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第5章
 「プリス様……ラムウェイ領のご息女と名乗るお方が起こしになっておりますが。どう致しましょう?」
 そう言って部屋に入ってきたのは、プリスと僕が昔の事を2人で語り合っている時だった。
 部屋に入って来た男――影法師が僕の顔を見て素知らぬ顔で言う――
 「おや、そちらの方はロマーリオ様ですか? そのご息女メリア様が護衛に雇った冒険者がすでにこちらに来ている……そう仰られていたので……」

ロム:これは……口裏を合わせろって事?
メリア:私の名前が出ればわかるでしょう?
GM:プリスが聞いてきます――「ラムウェイ領……聞いた事無いけど……」
ロム:あ、北方にある小さな国だよ。僕の故郷には凄い綺麗な湖があるって話をしたら、そこのお嬢様がどうしても見てみたいって……その護衛で僕はやって来たんだ」
GM:「そう……だったんだ」――と、ちょっとプリスは寂しそうな顔をしますが――「わかったわ、すぐに行きます」――そして影法師がロムに――「それで護衛のお方は先にお会いになられますか?」
ロム:え、あ、ああ……案内してくれますか?
GM:「どうぞこちらへ」――プリスが(また後でね)と目線を送って出て行きます。一応服装とかプリスは正式なものに着替えないといけないので。
ロム:じゃあ影法師に案内されてメリアがいる部屋へ行こう。
GM:そこは応接間ですね。そこには――
グリーズ:俺もいる事にしてくれ。ナゴー博士と会った後、メリアと合流したって事で。
メリア:では私とグリーズが待っています。私はご令嬢然とした格好と雰囲気で出された紅茶でも飲んでいます。
ロム:部屋に入って――なんでメリアが――
メリア:潜入工作は基本よ? それにここには影法師がいたから楽だったわ♪
グリーズ:影法師か……ロム、あいつには気をつけるんだな。アイツほど結社の人間はいない。
ロム:………………。
メリア:さて、今のうちに情報交換しておきましょう?



 3人で情報交換……ロムはプリスから事件を解決する依頼を受けたこと、メリアはキマイラ化の話、グリーズはナゴー博士に会った話をする。

グリーズ:ナゴー博士には2人の事も説明だけはしておいた。事件は一週間ごとに起きる、ロムが依頼を取り付けたのなら好都合だろう。博士と一緒に事件現場に立会い、キマイラ化した冒険者を狩れば良い。
メリア:そうね……そうやって領主お墨付きで私達が動いてモンスターを狩れば、街の人々もうまく誤魔化せる。
ロム:ナゴー博士は……この街をどうしようとしているんだろう?
グリーズ:それは末端の俺達には関係の無い話だ。
メリア:でもナゴー博士が大規模な実験を行えば……この街は大変な事になる。もし、辛いようなら降りても良いんだよ? 領主からの信用を取り付ける為にロムはいたようなものだし。
グリーズ:聞こえないよう呟こう……――甘い事だ。
メリア:どうする……ロム?
ロム:大丈夫さ、この街は僕を覚えていない……僕も未練は無いよ。
メリア:………………。
GM:と、ここでトントンっとドアをノックする音がします。
メリア:どうぞ?
GM:入ってくるのはプリスです。その斜め後ろに黒衣の影法師が付き従っている――「湖畔の街オーシャ、及びオーシャ領領主プリス・オーシャです」――プリスはさっきより領主っぽい服装に着替えています。
メリア:趣味で≪礼儀作法≫持っているし、様式に乗っ取って挨拶します。ロムとグリーズは護衛の冒険者だともう一度説明を入れながらね。
GM:では適当に話して――「……ところで街では大変な事件が起きているのですが……大丈夫でしたか?」
メリア:ええ、街に来る前に事件の話は聞きました。でも優秀な護衛がおりますから。
GM:「そう……ですか。本当なら湖と街をご案内したかったのですが……」
メリア:いいえ、お気になさらないで下さい。それに……先ほど護衛の2人と話していたのですが、私が来たのも何かの縁です。この街の事件解決にご協力できないでしょうか? 私の護衛2人も了承済みです。
GM:「でも……」――とプリスは困るのですが――「いいではありませんかプリス様、話によれば護衛のロマーリオ様はこの街出身との事、自らの故郷の大事に手をこまねいているのも辛いでしょう」
メリア:微笑みます。
ロム:僕は何て表情すれば良いんだろう……たぶん、すごい微妙な顔している。
GM:とはいえ、プリスはロムに任せたいってのもあるし――「では、大変心苦しいのですが……宜しくお願いします」――そう言ってプリスは部屋を出て行きます。
ロム:じゃあプリスの気配が無くなってからメリアに向き直って――キミは……よくもそんなセリフを……!!
グリーズ:ロムの肩を強く付かんで――任務に私情を挟むなよ。
ロム:ぐっ……!?――グリーズの力に呻こう。
メリア:私は俯きながら唇の端を噛み……さっと顔を上げて明るく言うの――じゃ、今度はナゴー博士に会いに行こっか♪
ロム:くそっ!
グリーズ:そんな2人の感情に気が付かない振りをして――では、付いて来い。




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