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 なにはともかく、やってみよう!?
 TRPG版『無限のファンタジア』の体験日記です。
 登場人物の紹介はこちら。                          画:888

TRPGって?
キャラメイク
冒険開始!
GMに挑戦
終章


第23話 〜ドキッ! 初めてのGM〜
△月☆日
 いよいよ、セッション当日になった。
 初めてのGM。
 初めて美咲ちゃんが僕の家にやってくる………う、うわああ、き、緊張するっ!!

 僕はTRPGの準備を終えると、すぐさま近所の駅に向かった。
 今回は、皆、駅で待ち合わせる事にしたんだ。
 友達は僕の家を知っているけど、美咲ちゃんは知らないからだ。
 きょろきょろと辺りを見渡す。
 ………さすがに30分前に来れば、誰もいないか。
 時間があるので、近所のコンビニで少し時間を潰す事にした。
 雑誌を少し読んでいれば、美咲ちゃんも友達もやってくるだろう……。



 ……つんつん。
 あれから少し時間が経ったときの事。
 誰かか僕の右腕を突っついている。
「ん?」
 思わず、右の方を見ると。
「おはよう。やっと気づいた」
 みみみみ。
「み、美咲ちゃん? きょ、今日も早いんだね」
「それは私の台詞よ。改札を出て、コンビニに入ったら、あなたがいるんだもの」
 くすりと笑みを浮かべる美咲ちゃん。
 美咲ちゃんは今日も可愛い服を着ていた。そういえば、妹の着ている服よりもかなり大人っぽいというか、お姉さんっぽいというか……。
 いやいや、今日はTRPG。しかも僕はGMなんだぞ、しっかりしないと!
「ねえ、あそこにいるのって、あなたのお友達さん?」
「え?」
 美咲ちゃんが指差した先には、今日一緒に遊ぶ友達が集まっていた。
「うわ、もうそんな時間? 美咲ちゃん、行こう」
「え、ええ」
 僕は遅い妹を引くように、美咲ちゃんの手を引いて、走った。
「あ、あの、も、もういいわ。着いたし」
 友達の前で離れる手。
 美咲ちゃんの小さな手が僕の手から離れていく。
「あ、ご、ごめん」
「何してたんだ。遅いぞ……っと、お前が言っていた女の子ってその子か?」
 本当は美咲ちゃんに言った言葉が、いつの間にか友達に向けた言葉になっていた。
「初めまして、四条美咲といいます。今日はよろしくお願いします」
「いい子じゃん! お前、いつの間に彼女作ったんだ?」
「そ、そうじゃなくって……」
「彼とは、TRPGで知り合ったんです。別に彼女というわけではありませんから」
 う、言い切られちゃった。
「おっ、じゃあ俺が……美咲ちゃんだったっけ、君の彼氏に立候補しちゃうよ」
「何ふざけているんだ。それよりも、メンバー全員揃ったし、僕の家に行くぞ」
 僕は美咲ちゃんに注意しながら、友達と一緒に自分の家に戻ってきたのだった。



「それじゃ、始めるからな」
 僕はそう前置きして、今回のシナリオを始める。
 事前に準備しておいたお陰か、意外にスムーズにキャラクター作りを行う事ができた。
 今回は重騎士、狂戦士、忍びに牙狩人、医術士のメンバーだ。今回美咲ちゃんは、忍びの少年をキャラクターにしていた。
 依頼人からの説明から始まり、次に町での情報収集……する予定が、皆、すぐさま洞窟にいっちゃった。
 一応、聞かなくても平気な情報だけど……こうもあっさり無視されてしまうと、ちょっと悲しいかも。
 そして、洞窟へ。
「えっと……部屋の奥へ行くと、なにやら天井が動いているみたいだ」
「明かりを近づけてみよう」
 僕の声に美咲ちゃんがいち早く反応する。
「明かりを近づけてみるんだね。……明かりを近づけてみると、動く天井はジャイアントバットだった」
「おお、敵か敵か?」
 僕の言葉に友人達がわくわくしている。
「敵は3体。と、敵と戦う前に戦闘ルールを説明するな」
 初めての敵との遭遇。初めてのバトル。
「やった、楽勝!」
「う、そ、そっちの運が良すぎたんだ、きっと……」
 キャラクター全員、いい目が出すぎ……。ちなみに僕のジャイアントバットは空振りばかり。
 特殊行動やグリモアエフェクトだけでなく、アビリティも使わずに終わってしまった。
 ううう、情けないぞ、ジャイアントバット。
 皆の冒険もいよいよ終盤。
 洞窟の奥にたどり着いた皆は、依頼にあった火を噴くコウモリ、ファイアーバット(これは僕が命名)と遭遇したんだ。
 さすがにここまでくると、キャラクター達のHPやアビリティ回数の残りが少なくなってくる。
 けれど、ここで気を許しては、敵は倒せないだろう。
 激しい戦い。
 さすがにHPが減って、キマイラになるという事はなかったが、皆、ぼろぼろで傷だらけだ。
 敵を見事に倒した一行は、無事、水晶を手に入れて、町へと戻ってきたんだ。



 こうして、僕の初めてのセッションが終了。
 途中、情報をあげられなくて残念な所もある。もう少しで、昼食を取るのを忘れそうになる所もあったっけ。それに加えて、戦闘ルールで計算間違えしてしまうというハプニングもあった。そのときは仕方なくそのまま続けたけど、その次からは正しいルールで戦闘したんだ。正直、背筋が凍る思いをしたけどね。
 でも………。
「なかなか面白いな、TRPGって」
「ちょっと計算とか面倒だけど」
「家でやるゲームとは全然、違うよな。こうして、皆で遊べるしな」
「なあなあ、またやらねー? 今度は一緒にコンベンション行くとか♪」
 皆からは良い感想を聞く事ができた。どうやら、友達も満足してくれたようだ。
 いや、友達だけじゃなかった。
「初めてにしては、まあまあだったわ。この次もGMやるときは教えてね」
 これってこれって、喜んでもいいんだよな?
 美咲ちゃんからも、嬉しい言葉をかけられたんだ!
 か、かなり嬉しいかもっ!!



 TRPGを終えて、友達が帰っていく。
 その頃にはもう、日が暮れて街灯が煌き始めていた。
「美咲ちゃん、家まで送るよ。夜も遅いし」
「……え、でも……」
 美咲ちゃんは少し考えた後。
「………いいの?」
「もちろん」
 僕らは揃って、美咲ちゃんの家に向かった。

 数十分後。
「ここでいいわ……」
 美咲ちゃんは自分が住んでいるマンションの前でそう告げた。
「後は大丈夫だから」
「あ、そ、そうだね……」
 実は玄関の前まで行くつもりだったけど……マンションの前まで来れれば、後は入ってしまえば大丈夫なんだよな。言われるまで気づかなかった。すると、美咲ちゃんはそっと僕の方を見て、僅かに笑みを浮かべた。
「今日は……送ってくれて、ありがとう……」
 それだけ言うと、そのまま早足で帰っていってしまった。
 僕はというと……ただただ、その後を見送るだけで。
 また、ありがとうって、言ってもらえた。
 それだけじゃない、美咲ちゃんは笑顔でそう言ってくれた。
 僕にはそれが、嬉しくて。

 その後、僕は下手な口笛を吹きながら、家へと帰っていった。




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