皆と同じ

◆追跡
ゴンドラが必要なら操舵
通路に入る前からフットプリント使用
錬金術師様にも見える様にしておく

聖域ではディオスや水神様に状況を伝達
水神様に星霊達等と可能なら協力

教主には会話で時間を稼ぎ
水神の居場所はこちらの方が知ってるわ等ホラを吹いたり
強気な姿勢で
こちらを怪盗だと思うなら否定せず話を合わせ

◆教主
わたくしは教主班で
配下は足止め班に任せ只管教主を追うわ
エアクッションで敵の頭上を飛び越え配下をまく
使用の際はカディシュ様とトレイル様にも声をかけ同乗を
無理なら吹き飛ばし等の隙を狙う
更なる追跡の際も常にフットプリント使用で後続に備え

教主が水神と対峙するなら、間に割って入る
マスカレイド化の技を使う兆候、部位付きの杖には特に注意
身を盾にしてでも水神様を守るつもりよ

◆戦闘
前衛
進路を塞ぐor水神様を庇う位置取り
まずエレクトロウィップで剣付与
剣が出れば6目はスーパーキャンセルで3マヒに
その後はロデオグラップルで攻撃
バッドステータスが厳しければ空中殺法でキュアを試み
チャージやエンチャントは積極的にブレイク
それ以外で不要な目は振り直し
ロデオなら6、他必要な目を狙う

負ける気も引く気も無いの
わたくしはわたくしを信じ
…何よりも皆を信じているわ

舵輪の・リリア(c14179)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

●心情
さんざんアクエリオにお世話になっておいて
危機を見逃すようじゃ、海賊じゃないよね。
勝ち目の薄い戦いだけど、一泡くらいは吹かせてあげるよ。

●追跡
聖域に入ったら高い場所に登るなどして偵察。
教主達の発見を試みる。

援軍が来たら、君たちの企みもお終いさ!だからそれまで、時間を稼がせてもらうよ。
などと言ってメイベルの会話を後押し。これで少しでも焦ってくれればね。

●戦闘
教主班として行動。全滅するまで退却しない

教主が孤立しなかった場合は、そのまま攻撃開始。

教主が孤立した場合、教主の部下達を突破し教主を追うよ。
エアクッションで上空から突破したいけど、無理な場合はシールドバッシュで吹き飛ばして突破するつもり。
エアクッションを使う前に、カディシュとトレイルに声を掛けて、タイミングを合わせて使うようにするよ。同乗できれば楽だし
教主に追いついたら、攻撃開始。


いずれの場合も、教主の他に敵がいても、教主を最優先に攻撃を仕掛けるよ!ただし、アクエリオ様に教主が手を出しそうになったら、かばうつもり。
最初の一撃だけは、盾と暴走が付くことを期待してシールドプレス。負けたとしても長く持ちこたえれば、アクエリオ様が逃げる時間を稼げるかもしれないし、ね。
それ以降は、スカイキャリバーでひたすら攻撃!

もし、教主やマスカレイド化したアクエリオ様が撤退しそうになったら、チェイスで追跡するよ。拠点の方角だけでも分かるといいんだけど

鞭の魔曲使い・ティーア(c15145)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

シーホースをマスカレイド化したのはこの為だったのですね…。
責任を感じてしまいますが、アクエリオ様を護るために最善を尽くしましょう。
教主を退けるために刺し違える覚悟で挑めば、最悪時間稼ぎくらいはできるはず。


【追跡】
ヒアノイズを使い、何か聞こえないか細心の注意を払いながら追いかけます。
聖域ではディオスがいたらアクエリオ様に危機を伝えるよう頼んでみます。
教主に対して皆さんが会話している時は、何かあってもすぐ対応できるように周りに気を配ります。


【戦闘】
私は足止め班で。
教主班の方が教主との戦いに専念できるよう配下達と分断・足止めを試みます。
教主と配下達が一緒にいる場合でも教主は教主班にお任せします。

攻撃優先順は、倒せそうな敵>ミカエラ>シビス>シーホース

後衛から誘惑魔曲で4マヒ付与を狙います。
一通り配下に4マヒ付与できたら攻撃優先順に誘惑魔曲で攻撃を。
教主の方へ行こうとする配下がいたら、攻撃や会話・挑発等でこちらに注意を引くよう行動してみます。
配下を引き止める時など移動後攻撃する必要がある時のみエレクトロウィップを使用します。

GUTSが60%より少なくなった方がいたらブレイブソングで回復を。
その際回復が重複しないように声を出すなどして気をつけます。

攻撃でも回復でも仲間との連携を意識して行動するようにします。
※仲間と方針のズレがあったら他の方の指示に従います。

スノードロップ・メイベル(c20884)
選択行動:(1)『教主』を追って聖域に向かう!

