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第10章
 「モンスターになった冒険者にメリア様は……さらわれました……」
 僕達が城へ帰ってから、メリアが誘拐されたとプリスへ説明した。
 一度キマイラ化した冒険者は、再びグリモアからの加護を得られるまでその形質を解く事はできない。
 メリアの背に生えた翼は、この任務中は解除されないだろう。

GM:ではお城へ戻って、プリスにメリアが誘拐されたと説明したって所までは了解した。その後、どうする? 何もしないのなら次の実験日まで進めるけど?
グリーズ:次は冒険者を集める作戦に入った方が良い。その事はロムに任せる、うまくやれ。
ロム:……ああ、わかった。プリスに会います。
GM:グリーズは?
グリーズ:キマイラ化した冒険者に誘拐されたメリアを探しているって事にしてくれ。
ロム:じゃあ僕だけ……――と、言うわけなんだ……今、グリーズが必死になって探している。
GM:「そうだったんですか……メリアさんが」
ロム:でも、もうすぐなんだ。もうすぐこの街を平和にできるはずなんだ。グリーズとも相談したんだけど……プリス、この街に冒険者を集められないかな?
GM:「え、でも……冒険者を集めたら更に被害が増えるんじゃ……」
ロム:それもそうなんだけど……メリア様がさらわれた事で、敵の潜伏場所もだいたい検討が付いたんだ。でも、迂闊に攻め入るにはナゴー博士は手ごわすぎる、僕とグリーズだけじゃどうしようもないんだ。
GM:「本当に? 本当に居場所の目星が付いたの?」
ロム:ああ、本当だよ。でも時間が無い……時間が経てば経つほど、メリア様の命も危ないから……。
GM:メリアを心配するロムに複雑な表情を浮かべながら――「期限は?」
ロム:15日間。
GM:「わかったわ。15日間以内に、できるだけ冒険者を集めてみる。メリアさんの為にも」
ロム:……ああ。
GM:「心配しないでロム、メリアさんはきっと生きてるわ。こんなにロムが心配しているんだもの」――プリスは笑顔でロムを元気付けます。
ロム:罪悪感ビシバシだ……。でも僕は光を失った瞳でプリスに返す――ああ、ありがとう。



 そして一週間が経ち、3回目の実験が行われる。
 もっとも、プリスによってこの街に冒険者が集められていたので、キマイラ化した奴の始末は簡単だった。
 あとは量が揃い次第、街にアビスクリムゾンをばら撒くのみ……。

GM:ではあと一週間を切ったある日。プリスと影法師、そしてロムの3人で事件の事を相談していた時にイベントが起こります。
ロム:イベント?
GM:「――つまり、あと捜索していないのは地下水道の……ゴホッゴホッゴホッ!!」――プリスが咳き込みます。すぐに手で口を押さえるのですが、指の隙間から赤いものが漏れます。
ロム:血!?
GM:影法師が――「だから言ったのです。あまり興奮なさらぬように……と」
ロム:プリス!?
GM:プリスは気丈に言います――「大丈夫、大丈夫だから……それより、早く事件を解決して、昔みたいに平和な街にしないと……ゴホゴホゴホッ!!」
ロム:どこが大丈夫なんだよ! 影法師、これはいったい何なんだ!?
GM:影法師は部屋の外に待機している使用人に向かって――「お前達、領主様を自室へと案内しろ。薬はいつもの所においてある」――そして使用人がプリスを運んで行きます。部屋に残るのは影法師とロムだけだ。
ロム:影法師を睨みつける。
GM:と、影法師はキミの方へ何か液体の入った黒い小瓶を投げつけます。
ロム:これは?
GM:「信頼の証ですよ」
ロム:信頼? 人に飲まして平気なのか?
GM:「……解毒薬です。キミの手から飲ませてあげると良い。聞いていなかったのかな? 彼女はキミの報酬だ」
ロム:ああ聞いている……でも、だったらどうして! プリスにジワジワと毒を与えたんだ! こんな薬が必要になるまで!!
GM:「少々、信頼できない点がありましてね。こちらが本気ですという事を魅せるために、あぁいう方法を使わせてもらいました。が、先週の活躍を見て問題無いと私は判断しました。ただし薬を飲ませるのは期限ギリギリにして下さいね。もしそれを破った場合、裏切り行為と見なします」
ロム:わかった、ありがとう――と、ここは大人しく従っておく。



 そしてさらに一週間が経とうとしていた。
 僕は律儀にも影法師の言いつけ通り、まだ解毒薬をプリスに飲ませていなかった。
だが、明日は実行の日であり最後の日。もう十分だろう。
 僕はポケットの中で小瓶を弄びながら、プリスの部屋をノックした……――

ロム:というわけで、プリスに会いに来ました。
GM:「どうぞ」――と声がしてロムが部屋に入ると、プリスはベッドに横になり、上半身だけ起こしています――「どうしたのロム?」
ロム:あぁ……いや、プリスが心配で……さ。
GM:「私は大丈夫! 先週もまたモンスター化の事件があったみたいだし……ちょっとぐらい無理しても、頑張らないと」
ロム:……そうか……――と、実はプレイヤー的に思うんだが、やっぱり影法師から貰った薬は毒な気がしてならない……。
GM:(ロムの言葉を無視して)窓からは湖が見え、キラキラと陽光を反射している。プリスがそれを眺めてから――「ねぇロム……この事件が終わったら、少しはゆっくりできると思うの……そしたら、2人だけで湖に出たいな」
ロム:プリス?
GM:窓からロムの方に向き直って――「湖にボートを浮かべて、そこから眺める街の景色が私は好き……ロムと一緒に観たいの…」――微笑みます。
ロム:そうだね。じゃあさ……明日行こうよ明日。それまでに僕が事件を何とかしてあげるからさ。
GM:「うん。そうだね……絶対、ロムなら解決してくれるって思ってる。それまでに私も絶対元気になるから……だから私の事は心配しないで……ね」
ロム:……わかったよプリス――僕は自分の目的のため、影法師を……結社を信じます。影法師から貰った“解毒剤”を飲み物に混入して、それを自然な流れでプリスに渡します。
GM:「ありがとう、ロム」――プリスは飲みます、そして――「ロム、眠ってもいいかな? ちょっとしゃべり過ぎたみたい。疲れちゃって……」
ロム:ああ、ゆっくり寝ていいよ――と、プリスのベッドに腰掛けて眠るまで見守っています。死んだりしませんよね?
GM:死にません、穏やかに寝息を立てて眠ります。
ロム:………………影法師は本当に本当の薬をくれたのだろうか?――そう思いながら部屋を出ます。




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