<『無限のファンタジア』プレイ日記>

 なにはともかく、やってみよう!? 『無限のファンタジア』の体験日記です。


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■第21話 〜僕の妹〜

○月$日

 いつものように僕は大学にいた。
 講義も終わり、後は帰るだけ。バイトもないし……どこか暇つぶしができるところにいこうと、まったりと考えていた。
「おい、あれ見てみろよ。何か人だかりができてるみたいだな?」
「どこかの講義が休みになったとか?」
 そう言って、気にせずに通り過ぎようと思っていた。
「いや、何か制服着た子が来てるみたいだ」
「制服?」
 受験生が来ているのだろうか? いや確か、受験生を呼んで学校を案内するオープンキャンパスは、この時期には行わないはずだ。
 ちょっと気になり、人だかりの隙間からそっと覗いてみることにした。



「あ、お兄ちゃん♪」
「ななななな、な、なんで、お前がここにいるんだっ!?」
 そこにいたのは、制服姿の妹!
 ふと、昨日のメールを思い出した。
『そうそう、お兄ちゃん。明日を楽しみにしていてね♪』
 あれは、このことを言っていたのかっ!?
「よかったー、このまま会えなかったらどうしようかと思ってたんだよね」
「そうじゃないだろっ!?」
「だって、こうでもしないと、会えないじゃないっ!」
「だからって大学まで来るか、普通っ!? そ、それにその荷物だって……」
 そこまで言って、辺りが非常に騒がしくなったのに気付いた。
 僕と妹の言い争いがいつの間にかギャラリーを増やしている。
 そして、遠くに教授の姿が……。
「とにかく、詳しい話は後回しだっ!! ほら、行くぞっ!!」
「え、お、お兄ちゃん? ちょ、ちょっと待って!」
 僕は妹を担いで、急いでその場を後にした。………きっと、後で妙な噂が広まるんだろうな……。



 大学から遠く離れて、僕はやっと一息ついた。
「お前、どうして……」
 そういえば前に、妹にキツイ言い方をしたら、怒って何も言わなくなってしまっていたな。
 詳しいことは家で聞いた方がよさそうだ。それに誰かに聞かれると気まずいし。
「お兄ちゃん?」
 不安そうに見上げる妹の頭をくしゃりとなでる。
「あの、さ……お前、来年受験なんだよな?」
「うん」
「もう大学とか決めたのか?」
「だいたいは、ね」
 にこりと妹の顔に笑みが浮かぶ。それに少しほっとしながら話を続ける。
「そういえば、前にF女子大とかO大学とか行きたいって言ってたよな。そこにいくのか?」
「えー、そんなこと言ったっけ?」
「ああ、ちゃんと聞いたぞ」
「うーん、私が行きたいのは、もっと別の大学。今住んでいるところから、ちょっと遠い場所にあるの」
「遠い場所?」
「そう、遠い場所」
 その後もその大学を聞きだそうと頑張ったのだが、気がついたら、既に家に着いてしまった。
「お邪魔しまーす♪」
 こうして、妹が僕の家にやってきたのである。



「あのね、今日は修学旅行なの!」
 妹の口から出たのはそんな一言であった。
「そうじゃないだろう?」
「だって、お兄ちゃんと一緒にいたいんだもんっ!! それに旅行中の時は、全部信頼できる友達に頼んであるから、大丈夫だよ♪」
「という事は母さんに黙ってきたのか?」
「う、うん……」
 妹の話をまとめると、どうやら妹は、学校の修学旅行が僕の住んでるN県に行く事を知り、僕に会うために、前々から用意していたようだ。

 …………。

「まあ、今日は父さんが出張だったからよかったものの、もし見つかったら大目玉だったんだぞ? わかっているんだよな?」
「見つかったらって大げさだよ……」
「あのなぁ……僕らの両親はもう離婚したんだ。前のように一緒にいる事はできないし、気軽に会う事だって許されていない。お前、忘れたわけじゃないよな?」
 そう、僕らはもう一緒にはいられない事情があった。僕だって妹と離れるのは辛くなかったわけではない。だが、そう願っていても無理なものは無理なのだ。
「でも………」
「でもじゃない! もしお前が頼んだ友達が、先生に問い詰められてもしたら、どのくらい迷惑になるのか考えてもみたのか!?」
「う…………」
 妹は俯いて、目を潤ませた。
「………まあ、今からお前のクラスがいる集合場所まで行くのは無理だし、今、ホテルに行ったら怪しまれるしな。僕の隣の部屋が空いているから、そこを使うんだな」
「お兄ちゃん……」
 僕は呆然と立ち尽くす妹を居間において、部屋の整理をしに向かう。
 そして、夜は更け、妹と味気ない夕飯を食べて、自分の部屋に入ったのである。

 深夜。いつもならこの時間にゲームをやるのだが、今日はそういう気分ではなかった。
 だから、締め切り近いレポートを片付けていた。

 かたっ。
 ドアノブを回そうとする音が響いた。
 妹だ。
 でも、それだけだった。ためらう様子が、扉越しに伝わってくる。
 何しにきたのかもさえ、予想がつく。
 もし入ってきたら、そのときは優しくしてやろうか……。
 そう思っていたが、結局妹は入ってこなかった。

 しばらくした後、妹の気配は遠のいていった……。
 少しの罪悪感とやりきれない気持ちのまま、僕はそのまま寝ることに決めたのだった。


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