アクエリオ様に何かあればその時点で詰みです
援軍を待つ余裕はありません。教主を追います
戦って勝てなくても刺し違えるつもりでやれば、
教主だけでも倒したり、最悪でも時間稼ぎくらいできるはず
エンドブレイカーとしての覚悟の決めどころ
やってやろうじゃ、ないですか

●錬金術師への指示
時間を取らない範囲で錬金術師さんにエンドブレイカーの事を教えて伝令を頼む
他のエンドブレイカーと、特にアクエリオの星・リィナ(c01845)さんの居場所を教え(私と同旅団なので見当はつきます)彼女に伝えるように念押し
伝令事項はわかる事全て
また、予め錬金術師との戦いの注意点を聞きそれに従う

●追跡
ディオスがいればアクエリオ様に危機が迫っている事を伝えるようお願い

聖域に入ったらホークアイを使い教主を追跡
追いついたらまずは会話による時間稼ぎを試みる
戦闘になりそうなら怪盗や援軍の存在を仄めかし、
教主が事を急ぎ単独行動で孤立するよう仕向ける

●戦闘
私は足止め班
教主班を教主との戦いに専念させるため、罠や氷の檻で教主追跡を援護、配下との分断・足止めを担当
倒すことより持ちこたえ時間を稼ぐことを優先
攻撃優先順は、倒せそうな敵>ミカエラ>シビス>シーホース
教主は教主班に任せる

後衛の位置からトラップフィールドでマヒ狙い
配下に一通りマヒが行きわたったら武創氷術に切り替えて攻撃

ダメージが2/3以上の仲間がいればアスペンウインドで回復
ハイパーは回復のために使う

<リプレイ>

●錬金術士
「ウルカンダールを追うぞ!」
 不撓不屈の鋼・カディシュ(c01141)の言葉に、エンドブレイカー達は決意を固めた。
 聖域に侵入しようとする『教主』ウルカンダール。その目的が聖域……水神アクエリオであろう事は、エンドブレイカー達にとっても想像に難くない。
「さんざんアクエリオにお世話になっておいて、危機を見逃すようじゃ、海賊じゃないよね」
「ええ。追いつけるのは、今だけでしょう」
 舵輪の・リリア(c14179)と光と影の回旋曲・トレイル(c06908)が頷きを交わす。
「わたくしのゴンドラを使いましょう。ついて来て下さい!」
 水路へ駆け出す樹氷の華・コルネリア (c12931)の後に続いて、エンドブレイカー達は走り出した。時間は一刻を争う。後ろをついて来ながら、どこか困惑したように錬金術士の女性が言う。
「な、なあ……あんた達、あいつらと闘う気なのか? 連中、どう見てもマトモじゃないって!」
「それが、エンドブレイカーですから」
 スノードロップ・メイベル(c20884)は、小さく微笑んだ。そこに宿る確かな決意に、錬金術士の女性は言葉を失う。
 走りながら、メイベルが簡単にエンドブレイカーとマスカレイドについて説明する。半信半疑といった様子の彼女に白銀の月影・ルシエル (c08810)が問うた。
「済まないが、簡単に錬金術士がどう戦うかを教えてくれないか? さっきの連中は、錬金術士の力を使うらしいんだ」
「そ、そうなのか!? えーと……錬金術士は、この『賢者の石』から色んなものを創造するんだよ。戦闘の時は、人工生物とか、武器とか鎧とか」
 錬金術士が手の甲を近くの壁に向ける。青い石が光を放つと、石から溢れ出した金色の蝶が、壁に止まった。
 黄金の羅針盤・ナシャ(c03314)が感心したように呟く。
「へぇ……綺麗なもんだね」
「まあ、さっきの連中なら、あたしが知らないトンデモないのを出して来るかも知れないけどな」
(「この女性も、戦い慣れているわけでは無さそうですね」)
 鞭の魔曲使い・ティーア(c15145)は内心でそう思う。内心で同様の判断を下しつつ、明るく澄んだ空・シエル(c12577)は口を開いた。
「一つお願いがあるんだけど、構わないかしら? 事件の事を、『アクエリオの星』のリィナさんに伝えて欲しいの。ついでに援軍も」
「旅人の酒場に行ってみて下さい、私達の仲間がいますから。エンドブレイカーと言ってくれれば分かるはずです」
 アクエリオの危機ということは錬金術士の女性も感じていたのだろう、即座に肯定の頷きが返って来る。
 とはいえ、リィナもシーホースがいなければ、聖域へ入ることは難しいだろうが……。
 そう話している間に、彼らはコルネリアのゴンドラが留めてある場所に辿り着く。
 仲間達が乗り込むと、コルネリアはオールで岸を突いた。動き出すゴンドラから、シエルが、岸に残った錬金術士に声を投げる。
「会ったばかりの人に頼んじゃって悪いわね!」
「あんた達こそ、無事で帰って来いよな! 死ぬなよ!」
 錬金術士の声を受けながら、エンドブレイカー達を乗せたゴンドラは、水流の橋へ向け速度を上げて行った。
「しっかり掴まっていて下さいませ」
 衝撃と共に、エンドブレイカー達を乗せたゴンドラの舳先が水流に乗った。普通の船なら簡単に押し戻されるところだが、星霊ディオスを描かれたゴンドラは尋常の船ではない。ゴンドラは無理やり水流に逆らい、乗ったエンドブレイカー達と共に水流を昇り始める。
 シーホースに乗って青空にアーチを描く水流の先を行く『教主』ウルカンダールと、その配下達を追い、ゴンドラは加速していく。

