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大広間には沢山のタロス達が集まっていた。外見ではあまりはっきりとはしないが、タロス達にも年齢差があり、デュンエンよりも年長でこの場を取り仕切っている『長』のような立場の者がいた。その者は穏和で落ち着いた性格らしく、デュンエンの恩人である冒険者達に対し丁寧に礼を言い、歓待すると言ってきた。
「そうか。アレはドラゴンと言う生き物か……思えば大きな地震、あれこそが悪しき予兆であったのだろう。同時に空に炎が上がり何かが落ちてきたらしい。その日からこの地と我らタロス達に真の平和は過ぎ去ってしまった」 長はわずかにうつむく。長が座る傍らには1メートル程の残骸があった。死んだドラゴンとその眷属が残したカケラらしい。 「アレ……ではなくドラゴン。そう、ドラゴンの小さな眷属達は何かをドラゴンに指示され探しているらしい。この大地のあちらこちらで何かを探している。1度だけこの近くにもやって来た……たった1体のドラゴンにタロスは全滅寸前にまで追い込まれたが、なんとか遺跡に引きこみ倒したが……多くの犠牲が出た。デュンエンだけでも戻って来てくれてこんなに嬉しいことはない」 「ご心配をお掛けしました」 神妙な様子でデュンエンは長に礼をする。
「皆さんにお話しなければならない事がある。この地に残る遺跡の1つにドラゴンの眷属が沢山集まっている。彼等が探す物とはどうやら遺跡に係わるらしい。タロスならばわかる仕組みを知らず、力任せに破壊し続けながらより深部へと向かっている」 「……ドラグナーが探す物は、空から落ちた石……ですわ。けれど、それを渡してはいけません。何故ならば、それは『魂の石』にも等しいもの……この地のドラゴン界が完全に完成してしまいますわ」 ドラゴンとドラグナーの残骸、その小さなカケラを手にしたマデリンはそこまで言うと、ハッとしたように顔をあげた。 「……そ、そんな気がするのですわ。勘なのですわ」 妙に慌てた様子でマデリンは言い、疲れたのでどこか休める所はないだろうかと言った。デュンエンと長は、冒険者達の為に今は空き家となっている大きな家を提供しようと申し出た。
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