山川清太郎(無職)。18年勤めた会社をリストラされ、
家族との折り合いが悪くなり別居、1年後に離婚。その後、
都内の安アパートに転居して就職活動をするも、満足な職
につくことができずに自殺。享年39才。
 遺書となった日記には、自分を首にした上司と、自分を捨てた
妻と子供への恨みが、数ページに渡って書き綴られていた。
 近隣住人が異臭に気づいて警察に通報した時には、相当に腐乱
が進んでいた。死体発見数日前まで山川は普通に生活していたと
の証言もあるが、住民の思い違いとして処理されている。
 警察に引きとられた死体は同日のうちに消え失せてしまったが、
当局はその情報を公開しなかった。勿論、これは警察が不祥事を
隠蔽したわけでは無い。死体が自分で歩いて居なくなったなどと
公表できる筈が無かったからだ。

「ガードすべきは、リストラした上司と別れた妻子ですね」
 運命予報士はそう言うと、山川が勤めていた会社の地図と、そ
れぞれの自宅の地図とを差し出した。
「山川としての知性は断片的に残っているようですが、その知性
も復讐を望む暗い心に塗りつぶされています。彼が、これ以上の
罪を重ねる前に、安らかな死を与えてあげてください」
 集まった能力者達は運命予報士の言葉に力強く頷くと、体育用
具室を出て校門へと向かった。
 放課後の校舎は夕日に染まり、まるで血の色のようであった。

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