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なにはともかく、やってみよう!?
TRPG版『無限のファンタジア』の体験日記です。
登場人物の紹介は
こちら
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画:
888
TRPGって?
第1話
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第2話
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第3話
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第4話
キャラメイク
第5話
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第6話
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第7話
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第8話
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第10話
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第11話
冒険開始!
第12話
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第14話
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第15話
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第16話
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第17話
GMに挑戦
第18話
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第19話
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第20話
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第21話
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第22話
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第23話
終章
第24話
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第25話
▽月●日
美咲ちゃんの言うとおり、キャラクターを作り上げた僕。
「さあ、始めましょうか」
いったい、これから何が始まるんだろうか……。ちょっと心配になってきたな……。
「始めるって何を?」
「TRPGよ。……とは言っても短い体験版みたいなものだけどね」
僕の言葉にそう答えて、美咲ちゃんは続ける。
「じゃあ始めるわね。……あなたは今、街の人に頼まれて、ある屋敷にいるわ。あなたが頼まれたのは、街の人が屋敷の地下に閉じ込めたジャイアントバット……巨大化したコウモリね。それがあなたの目の前にいるわ。あなたの仕事は、そのジャイアントバットを退治する事よ。相手も1体だし、大丈夫よ」
美咲ちゃんはそう説明してくれた。
どうやら、僕のキャラクターである、ストライダーの武人は、ジャイアントバット退治の為に、屋敷にきているようだ。そして、何時の間にやら、敵はすぐ目の前にいるらしい。
「えっと……退治するって言っても、僕は何をすればいいのかな?」
「いい質問ね。答えは簡単よ。ジャイアントバットと戦って、倒せばいいの」
「ジャイアントバットと、戦う?」
美咲ちゃんは無言で、20面ダイスを僕の手に乗せた。
「そう。ダイスを振っていい目を出して、敵に攻撃を当てるのよ。本当は攻撃順番を決めてから行うんだけど……あなたから攻撃してみて」
どうやら、敵に攻撃を当てるには、ダイスでいい目を出さなくてはいけないらしい。
いい目?
「どんな目を出せば、攻撃を与えられるんだ?」
「あなたのキャラクターは、武人だから……体の能力値以下が出ればいいわ。さあ、振って」
僕のキャラクターの体は18。だから、18以下を出せばいいんだ。低い目が出たほうがいいんだな。
「よし、えいっ!」
気合を入れて第1回目の攻撃! ころころとダイスがテーブルの上で転がり。
…………え? 20?
「あら。ジャイアントバットは余裕であなたの攻撃を避けたわ」
……ちょっとむかつくな、ジャイアントバット。今度こそ……。
「その前にジャイアントバットの攻撃よ。技攻撃が来るから、今度は技の能力値を見ながらダイスを振ってみて」
「うわ、マジ? 了解。じゃあもう一回……」
僕のキャラクターの技は17。今回も17以下を出せばいいんだろう。
ころころころ。
「あら残念。ジャイアントバットの攻撃はギリギリ当たらなかったわ。次はあなたの攻撃よ。……そうね、今度はこのキャラクターになったつもりで、台詞を言いながらダイスを振ってみて」
「え? このキャラクターになったつもりで?」
「そう、やってみて」
美咲ちゃんが僕をじっと見つめている。なんか、緊張するなぁ……。
うーんと、こいつは男で武人だから、ちょっと荒々しくして、さっき攻撃が当たらなかったから、その悔しさも出して……。
「ちくしょー、今度こそ当ててやるっ!!」
そういってころころとダイスを振る。
お、今度はいい目が出たぞ! 気合を入れたからかな? それとも演技したから?
とにかく、急に何か臨場感が出たというか、本当に冒険者になったような気分になったぞ!