●水流の橋を越えて
「待ちなさい、『教主』ウルカンダール!」
 水流を遡って接近するゴンドラの上から、シエルはウルカンダール達の背へと声を張り上げた。
 後方のシーホースの背に座っていたホワイトハーピー『闇討ちのミカエラ』が、エンドブレイカー達の乗るゴンドラに視線を向ける。
「ウル様、後ろから誰か来ますよ〜?」
「あやつらは……マスカレイドでは無いな。ゼルデギロス双塔を崩した連中の仲間か」
「もうすぐ、こちらの援軍が来るわ、尻尾を巻いて逃げ帰りなさい!」
 シエルの言葉に一瞬視線をそちらに投げ、ウルカンダールは配下達に告げた。
「分かっておるな、ミカエラ、シビス」
「ええ。奴らは僕とトリ女で足止めしますよ。教主様は本来の目的を果たされて下さい」
「だーれがトリ女よ!」
 言うと同時に、シーホースは水瓶の口をくぐった。エンドブレイカー達を乗せたゴンドラが、それに続く。

 水瓶の中の聖域は、アクエリオの星・リィナが訪れた時と同じ美しさでエンドブレイカーとマスカレイド達を迎えた。
 だが、その光景に心を奪われている余裕は敵にも味方にも無い。
 白い波を蹴立てて止まったシーホースの背から、マスカレイド達が砂浜に降り立つ。突然の闖入者に周囲にいた星霊やシーホース達が視線を向けるが、ウルカンダールは堂々と宣言した。
「我らは水神の使いたるシーホースに招かれ、この聖域に参上した者! 水神アクエリオにお目通り願おう!」
「小賢しい手を使いますね」
 『部位』を収めたウルカンダールの言葉に、ティーアは思わず呟く。
 だが、有効な手だ。
 マスカレイドの仮面を見ることが出来るのはエンドブレイカー達のみ。
 アクエリオはエンドブレイカーとマスカレイドの存在を知り、シーホース達にもそれは伝わっているのだろうが、彼らにもどちらが味方なのか区別することは出来ない。
 そうするうち、マスカレイドシーホースはウルカンダールを先導し、聖域の奥へと進んでいく。
 エンドブレイカー達もそれを防がんと声を上げようとする。だが、それを教主に付き従うマスカレイド達が黙って見過ごすはずもなかった。
「アクエリオ様に伝えてください、そいつは……!」
「刺し違えても構わねェ……」
「おっと、変な真似はしないでもらおうか」
 ゴンドラの上のトレイルとカディシュに、闇討ちのシビスは鋭い視線を向けた。
「シーホースの帰還に乗じて侵入するとは、不届きな奴らめ! ……ってね」
 右手に埋まった青い石から光が生まれた。その光ごとを、シビスは砂浜に手の平を叩き付ける。
「不届き者はそっちだろ!」
「錬金術が来る!」
 シビスに食って掛かるナシャに、ルシエルは警告の言葉を向けた。
「コルネリア、前、突っ込んで!」
 リリアの声にコルネリアがゴンドラを砂浜に突っ込ませると同時、寸前までゴンドラがいた位置を、水中から現れた巨大な土の拳が貫く。
「キャハハ! 何やってるのよシビス〜♪」
「成る程、あれが錬金術ですか……」
 翼を羽ばたかせたミカエラが甲高い歌を響かせるのに、ティーアは顔をしかめた。その間に突進したシーホースマスカレイドが、前脚でルシエルを蹴りつけて来る。
「くっ……!」
「あんた達なんか、アタシとシーホースだけでも十分よ〜♪」
 歌うように言い、シーホースを前衛として後ろに控えるミカエラ。その姿に、ナシャは奥歯を噛んだ。
「またシーホースを盾にする気か……!」
 ナシャの大鎌が、空中に紋章を描く。現れるのは、破城槌を構えた黒鉄の騎士の姿だ。
「攻撃陣形……! 破城槌、吶喊!」
 こちらの行く手を遮らんとしたマスカレイドを、黒鉄の騎士が弾き飛ばした。ミカエラへと魔曲を響かせながら、ティーアが仲間に開いた道を指し示す。
「皆さんはウルカンダールを!」
「ここは、私たちに任せて下さい!」
 罠をばらまき、敵の足を奪いながら、メイベルもまた仲間達を促す。
 コルネリア、シエル、カディシュ、リリア、トレイルの5人が、残る4人の開いた隙間を走り抜けた。そのまま一直線に、ウルカンダールの後を追っていく。
「ここは頼んだぜ!」
「行かせると思うか!」
 新たな錬金術を発動させようとしたシビスを遮るように、ルシエルが愛用のナイフを振るった。奇襲となった一撃を受け、シビスのローブが血に染まる。
「邪魔は、させないよ」
「チ……」
「さあ、誰から頸椎砕かれたい?」
 ナシャが新たな紋章を描きながら問う。だが、残ったエンドブレイカー達を見て、ミカエラは嘲笑うように歌った。
「おばかさーん♪ たった4人で、わたし達に勝てるはず無いのにね〜♪」
「だとしても、構わないさ。援軍が来るまで時間を稼げれば、それでいい」
 ルシエルは静かに応じ、ミカエラを睨み付けた。他の3人も気持ちは同じだ。
 今は、何よりも教主を追うことが優先される時だ。だが、エンドブレイカー達に対し、シビスは冷笑を向ける。
「同じことだよ。まさか君達、教主様を相手にして、1人1分保つとでも思ってるの?」

