●
問い合わせ先
なにはともかく、やってみよう!?
TRPG版『無限のファンタジア』の体験日記です。
登場人物の紹介は
こちら
。
画:
888
TRPGって?
第1話
|
第2話
|
第3話
|
第4話
キャラメイク
第5話
|
第6話
|
第7話
|
第8話
|
第9話
|
第10話
|
第11話
冒険開始!
第12話
|
第13話
|
第14話
|
第15話
|
第16話
|
第17話
GMに挑戦
第18話
|
第19話
|
第20話
|
第21話
|
第22話
|
第23話
終章
第24話
|
第25話
△月☆日
いよいよ、セッション当日になった。
初めてのGM。
初めて美咲ちゃんが僕の家にやってくる………う、うわああ、き、緊張するっ!!
僕はTRPGの準備を終えると、すぐさま近所の駅に向かった。
今回は、皆、駅で待ち合わせる事にしたんだ。
友達は僕の家を知っているけど、美咲ちゃんは知らないからだ。
きょろきょろと辺りを見渡す。
………さすがに30分前に来れば、誰もいないか。
時間があるので、近所のコンビニで少し時間を潰す事にした。
雑誌を少し読んでいれば、美咲ちゃんも友達もやってくるだろう……。
……つんつん。
あれから少し時間が経ったときの事。
誰かか僕の右腕を突っついている。
「ん?」
思わず、右の方を見ると。
「おはよう。やっと気づいた」
みみみみ。
「み、美咲ちゃん? きょ、今日も早いんだね」
「それは私の台詞よ。改札を出て、コンビニに入ったら、あなたがいるんだもの」
くすりと笑みを浮かべる美咲ちゃん。
美咲ちゃんは今日も可愛い服を着ていた。そういえば、妹の着ている服よりもかなり大人っぽいというか、お姉さんっぽいというか……。
いやいや、今日はTRPG。しかも僕はGMなんだぞ、しっかりしないと!
「ねえ、あそこにいるのって、あなたのお友達さん?」
「え?」
美咲ちゃんが指差した先には、今日一緒に遊ぶ友達が集まっていた。
「うわ、もうそんな時間? 美咲ちゃん、行こう」
「え、ええ」
僕は遅い妹を引くように、美咲ちゃんの手を引いて、走った。
「あ、あの、も、もういいわ。着いたし」
友達の前で離れる手。
美咲ちゃんの小さな手が僕の手から離れていく。
「あ、ご、ごめん」
「何してたんだ。遅いぞ……っと、お前が言っていた女の子ってその子か?」
本当は美咲ちゃんに言った言葉が、いつの間にか友達に向けた言葉になっていた。
「初めまして、四条美咲といいます。今日はよろしくお願いします」
「いい子じゃん! お前、いつの間に彼女作ったんだ?」
「そ、そうじゃなくって……」
「彼とは、TRPGで知り合ったんです。別に彼女というわけではありませんから」
う、言い切られちゃった。
「おっ、じゃあ俺が……美咲ちゃんだったっけ、君の彼氏に立候補しちゃうよ」
「何ふざけているんだ。それよりも、メンバー全員揃ったし、僕の家に行くぞ」
僕は美咲ちゃんに注意しながら、友達と一緒に自分の家に戻ってきたのだった。
「それじゃ、始めるからな」
僕はそう前置きして、今回のシナリオを始める。
事前に準備しておいたお陰か、意外にスムーズにキャラクター作りを行う事ができた。
今回は重騎士、狂戦士、忍びに牙狩人、医術士のメンバーだ。今回美咲ちゃんは、忍びの少年をキャラクターにしていた。
依頼人からの説明から始まり、次に町での情報収集……する予定が、皆、すぐさま洞窟にいっちゃった。
一応、聞かなくても平気な情報だけど……こうもあっさり無視されてしまうと、ちょっと悲しいかも。
そして、洞窟へ。
「えっと……部屋の奥へ行くと、なにやら天井が動いているみたいだ」