(そうそう、後で美咲ちゃんが、「本当は台詞を言う言わないはどっちでも良くて、それよりもキャラクターの事を考えて、その役割を演じる事が面白い所のよ」と教えてくれた事も、付け加えておこう)
それはともかく、攻撃の結果だけど……。
「おめでとう。ジャイアントバットはあなたの攻撃で体を斬り裂かれたわ」
「やったっ!」
「でも、喜ぶのはまだ早いわ。ジャイアントバットはまだ生きているわよ。次はジャイアントバットの攻撃よ。準備はいい?」
どうやら相手は、一撃では倒せないらしい。また攻撃を避けなくては。
「OK。また振ればいいんだな」
「そう、振ってみて」
ころころとダイスを振る僕。
うわ、また悪い目を出しちゃった。
「今度はダメージを食らってしまったようね」
「あ、ああ。そうらしい」
僕は思わず苦笑を浮かべる。
「ダメージが来るわよ。あなたの技の鎧強度は……」
美咲ちゃんがダメージを計算して教えてくれる。
うわ、HPの5分の1くらいダメージを受けたぞ。早く倒さないとヤバイかも。
「さあ、次はあなたの番」
「よし、今度こそ大ダメージを与えて、依頼を終わらせるぞ!! ジャイアントバットを攻撃っ!」
僕はまた、気合を入れてダイスを振った。
「あらら、負けちゃったわ。おめでとう、ジャイアントバットを倒したわよ」
「よっしゃーー!!」
思わず大きな声を上げて、赤面する僕。
いかんいかん、ここは美咲ちゃんの部屋だった。
とにかく、僕のキャラクターは何度もダメージを受けて、ちょっと危なかったが、何とかジャイアントバットを倒す事ができたようだ。
「こうして、あなたはジャイアントバットを退治する事に成功したわ。ふと、あなたの目の前に一人の少女ががやってくるわ」
「え? 少女?」
「そう、少女。なかなか可愛いわよ。その子があなたに袋を渡してくれるわ」
「ふ、袋の中身は?」
「それは自分で確かめて」
そう言って、美咲ちゃんは可愛らしい紙で包んだ何かを、僕に手渡した。
「え?」
「ほら、開けてみて」
言われたとおりにあけると、そこには小さなクッキーが入っていた。
「ありがとう……」
「はい、これで今回のTRPGはおしまい。どうだった? なんとなく分かったかしら?」
「うん、少しは分かったと思う。まだ数値の判定とか、よくわからないけど……」
GMの役割とプレイヤーとしての遊び方がわかったような気がする。
プレイヤーはキャラクターになりきってダイスを振ったり、宣言しながら遊ぶんだ。
逆にGMは、プレイヤー達の……いわばガイド役と言っていいだろう。
プレイヤーの演じるキャラクターが、現在、どのような状況なのかを説明したり、敵の攻撃や防御を担当したりするんだ。
実際に体験してみて、結構面白かったし、それに……。
美咲ちゃんのクッキー、とっても美味しいしっ!!
「実際はね、もっといろいろな事ができるわ。今回の戦いだって、回復役とかいたら、もっと気楽に戦えたわよね。それだけじゃないわ、力をあわせて大ダメージを与えられるから、ずっと早く敵を倒せたかもしれないわね。もちろんアビリティも使えたら、もっと楽に倒せたでしょうね」
そういえば、このゲームって複数の人が集まって行うゲームだったっけ。
仲間がいたら、今回の戦いはもっと有利になるって事なんだな。
「そうね、もし今回の敵に弱点があったら、あなたならどうする?」
「決まってるよ。弱点で攻撃する」
「じゃあ、村の人に頼まれて、盗賊になってしまった村人を捕まえて欲しいといわれたら?」
「そうだな、盗賊の所に行って、話し合う。説得して、戦いを避けたいな」
「でも、それってTVゲームだと、融通がきかないわよね」
「言われてみればそうかも……」
「それが、TRPGではそれを再現する事ができるの。しかも会話のやりとりで進めるゲームだから、GMは簡単にいろいろな物語を用意できるの。モンスター退治だって宝探しだって、思いついたらすぐにゲームにして、皆で楽しめる。プログラムなんかの苦労も無く、すぐにね」
TVゲームでできなかったことがTRPGならできる。
………あれ? これってどこかで聞いたような?
「そうだ、今度、文京区でTRPGコンベンションが開かれるの。無限のファンタジアだけで遊ぶから、あなたもきっと参加しやすいと思うわ」
「TRPGコンベンションって?」
「たくさんの人が集まって、みんなでTRPGを遊ぶ会の事よ。知らない人とも一緒になるけど、その分、楽しいわよ」
今回出来なかったパーティプレイが楽しめる……。
「ぜひ、参加してみたいな。どうすればいい?」
「予約しなくていいから、当日行けばいいわ……この会場なんだけど、知ってるかしら?」
美咲ちゃんはそういって、文京コンベンションの案内を見せてくれた。
そこには会場の地図が記載されている。どうやら、僕の知らない場所にあるようだ。
「ちょっとわからないな……どうしようかな?」
「……待ち合わせしていく? 私も行こうと思っていたし、ついでに連れて行ってあげるわ」
思いがけない提案。
「よろこんでっ!!」
こうして、僕と美咲ちゃんは連絡用のメールアドレスを交換して。
僕は夢心地のまま、帰路についたのである。
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第5話 〜美咲ちゃんからの初めてのメール〜
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