●『教主』ウルカンダール
 砂の上に残る足跡を追い、エンドブレイカー達は清浄なる聖域を駆け抜けた5人のエンドブレイカー達は、ローブの背に追いついていた。
 ウルカンダールへの道を阻もうとしたシーホースマスカレイドを連続しての攻撃で打ち倒した5人へと、髑髏を先端に備えた杖を手にしたウルカンダールが振り返る。
「……数が減っておるようだな。お互い、考えることは同じか」
「最悪なこと言ってくれるわね」
 リリアが吐き捨てるように言う。表情を揺らすことなく、ウルカンダールはそれまで隠していたマスカレイドとしての姿を示した。
「水神との戦いの前座だ。まずは貴様らを片付けてやろう」
 ウルカンダールの左手から、青い光が放たれた。杖の髑髏に埋め込まれた青い石が共鳴するように光を生む。
「暴食の使徒クラビウスよ、存分に喰らうがいい!」
 光が黒に染まり、巨大な黒い球体が現れる。
 球体は半ばから上下に開いた。その中に見えるのは、揃った白い歯と黒々とした空洞だ。舌なめずりをしながらこちらに迫る球体『暴食の使徒クラビウス』の姿に、トレイルは思わず呻いた。
「あの黒いのも錬金術、ですか……」
「段々キワモノになってる気がするわね……っと!!」
 剣呑な球体を逃れんと、シエルは後ろに飛びのいた。
「つッ……!」
 一瞬歯が接した部分から肉がこそぎ取られた。飛び散ったよだれが付着した肌から白い煙が上がり、シエルの体を蝕んでいく。砂の上に転がるシエルをよそに、さらに後衛の仲間へとクラビウスは直進していく。
 だが、魔王の『部位』を持つウルカンダールと戦う事を決めた時点で、多少の傷は覚悟の上だ。
「おおおッ!!」
 振り返ることなく突進したカディシュの鋭い突きが、続けざまにウルカンダールの胴へと繰り出された。光を帯びた大剣が、ウルカンダールに突き立つ。
 さらにコルネリアの振るった電撃を帯びた鞭が、飛び込んで来たリリアの盾とシエルのナイトランスが、トレイルの魔曲が、続けざまにウルカンダールを襲った。
 だが、その直後、エンドブレイカー達は己の目を疑うことになった。
「なんてこと……」
 コルネリアが呻く。
 確かに直撃したはずの数々の攻撃は、ウルカンダールにとって大したダメージとはなっていない。ウルカンダールの左半身を覆った『部位』が放つ強大な魔力が、『教主』が倒れる事を許さない。
「それではまだ、我が魔力を突破するには足りぬな」
 魔王の『部位』を持つマスカレイドの力を、エンドブレイカー達はまざまざと見せつけられていた。弧を描いて戻って来た暴食の使徒クラビウスが膨張し、エンドブレイカー達を喰らわんと襲い掛かっていく。

●水神と教主
 僅かな時間で、戦いの趨勢は明らかとなっていた。
 魔王の『部位』を持つマスカレイド、『教主』ウルカンダール。その力は、5人のエンドブレイカー達が死力を尽くしてなお、それを上回るものだ。
「当然の結果であろう。お前達が、私に勝てる道理は無い」
 ウルカンダールが告げる。幾度となくエンドブレイカー達の攻撃を受けているウルカンダールだが、まだ表情は平静を崩していなかった。
 対してエンドブレイカー達は、満身創痍の言葉が相応しい状態だ。
「たとえ勝てずとも……時間稼ぎぐらいはしてみせます!」
「そうそう。援軍が来たら、君たちの企みもお終いさ! だからそれまで、時間を稼がせてもらうよ!」
 トレイルの言葉に、リリアが同調する。シエルがランスの穂先をウルカンダールに向け、コルネリアがゆっくりと鞭を構えた。
「刺し違えてでも構わないわ……あなたは、ここで倒す」
「ああ、此処で倒れたら……アクエリオ中のやつらが不幸な目に遭っちまうぜェ! 俺達がどうなっても構わねぇ。水神さんよ、絶ッ対にっ、アンタを護り切ってやらァ!」
 カディシュが聖域に響き渡れとばかり、声を張り上げる。
「愚かしいことよ。己の身も守れぬ者が、何を守るというのだ?」
 喉の奥で低く笑ったウルカンダール。その手にした杖が、青い光を放った。
 再び出現した暴食の使徒クラビウスが、歯を剥き出しにエンドブレイカー達へと襲いかかる。
「くそっ……!」
 エンドブレイカー達を骨の一片までも喰らい付くさんとばかりに口を開く。
 避け切れないことを悟り、カディシュは迫る暴食の使徒を睨み付ける。
 だが、その突進がエンドブレイカー達に届くことは無かった。

