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第11章
 決行の日、僕とグリーズ、そしてメリアはナゴー博士の新しいアジトで落ち合っていた。
 その部屋には3つの樽が置いてあり、それに全てアビスクリムゾンが入っている。
 これだけのアビスクリムゾンを開封したら、いったいどれだけの冒険者がキマイラ化するか想像も付かなかった。
 それぞれ地図を渡され、樽を壊すポイントを指示される。
 湖からの風を計算に入れて、街全体に広がるような配置だった。

GM:ナゴー博士は言います――「では後は任せた。わしはとっととこの街から逃げるからのう」
グリーズ:ああ……あとは任せておけ。
GM:ではナゴー博士はどこぞへと居なくなります。
グリーズ:よし、各自配置に付くとしよう。樽の破壊開始は正午キッチリ。タイミングを合わせろよ。
メリア:うん、わかった。
ロム:ああ、大丈夫。
グリーズ:……ロム、どうやら割り切ったようだな。この街を滅ぼす事を。
ロム:僕はこの街自体には未練は無いよ。この街には僕の居場所は無いからね……。
グリーズ:ふん。
メリア:さ、それじゃあ行きましょう♪ これが終れば任務終了だもんね♪
グリーズ:ああ、そうだな。行くぞ。
ロム:僕も出て行きます。



 そこは冒険者達が大勢居る宿屋の前だった。グリーズがその入り口前にドカリと樽を置いた。

GM:「何だお前、それは。新しい酒か?」――店に入って行こうとしていた冒険者が声をかけてきます。
グリーズ:ご領主からの振る舞いだそうだ。
GM:「へぇーそいつぁ良い!」
グリーズ:ああ、極上の酒さ。存分に味わえ――樽を扉にぶつけるように破壊する!
GM:それと液体が撒き散らされ、同時に気化……アビスクリムゾンが周囲に広がり出します。
グリーズ:範囲から離れよう――任務、完了。



 メリアは翼を使って上空から街を見下ろしていた。豆粒ほどの小さな人間達が、これから起こる事に気が付かずに一生懸命に生きていた。

GM:一方メリアです。
メリア:空からバッサバッサと。目標地点上空で一度迷います。
GM:眼下には大通り、仲良く買い物をする親子連れなんかもいるね。
メリア:教会で会った親子かな……。
GM:この距離じゃわからないね。
メリア:………………スッと表情の無い顔になって樽を落とします。
GM:では樽は大通りに落下しそのまま破壊、真っ赤な霧が周囲に充満します。
メリア:絶対……逢いに行くんだ……絶対に。



 指定されたポイントから少し離れた路地裏、少しでも城から離れた場所でロムは樽を地面に置いた。

GM:では最後。ロムです。
ロム:樽を置いて剣に手をかける。それとともに思い出されるこの街の思い出。
GM:それはロムの辛かった子供時代の思い出。
ロム:そう、その思い出は全て辛いものだったけど、最後はプリスがやって来てくれて僕は助けられるんだ。この街に僕の居場所は無い……でも、だからってこの場所が自分の故郷である事は間違いないんだ……と、この時になって僕は気が付く……。
GM:それぐらいで、街のあちこちで騒ぎが起きます。丁度正午ですね。
ロム:ハッとして決意――僕にとって、辛い思い出しかない街だけど……それでも僕の故郷だった。僕が育った街、プリスが守りたいと言った街……でも僕は彼女を救う為に、全てを断ち切る!!――≪居合い斬り≫使って一刀両断!
GM:ズ、ズズズ……と樽が斜めにズレて、そこから赤い液体が流れると同時に霧になって広がります。
ロム:走り去る。
GM:と、ロムが安全地帯まで走り去った所で、目の前に影法師が現れます。
ロム:影法師!?
GM:「さて、あれをご覧なさい」――城の方を指差します。それとともに一気に赤い煙が王城を包み隠す。
ロム:なんで城に!? プリスだけは助けてくれるって約束じゃなかったのか!
GM:「最後の決断です。どうしますか……君は?」
ロム:どうするって……。
GM:「今から行けば間に合うかもしれない……間に合わないかもしれない。自分も巻き添えを食らうかもしれない……」
ロム:そんなの! 助けるに決まってんだろ、どけっ!!




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