●
問い合わせ先
なにはともかく、やってみよう!?
TRPG版『無限のファンタジア』の体験日記です。
登場人物の紹介は
こちら
。
画:
888
TRPGって?
第1話
|
第2話
|
第3話
|
第4話
キャラメイク
第5話
|
第6話
|
第7話
|
第8話
|
第9話
|
第10話
|
第11話
冒険開始!
第12話
|
第13話
|
第14話
|
第15話
|
第16話
|
第17話
GMに挑戦
第18話
|
第19話
|
第20話
|
第21話
|
第22話
|
第23話
終章
第24話
|
第25話
○月×日
僕は大学生。そして、ここにはいないが妹もいる。
いつものように大学のレポートを終わらせた後、僕はメールをチェックする。
『ねえねえ、お兄ちゃん!
無限のファンタジアのTRPGルールブックは買った?
絵もいっぱいだし、すっごく面白いんだよっ!!』
離れて暮らす妹からのメール。
それに毎日返事を出すのが、僕のいつもの日課。
最近は、その日課に『無限のファンタジア』というネットゲームで遊ぶ事も加わっていた。
『無限のファンタジア』というネットゲーム(正確には、PBWという)も、元はと言えば妹に誘われて始めたゲームだ。
ファンタジー世界に生きる冒険者になって、みんなと一緒に冒険の日々を過ごす。簡単にいうと、無限のファンタジアはそんなゲームだ。僕は今、そのゲームの魅力に見せられて、結構、いやかなりハマっている。
やっぱり一番の魅力は、画面の向こうにいて、僕と同じく冒険者なってゲームをしている友達との交流だ。
特に僕が一番仲良くしてるのは、マレナさんというキャラクターだ。
何と言ってもキャラクターのイラストがかわいくて綺麗で、文句なしに僕の好みに直球どまんなかだし、プレイヤーさんもとても親切で、初心者だった僕は何度も助けて貰ったんだ。
『マレナさんみたいに優しくて綺麗な人が、現実にいたらいいなぁ』と、ありもしない妄想を抱いた事は……無いといえば嘘になるけど。
さすがに僕も、今日の出来事には、心の底から驚いた。
その日の僕は珍しく急いでいた。
うっかり、夜遅くまでネットで無限のファンタジアをやっていて、目覚ましをかけていなかったのが原因だ。
とにかく、急いで電車に乗らないとっ!!
「あっ!!」
どしんっ!!
しまった、急いでいたせいで、人にぶつかってしまった!
「すすすす、すみませんっ!」
急いで、倒れている相手に手を貸そうとした瞬間。
僕は、頭の中が真っ白になった。
「もう、痛いじゃない」
そういって、体を起こすその人は……。
「マレナさんっ!!?」
言っておくが、マレナさんは、ゲームの中でのキャラクターだ。
現実にいるわけがない。
けれど、僕は会ってしまった。
セーラー服を着ている、本物のマレナさんを!!
「ちょっと、聞いてる? あなたの鞄と私の鞄の中身」
そういって、マレナさん(のそっくりさん)は言う。
「え? あ、ごごご、ごめんなさいっ……」
急いで、落ちている荷物の回収を行う。
と、手が止まった。
「え?」
これも運命かもしれない。
『無限のファンタジア』と書かれた、大学ノートサイズの大きな本が落ちているのに気づいたのだ。
「これ……」
「私のよ」
さっと僕の手から奪うかのように、マレナさん(のそっくりさん)はその本を持っていった。
「じゃあ、私はこれで」
「あ、本当にすみませんでしたっ!!」
マレナさん(のそっくりさん)の後姿に叫びながら、僕は自分の頬をつねった。
「痛っ!!」
夢じゃない。
でも……夢かもしれない。
遠くかすかに見えるセーラー服を見ながら、僕はまだ、夢だったんじゃないかと思っていた。
家に帰って、早速鞄の中身を確認してみた。
その日、僕は鞄の中に、無限のファンタジアのパンフレットを入れていたからだ。
手帳サイズのこのパンフは、イベントで無料配布されていたんだけど、イラストも一杯入って、かなり見ごたえのある内容だった。
それを妹に頼まれていて、やっと手に入れることができたんだけど……。
「ない、ないっ!?」
どこを探してもなかった。
ちゃんと鞄の奥底にいれておいたのに……何処かで無くしてしまったらしい。
何処で?
「もしかして、あの時?」
すぐに思い出した。
朝、マレナさん(のそっくりさん)とぶつかった事を。
そのときに落としてしまったのだろう。
「でも、あのとき確かに拾ったはず………あっ……」
そう、あのとき確かに拾ったんだ。
一冊の手帳。
それは、生徒手帳だった。僕の持っていたパンフレットは青っぽい色、そして、目の前にある手帳も青いカバーが付けられている。どうやら、間違って持ってきてしまったらしい。
「しししし、しまったっ!!!」
でも、これで、僕はあの出来事が本当だった事を理解した。
生徒手帳に付けられた写真。
それは紛れもなく、マレナさん(のそっくりさん)だった。
「きっと、マレナさんも困っているよな……」
思わず、マレナさん(のそっくりさん)があれこれと探して、見つからずに泣いている様子を想像してしまった。
胸が、痛かった………。
「これは早く届けてあげないとっ!!」
その日、僕は決心したんだ。
この手帳を必ず、マレナさん(のそっくりさん)に………。
「あ、名前が書いてある……って、生徒手帳だもんな。当たり前か……えっと」
マレナさん(のそっくりさん)の名前は『四条 美咲(しじょう・みさき)』。
「美咲ちゃんか……可愛い名前だな……うわ、女子高か!?」
学校を確認する。幸いにも、その学校は僕の家から近い。これなら届けられるだろう。
「けど、女子高か……」
いや、迷ってはいられない、きっとマレ……違った、美咲ちゃんも困って泣いているかもしれないのだから!
「あ、そういえば……美咲ちゃん。無限のファンタジアの本を持っていたな……本出ていたっけ?」
さっそく妹に聞いてみると………。
『うわ、もう忘れちゃったのー(TдT)
私、ちゃんと言ったよーー。
無限のファンタジアのTRPGルールブックが出たって』
無限のファンタジアの「TRPGルールブック」?
なんだろう? TRPG? RPGは知っているけど、この「T」は何なんだ?
ルールブックっていうから、ゲームのルールが書いてあるって事なんだよな?
とにかく気になったけど、明日は美咲ちゃんに手帳も返さなくっちゃいけないので、早めに寝ることにした。
今度は遅刻しないように、ちゃんと目覚ましをかけて。
●次のページ
⇒⇒⇒
第2話 〜美咲ちゃんとの再会〜
当サイトへのリンクはフリーです。
なお、掲載されている記事・写真・イラストの無断転用、加工、直接の引用等は禁止とさせていただきます。
(C)トミーウォーカー/新紀元社