 エンドブレイカー達の前に現れた水の翼が、暴食の使徒を受け止める。暴食の使徒は虚しく口を開け閉めするが、その歯は水を噛むばかりだ。
「遅くなって、すまなかった。よく耐えてくれたね」
 柔らかな、しかし威厳のある声と共に、水の翼から羽が舞い、エンドブレイカーの体に降り注いだ。清浄なる水が、彼らの傷を癒していく。
「星霊達も混乱していたために、連絡が遅れてしまったようだ。君達の仲間の方にも応援のシーホース達を向かわせているから、安心して欲しい」
 巨大な水の翼を背に負った水神アクエリオは、エンドブレイカー達にそう告げた。
「水神アクエリオ……」
「ウルカンダールというようだね。魔王の信奉者が、この聖域に足を踏み入れたのは初めてだよ」
 錬金術士と水神が、聖域の砂浜で向かい合う。
「アクエリオ様、隠れていて下さい!」
 トレイルは思わず叫んでいた。
 アクエリオをマスカレイド化させる事こそが、敵の狙いだ。こうしてアクエリオが姿を現すのは、敵の狙い通りのように思えた。
 だが、アクエリオは体を横に振った。
「私は魔王を封じ、人々を救わんとする祈りによって、この地に招かれた者。君達エンドブレイカーが人を救おうとするように、魔王が再び現れんとしているなら、それを防ぐのもまた、水神アクエリオの使命だ」
 と、エンドブレイカー達に視線を向け、水神アクエリオは目を細めた。
「それに、さっきみたいな熱い言葉を聞いて、戦う勇者に助力しなかったら、なんかこう、駄目だろう?」
 エンドブレイカー達の顔に、笑みが浮かんだ。
「協力、ありがとう。でも、攻撃はわたくし達が中心にするわ」
「エンドブレイカーでない人がとどめを刺すと、棘(ソーン)が消せないからね」
 シエルとリリアが言う。既に『棘(ソーン)』に関する説明をアクエリオの星・リィナから受けているアクエリオは、体を縦に揺らして同意を示した。
「分かった。私は、君達の支援に回るとしよう」
「既に勝ったつもりか!」
 ウルカンダールが苛立ったように声を上げる。だが、アクエリオはきっぱりとそれに応じた。
「魔王を封じた水神が勇者と共に戦うんだ。『苗床』にも至らぬ君に、勝てぬ道理が無いだろう。……それに、誤魔化しているようだが、君もだいぶ消耗しているようだね?」
 アクエリオが本来の翼でウルカンダールを指し示した。塔ほどもあろうかという清浄な水の奔流がいずこからともなく現われ、膨大な質量をもってウルカンダールを襲う。先程までエンドブレイカー達を圧倒していたウルカンダールが、表情を歪めてその水流を受け止めた。
 強烈な魔力の迸りが両者の間で衝撃を生み、聖域の木々が帯びた葉がたちまち飛ばされていく。
 教主の放った反撃の銀鎖が水を突き破りながら回転、アクエリオ本人を縛り付けようと伸びるが、水神はそれを水翼一枚を犠牲に防いだ。鎖に引きちぎられた水翼の代わりに、新たな水翼が背から生えて来る。
「……あれ? 水神様、私達より強くない?」
「……まあ、魔王ゼルデギロスと同時代から生きる存在ですもんね……」
 激しい攻防の開幕に、エンドブレイカー達は改めて思い出す。この一見愛らしい姿の水神もまた、『伝説の時代』の存在なのだ。
