ラッドシティにようこそ、エンドブレイカー！
到着するなり犯罪課に編入されたり、ラッドシティ収穫祭があったりと、さぞかし驚いた事だろう。
そして、文化もまるで違えば、遺跡群はエンドブレイカーの味方をしてくれる。
何より、今は旧体制が打倒され、革命が成立したばかり。エルフの俺には、毎日が驚きの連続だ！
ひとまず、皆にはラッドシティの政治状況を説明しておこうと思う。
犯罪課は比較的自由な捜査権限を持っているが、それでもやはり、現状は知っておくべきだ。
◆まずは「革命評議会」。聖女ゼファーの元に革命を成功させた、自由と豊かな生活を標榜するラッドシティ最高機関だ。もともと「長老衆」の統治により停滞していたラッドシティに、自由の風をもたらした者達だ。彼らは、人々を抑制していた様々な規制を取り払うことで、貧しい人々にも遍く富が行き渡ることを目的に、今も日夜活動している。しかし見る限りでは、全てが上手くいっているとは言い難いな。むしろ、自由であるが故に強者が富を独占し、かえって富の配分が滞っているようにも見える。規制を設ければ改善するかもしれんが、革命前の停滞に戻る危険性もある。彼ら自身も、現状は決して革命の理念が全て達成されたとは思っていないようだ。
◆「豪商連合」は、間違いなく今のラッドシティの繁栄の立役者だ。旧体制に大規模な商業活動を制限されていた彼らは、自由化と同時に活発化し、今の繁栄を作り出した。だがそれゆえに、富を独占した彼らこそが、現在の貧富の差を生み出しているとも言える。しかし安易に彼らから富を奪えば、経済はまた停滞し、結局は人々に配る富がどこからも生み出されない状況になりかねない。富の独占は悪かもしれないが、稼ぐこと自体は悪ではないのだ。
◆それに比べて、「貴族領主」を擁護するのは少々難しい。人々の支援を得て始まった革命も、ある程度は旧体制の手を借りなければ成し得なかったという事か。彼らの多くはただ時流を読むのが上手かっただけで、己の立場や体面にしか興味があるまい。シメオンのように領主の才覚を持つ者は例外だ。それでも、約束された彼らの地位を無為に奪うことはできない。理想的な領主では無いが、今や彼ら以外に領地を治める能力を持つ者はいないのだ。
◆ラッドシティの素晴らしい所は、城塞騎士団である「ラッドシティ警察」が、権力構造から切り離されているところだ。懲罰騎士団長ジャッジメントをはじめとした、使命感に燃えた優秀な人材も多い。しかしながら彼らは、革命の理念に則り、「真面目に働き生活する『市民』だけを救う」ことに全力を尽くしている。つまり、仕事に就けず貧困街に追いやられている人々は「市民ではない」という事だ。元々旧体制は、政治に無頓着であるが故に皆を貧しくしていたが、逆に市民の富を使って貧困街の人々を救済していた。それに怒った市民が、「働かざる者食うべからず！」と立ち上がったのが、革命の動機のひとつにあるのは否定できない。「全ての人間は自己責任で生きるべし」。それは極めて自由な考え方だからな。
……だが、救うべき人々を見捨てるのは、我慢できないよな？
だからこその我々『犯罪課』であり、我々のような窓際部署の捜査官が既に万を越すというのに、警察の上層部でさえも「見て見ぬ振り」をしてくれているのだ。存分に、期待に応えようではないか。
そして、我々だけが知り得る、もっと重要な事項が２つ。
既に、ラッドシティには多数のマスカレイドが入り込んでいる。先代の犯罪課課長しかり、南瓜行列に現れたというジェスターしかりだ。絶対に、政治状況にもどこかで深く関与している筈だ。
もうひとつは、このラッドシティの大半を占める、「世界の瞳」と呼ばれる遺跡群だ。俺が出会った長老衆の人々は（余談だが、彼らは善人だが全く政治や統治に向いていないように見えた）、エンドブレイカーこそが、遺跡の待ちわびた選ばれし者であると言っていた。その言葉を証明するように、遺跡は時にエンドブレイカーを味方するように作動する。
ラッドシティでの戦いは、まだはじまったばかりだ。
思うように動き、真相に近づいてくれ。出来る限りのサポートは行いたいと思う。
