<『無限のファンタジア』プレイ日記>

 なにはともかく、やってみよう!? 『無限のファンタジア』の体験日記です。


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■第22話 〜また会おうね!〜

○月○日

 カーテンを開けると、いつもより眩しい朝日が目に焼きつく。
 いつもよりかなり早く起きてしまったようだ。今日は休みだって言うのに……。
 僕は着替えを済ますと、ゆっくりと扉を開け、妹の様子を窺った。
 ……ぐっすり寝ているようだ。音を立てずに扉を閉めると、次に朝食を作り始める。
「昨日はちょっと言い過ぎたかな」
 そう呟きながら、妹の好きな朝食を用意してあげた。
 妹はいつもカリカリに焼いたトーストに、ストロベリージャムをつけるのが好きだった。後はホットミルクと、ベーコンの上に乗せた目玉焼きが大好物。もちろん、プリンには負けるけどな。思わず笑みがこぼれる。

「………あっ」
 そこに妹がいた。
 目が、赤い……。
「顔、洗って来いよ。お前の好きな朝食、用意しておくから」
「うん……」
 ぱたぱたと歩く妹がやけに小さく見えた。



 僕はテーブルに皿を並べ始めた。その皿には、あの目玉焼きがある。
 と、妹がやってきた。顔を洗ってきたのだろうが、先ほどとあまり変わらない気がする。
 僕が何か声をかけようとしたとき。
「………わがまま言って、ごめんなさい……」
 小さな声で妹はそう言った。
「わかればいい。ほら、トーストさめるぞ。さっさと食べてしまおう」
 妹はきょとんとしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻っていた。
「うんっ!!」
 朝食を食べ終えた僕達は、とある場所に向かっていた。
「それで、次に泊まるホテルはどこなんだ? 何時までに着けばいい?」
「え、えっと、富丘駅の側にあるホテルだよ。あの大きいホテル、知っているよね? それで、夕方4時に着けば大丈夫だけど……」
「了解。じゃあ、遊園地にでも行こうか?」
「えっ?」
「せっかくここまで来たんだ。楽しまなかったら損だろ?」
「お兄ちゃん……うん、行こうっ! とことん付き合ってもらうからね!!」
 その後、ちょっと後悔する事になるとは、このときの僕は思ってもいなかった。



「面白かったねー、あのジェットコースター♪」
「あ、ああ……うん……」
 ジュースを飲みながら、僕はうなづいた。
 立て続けにジェットコースター系の乗り物を4つ乗っていた。……ちょ、ちょっと気持ち悪いかも……。
 目の前にいる妹は上機嫌だった。もうあのときの泣きはらしていた顔はそこにはない。
 これならもう大丈夫だな。しばらく会わなくても……。
 あっと、そういえばアレ、聞いていなかったな。この際聞いておこうか。
「そういえば、お前のキャラクターって誰?」
 ぶっ!!
「おわ、な、なに吹き出してるんだよっ!! 全く、気をつけろよ」
 ポケットから取り出したティッシュで、テーブルを拭いた。
 突然、飲んでいるジュースを吹き出すんだもんな……。って、僕、変なこと聞いたのか?
「こほ、こほっ、ご、ごめん、なさい……」
「本当に大丈夫か?」
「だ、だい、だいじょーぶ」
 そう言ってVサインをしていたが、全然大丈夫そうに見えなかった。
「えっとね、ちゃんとお兄ちゃんのいる旅団にはいるから、安心して」
「そうじゃなくって、そろそろ教えてくれたっていいだろ?」
「な、内緒の方がどきどきして楽しいでしょ? ね? ……あっ! あれ面白そう! お兄ちゃん、今度はあれ乗ろうよっ!」
 結局、この日もまた、妹のキャラクターを聞きそびれてしまったのは言うまでもない。



 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
 誰がそういったかもう忘れてしまったけど、それは本当だと思う。
 この日の遊園地はとても楽しかった。
 お化け屋敷で妹を怖がらせたり、ゲームセンターでぬいぐるみを取ってやったり、シューティングゲームで良いスコアを出して妹に褒められたっけ。
 そういえば、こんな事、休みの日にはよくやった覚えがあるな……。今はもう、ないけど。

「お兄ちゃん、昨日と今日と……本当にありがとう」
「ああ、いいって」
 ここは駅のホーム。この駅から出ている電車に乗れば、富丘駅まですぐだ。
 僕はこの駅で妹を見送る事にしたのだ。
「また、会える、よね?」
 不安そうに見上げる妹に僕は自然に笑みを浮かべた。

「お前、忘れたのか? 無限のファンタジアでいつも会ってるじゃないか。
 お前から誘ってきたんだろ?」

「お兄ちゃん……。
 うん、そうだね。また旅団とかで会おうねっ!!」

 そして、ホームに電車が入って来た。
 いよいよ別れの時が来たのだ。
「お兄ちゃん!」
 電車に乗った妹が叫ぶ。
「お兄ちゃん、私、…………大学に行く事にしたから!」
「え?」
 丁度、電車のドアの開閉音で重要な部分を正確に聞き取れなかった。
「ちょ、ちょっと待て、もう一度っ!!」
 そのとき扉が完全に閉まった。
 妹は少し悲しそうな笑みを浮かべて、手を振っていた。
 僕はゆっくりと動き出す電車を追いかける。
 その妹の唇がまた動いた。
『またね、お兄ちゃん……』
 僕はいつまでもいつまでも、その電車が遠くに消えるまで見送った。
 妹が無事に戻れる事を祈って。
 そして、ちょっとした不安を感じつつ……。


「…………さてっと、帰ったらまた、ゲームでもするか!」




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