 だが、一見優勢なアクエリオに余裕の色が無いのに気付き、リリアは気遣わしげに声をかける。
「大丈夫なの?」
「封印に力を割いているから、連発は辛いんだ。攻撃は頼むよ、エンドブレイカー!」
「分かったわ!」
 アクエリオの声を受け、エンドブレイカー達は一気に動いた。
 足元を流れる水が水神の意志を受け、エンドブレイカー達を後押しする。
「調子に乗るな……! 舞い踊れ、蝶よ!!」
 教主の掌から爆発的な勢いで舞った蝶が黄金の鱗粉をまき散らし、エンドブレイカー達の目を奪う。
「野郎! けど、今さら、止まってられっかよォ!!」
 カディシュの手にした朱き大剣が、光輝のエネルギーを帯びて突き出された。立て続けに繰り出される切っ先が、ウルカンダールの魔力障壁を揺らす。それを皮切りに、エンドブレイカー達の攻撃が一挙に繰り出されていく。
「タイミング合わせて、行くわよ!」
 シエルを先頭に、スカイランナー達による空中からの攻撃がウルカンダールを頭上から襲い、トレイルの魔曲がウルカンダールの意識を奪わんとする。
「小癪な!」
 ウルカンダールの側にも、先程までの余裕はない。
 敵にマスカレイド化の対象として狙われている上、『棘(ソーン)』のこともあって積極的に攻撃に参加できないものの、隙あらば必殺の大水撃を叩き込めるアクエリオの存在は、彼の注意を逸らしていた。
 それでもなお、魔王の『部位』を持つマスカレイドはただやられるような相手では無かった。
 白銀の鎖によって完全に縛り上げられたカディシュが戦線を離脱し、上空に飛ばした黄金の蝶が、シエルとリリアを魅了する。
 単独の長期戦で消耗しながらも目をギラつかせ、ウルカンダールはエンドブレイカー達を睨む。
「ここまで、邪魔立てしてくれようとはな!」
「こちらには、負ける気も引く気も無いの」
 息を深く吸うと、コルネリアは宙返りからウルカンダールの頭の上に飛び乗った。足を首に絡ませ、思いっきり締め上げる。首を足で締め上げたまま、コルネリアは体重を移動させた。ウルカンダールの体勢が崩れ、濡れた砂の上に叩き付けられる。
「この程度で!」
「でしたら、続けて攻撃するまで!」
 コルネリアが体を捻るたび、2回、3回と続けざまに砂の上に叩き付けられたウルカンダールの喉から、苦痛の声が漏れた。
「今……! コルネリアさん、離れて下さい!」
 トレイルの魔曲が、竜の如き幻の怪物を招来する。翼を広げた幻獣は聖域の大気を割って飛んだ。飛翔突撃を敢行した幻獣の爪牙が、ウルカンダールの胴を大きく引き裂く。よろめきながら、教主は目が水神とエンドブレイカーを睨む。
「水神……いや、貴様らこそが、我が最大の障害であったか。まさかここで『秘術』を使うことになろうとは……!!」
 謎めいた最期の言葉と共に、体を血に染めた教主の体が仰向けに倒れ込む。血飛沫の音と共に、その左頭部を覆っていた魔王ゼルデギロスの『部位』もまた消失した。
 寄せる波が倒れた教主の体を濡らし、赤い血が広がっていく。
 君達は、部位所持者たる『教主』の打倒に成功したのだ!

