「何か出そうな場所ですね……」
気弱そうな声は伊藤三太。彼は中学1年生で、今日が初仕事だ。
「三太、あなたバカでしょ。何か出るから私達が来てるのよ」
そう言うのは新庄ちはる。小学4年生だが幾つもの事件を解決
し実績を積んだベテランだ。学校では三太が上級生でも、イグニッ
ションした後は、ちはるが三太の大先輩となる。
彼らが来ているのは、バブル後期に着工したゴルフ場の跡地。
完成前にバブルが弾けて計画は頓挫したが、散布された農薬の
影響か、この一角は10年以上が過ぎた今も雑草も生えぬ荒地である。
確かに三太の言うとおり、何か出そうな雰囲気だ。
「時は満月、丑三つ時。予報士さんの言うとった時間やないですか?」
おっとりとそう言ったのは猩々緋歌丸。高校2年の最上級生。
その歌丸の言葉に反応したかのように、妖獣が姿を現した。
イノシシの姿に巨大蟻の下半身が合わさった異形の姿。どうやら、
この妖獣は時間に几帳面な方らしい。
身の丈4mの偉容は、月光の下では更に大きく見える。
「うひぃ〜〜」
三太が情けない声をあげたが、それでも詠唱兵器を構えるのは
忘れない。彼らの目的は、この妖獣を退治する事なのだ。
「あなたが襲って食べちゃった人は、この場所を元の森に返す研
究をしてたんだって……妖獣に言っても無駄だわね」
ちはるは少し悲しそうに、しかし決然として地面を蹴る。
月下の荒地での妖獣と能力者との戦闘が始まろうとしていた。
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