「明かりを近づけてみよう」
僕の声に美咲ちゃんがいち早く反応する。
「明かりを近づけてみるんだね。……明かりを近づけてみると、動く天井はジャイアントバットだった」
「おお、敵か敵か?」
僕の言葉に友人達がわくわくしている。
「敵は3体。と、敵と戦う前に戦闘ルールを説明するな」
初めての敵との遭遇。初めてのバトル。
「やった、楽勝!」
「う、そ、そっちの運が良すぎたんだ、きっと……」
キャラクター全員、いい目が出すぎ……。ちなみに僕のジャイアントバットは空振りばかり。
特殊行動やグリモアエフェクトだけでなく、アビリティも使わずに終わってしまった。
ううう、情けないぞ、ジャイアントバット。
皆の冒険もいよいよ終盤。
洞窟の奥にたどり着いた皆は、依頼にあった火を噴くコウモリ、ファイアーバット(これは僕が命名)と遭遇したんだ。
さすがにここまでくると、キャラクター達のHPやアビリティ回数の残りが少なくなってくる。
けれど、ここで気を許しては、敵は倒せないだろう。
激しい戦い。
さすがにHPが減って、キマイラになるという事はなかったが、皆、ぼろぼろで傷だらけだ。
敵を見事に倒した一行は、無事、水晶を手に入れて、町へと戻ってきたんだ。
こうして、僕の初めてのセッションが終了。
途中、情報をあげられなくて残念な所もある。もう少しで、昼食を取るのを忘れそうになる所もあったっけ。それに加えて、戦闘ルールで計算間違えしてしまうというハプニングもあった。そのときは仕方なくそのまま続けたけど、その次からは正しいルールで戦闘したんだ。正直、背筋が凍る思いをしたけどね。
でも………。
「なかなか面白いな、TRPGって」
「ちょっと計算とか面倒だけど」
「家でやるゲームとは全然、違うよな。こうして、皆で遊べるしな」
「なあなあ、またやらねー? 今度は一緒にコンベンション行くとか♪」
皆からは良い感想を聞く事ができた。どうやら、友達も満足してくれたようだ。
いや、友達だけじゃなかった。
「初めてにしては、まあまあだったわ。この次もGMやるときは教えてね」
これってこれって、喜んでもいいんだよな?
美咲ちゃんからも、嬉しい言葉をかけられたんだ!
か、かなり嬉しいかもっ!!
TRPGを終えて、友達が帰っていく。
その頃にはもう、日が暮れて街灯が煌き始めていた。
「美咲ちゃん、家まで送るよ。夜も遅いし」
「……え、でも……」
美咲ちゃんは少し考えた後。
「………いいの?」
「もちろん」
僕らは揃って、美咲ちゃんの家に向かった。
数十分後。
「ここでいいわ……」
美咲ちゃんは自分が住んでいるマンションの前でそう告げた。
「後は大丈夫だから」
「あ、そ、そうだね……」
実は玄関の前まで行くつもりだったけど……マンションの前まで来れれば、後は入ってしまえば大丈夫なんだよな。言われるまで気づかなかった。すると、美咲ちゃんはそっと僕の方を見て、僅かに笑みを浮かべた。
「今日は……送ってくれて、ありがとう……」
それだけ言うと、そのまま早足で帰っていってしまった。
僕はというと……ただただ、その後を見送るだけで。
また、ありがとうって、言ってもらえた。
それだけじゃない、美咲ちゃんは笑顔でそう言ってくれた。
僕にはそれが、嬉しくて。
その後、僕は下手な口笛を吹きながら、家へと帰っていった。
●次のページ
⇒⇒⇒
第24話 〜君と、出会わなければよかった〜
当サイトへのリンクはフリーです。
なお、掲載されている記事・写真・イラストの無断転用、加工、直接の引用等は禁止とさせていただきます。
(C)トミーウォーカー/新紀元社