●教主の死。そして……。
 その頃、仲間達のために後に残ったエンドブレイカー達の戦いも、決着を迎えつつあった。
 拒絶体マスカレイドと化していたシーホースは既に正気を取戻し、残るシビス、ミカエラも、シーホース達の攻撃の前に追い詰められつつある。
「後は任せて!」
 シーホースに攻撃を止めるよう頼み、エンドブレイカー達は再び戦いに舞い戻る。
 水神からの救援が来る以前の戦いで消耗しきっているが、棘(ソーン)のことを考えれば、戦いをシーホース達だけに任せているわけにもいかない。
「もう、ズルいじゃない! あなた達さえいなければ、全部うまく行ってたのに!」
「こちらは命を賭けた、そして賭けに勝った! それだけの話です!」
 ティーアが砂浜を蹴り、中空に浮いたミカエラの直下に滑り込んだ。頭上へと伸ばした鞭が電撃を帯びて、ミカエラの足を絡め取る。
「メイベルさん!」
 動きを止めたホワイトハーピーを、メイベルのアイスレイピアの切っ先が指し示した。氷の狼が、冷気を迸る冷気と共に宙を駆け抜けた。
「ヒッ!?」
 息を呑むのと同時、氷壁の中に封じられたミカエラの体が、砂浜に落下し動きを止める。
「バカ鳥、何やられてんだ!」
「余所見をしてる暇があるのかな?」
 ナシャの紋章からけたたましい哄笑が上がり、シビスの心をかき乱す。瞬間、ルシエルの体が何重にも分かれた。無数の分身が刃と魔法を若い錬金術士へと叩き込んでいく。
「畜生、こんな連中に……!!」
「終わりにしよう!」
 剣魔融合斬。
 連撃の終端として魔法剣士の名に相応しい一撃を入れ、ルシエルはナイフを鞘に納めた。
 マスカレイド達は動けない。倒れたマスカレイド達を見下ろし、エンドブレイカー達は安堵の息をつく。
「これでひと段落、ですね」
「ああ。あとはウルカンダールを倒せば……僕達の、勝ちだ!」
 だが、その言葉を聞き、倒れていたシビスは酷薄に笑った。
「フフフ、君達はマスカレイドに詳しいようだが、俺達の人生には疎い……」
「人生、それはどういう……?」
「俺達は、マスカレイドという力だけに頼っているのではない。それぞれに人生を背負い、培った技や術を背負っているのだ。我等ゼルデギロス教団が培ってきた『血の秘術』もそれだ。自らの死を代償に、魔力を最大化する……」
 シビスの言葉に、事態を理解したメイベルの表情が、一瞬で蒼白になる。
「まさか……まさか!!」
「ど、どうかしたんですか?」
「ウルカンダールの配下が、シーホースをマスカレイド化した手段……」
 それを思い出した瞬間、エンドブレイカー達の全身に震えが走った。
 シーホースをマスカレイド化させるべく暗躍したゼルデギロス教団のマスカレイド達は、『死ぬ』ことによって、マスカレイドが本来持つ支配の力を増幅し、自分より強いシーホースをマスカレイド化させたのだ。
 シビスが末期の叫びを上げる。
「ウルカンダール様の力と魔王の部位があれば、アクエリオを堕とすのに『秘術』など必要としない。ウルカンダール様の『秘術』は、他の部位所有者をまとめて堕とす為の最期の手段だった。まさか、本当にアクエリオひとりに使うハメになろうとはな。恨むぞ、恨むぞエンドブレイカーよ!!!」

 聖域が大きく揺れる。
 美しい聖域を覆っていた水が、見る間に濁り始めていった。
 エンドブレイカー達に味方していたはずのシーホースの顔に、白い仮面が現れていく。

●発動する教主の秘術
 死したウルカンダールの体から溢れ出した『血液』。
 波の上に広がっていたそれが、強烈な棘(ソーン)を帯びて『網』となった。
 アクエリオを庇おうとしたエンドブレイカー達の体をすり抜け、網はアクエリオの体を包み込んでいく。
「何だ、これは……!! ……くぁああああッ!?」
「アクエリオ様、しっかりして下さい!」
 赤い網を切り裂こうとしたトレイルは、しかしその場を飛び退くことを余儀なくされた。
 エンドブレイカー達を絡め取ろうとした白銀の鎖。それを掌の青い石から伸ばしているのは、死んだはずの男だ。
「ウルカンダール!」
「アグガ、アガガグガ……」
 しかし、ゆっくりと起き上がったウルカンダールは、もはやかつてのように聡明な言葉を紡ぐことは無い。皮膚は蒼白、双眸は濁り、砕かれた顎は血の泡と共に不気味なうなり声を立てるだけ。
「死んでいる……アンデッド化したのですか!?」
「ガガ、ガギゴボボボ……」
 死せるウルカンダールの肉体から押し出されるように血液が噴出し、それらが次々と網を形成、十重二十重にアクエリオを包んでゆく。

「いけない……。エンドブレイカーよ、君達は逃げてくれ……!」
 そう言うと同時にアクエリオは水流を放ち、エンドブレイカー達を押し流す。
「アクエリオ様!」
「くそっ……! 今の俺達じゃ、届かねぇ……!」
 銀鎖から解放されたカディシュが、悔しげに膝を叩く。
 こうなっては、逃れるしかない。
 マスカレイド化を逃れたシーホース達と共に、合流したエンドブレイカー達は聖域を脱出する。
 水神アクエリオのマスカレイド化。
 この事実を、彼らはなんとしても、外にいるエンドブレイカー達に伝えねばならなかった。

「まるで、長い眠りから目覚めたかのようだ……」
 静寂を取り戻した聖域で、マスカレイドと化した水神アクエリオが呟く。
「『部位』を手放すな。苗床には貴様がなるのだ」
 その言葉と同時に、アンデッド化したウルカンダールが、黒衣の如き『部位』を纏い、アクエリオに付き従う。
 まだマスカレイドに侵食されていないシーホース達が逃げるに任せ、アクエリオは集中を始める。
 それは、かつて己が愛したアクエリオを、己が手で破壊するための準備であった。
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