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 なにはともかく、やってみよう!?
 TRPG版『無限のファンタジア』の体験日記です。
 登場人物の紹介はこちら。                          画:888

TRPGって?
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終章


第25話 〜僕らの夏は永遠に〜
☆月◎日
 あれから何日が過ぎたんだろう。
 美咲ちゃんと会う事も無いまま、数週間も過ぎた。
 その間、友達と何度かTRPGをした。
 楽しかった。
 でも……なぜか僕の胸が、ぽっかりと穴が開いたようになっていた。
 楽しくなかったわけじゃない。
 きっとこれが、寂しいって事なんだと思う。
 でも、僕がどうこうできる事じゃない。
 僕は僕で、自分の決めた道を歩いていくのだ。



 ピンポーン。
 僕は家でレポートのまとめをしていたのだが、どうやら誰かが来たようだ。
 きっと父さんか妹に違いない。
「はーい、どなた?」
 かったるい声でインターホンに出る。
「美咲です、あの……」
 え!? な、なんで美咲ちゃんがっ!?
 僕はばたばたと急いで、玄関を開けた。

 そこには、髪を一つにまとめ、浴衣姿の美咲ちゃんが立っていた。

「美咲、ちゃん?」
「こんにちは。その様子だと……私のメール見ていなかったみたいね」
 ぽかーんとしている僕に、美咲ちゃんはふうっとため息をついた。
「今日は誘いに来たの。町でお祭りやってるの知っているでしょ?」
「あ、そういえば……やけに騒がしいと思ったら、それか……」
「花火大会もやるんですって。一緒に行きましょう」
 ………ちょ、ちょっと待った!
「な、何で僕を誘ったの!?」
 思わず、叫ぶように尋ねてしまった。今度は美咲ちゃんがきょとんとする。
「美咲がお礼をしたいんだって」
 もう一人、ハスキーボイスの女性の声。
「え?」
「ねえ、美咲。本当にこの人誘うの?」
 そこにはすらりと背の高いショウに似たあの人が立っていた!
 し、しかも………女物の浴衣を着ている!?
「そんな事言わないで。こう見えても、彼、かなり良い人なのよ。前にも言ったでしょ?」
 2人で会話が続いている。
「え、えっと、その……彼女はだれ?」
 そんな僕にやっと美咲ちゃんが気づいた。
「あ、ごめんなさい。私の同級生で親友の晶(アキラ)ちゃんよ。私と同じ学校に通っているの」
「よろしく」
 た、確か……前に美咲ちゃんって、女子高に通っているって………。
 ええええええっ!?
 落ち着け、僕。落ち着くんだ。
 わかっている。そう、あのとき見たのは、ただの見間違い……ではなくて勘違い。
 うわあああ、ただの勘違いで、あんなに苦しい思いしたのか、僕はっ!!
 僕の馬鹿野郎っ!! お陰で美咲ちゃんのメールに気づかなかったじゃないかっ!
「ねえ、何か頭抱え込んでいるけど」
「あのーもしもし?」
 美咲ちゃんの声で僕は目覚めた。
「あ、ご、ごめん。ちょっとびっくりしちゃって」
「あ、わかるな。私も初めて晶ちゃんに会った時驚いちゃったもの。とっても格好良いから」
「ありがと」
 ちゅ。
 って、おいおいおい。晶さんっ! ここは人の家の前ですって!
 心の中で突っ込みながら、僕は2人と一緒にお祭りに出かけたんだ。



「それで……どうして僕を誘ってくれたの?」
 三人で歩きながら、僕は尋ねた。
「あ、まだ言っていなかったわね。ほら、前にあなたの家でTRPGしたじゃない。あの時、ちょっと急だったのに、仲間に入れてくれたでしょ? それに……私の家まで送ってくれたから」
 そのお礼に僕を誘ってくれたらしい。
 いつの間にか、僕らは屋台のある神社にたどり着いた。
 金魚すくいや射的、わたあめを売っている屋台もあれば、様々なお面を並べている屋台もある。
 美味しい焼き鳥や焼きそばも売っている。
 ……ちょっとお腹が空いてきたかな。
「何か食べる?」
「あ、じゃあ焼きそば買ってきてもいい?」
 僕らはうろうろと屋台でいろんな物を買って来た。
 丁度良いベンチを見つけて、そこに座って焼きそばやわたあめや、その他もろもろを食べる。
 うーん、こういう屋台の味もいいよな。
 それに……。
「美味しい……」
 隣には、たこ焼きをはふはふ頬張る美咲ちゃんがいる。
 ああ、幸せだなぁ〜!



 お腹も一段落したところで、僕らは屋台のゲームを楽しむ。
「あっ! 惜しい!」
 僕が射的で手に入れたのは、キャラメルの入った小箱。
「美咲、これあげるね」
「ありがとう、晶ちゃん」
 美咲ちゃんに可愛いぬいぐるみを渡すのは、その親友の晶さん。
 うっ、ま、負けた……。
 相手が女の子じゃなかったら、勝つまで射的をやっていたところだ。というか、晶さんって何でもできそうな気がするのは気のせいか?



 ボン、ボン、ボンッ!!
 お祭りもいよいよ佳境。
 夜空にたくさんの花火が咲き乱れる。
「喉、乾いたわね」
 ぽつんと呟く美咲ちゃん。
「あ、じゃあ何か買ってきてあげる。美咲は何がいい?」
「えっと……いつものスポーツ飲料で」
「了解。すぐに戻ってくるわね」
 晶さんはそそくさと、何処かへ行ってしまった。
 ……え? ってことは、今、美咲ちゃんと僕の……2人っきり!?
 な、何かするなら今のうちという事なのか?
 って、これって、告白の大チャンス到来っ!?
「あなたは良かったの?」
「え?」
 突然、美咲ちゃんに尋ねられた。
「ほら、飲み物。喉が渇いているんじゃないの?」
「あ。いや、大丈夫」
 そう言われて、僕も喉が渇いてきたように思う。
 いや、別の意味で喉が渇いたといっても、いいかも。
 思わず、ごくりと唾を飲み込む。
 空では相変わらず、ボンボンと花火が上がっていた。
「わあ、綺麗ね……」
 見上げる美咲ちゃん。
 花火が美咲ちゃんを照らして……綺麗だ。
「う、うん……綺麗だね」
 美咲ちゃんと目と目が合って、急いで空を見上げる。
 綺麗な花火が、暗闇の中、僕らを淡く照らしていく。
「あっ」
 何かに躓いたのだろうか。美咲ちゃんが転びそうになった。
「美咲ちゃん、大丈夫!?」
 僕は急いで手を伸ばし、美咲ちゃんを抱きとめる。



 一瞬、時が止まった。

 ボンボンボンボンボンッ!!
 花火の音で、止まっていた時が動き始めた。
 花火の音が、うるさい。
「…あ……とう……」
 うまく聞き取れなかったけど、お礼を言っているのに違いない。
 花火のせいか、美咲ちゃんの頬が赤く火照っているように見えた……。

「美咲! 買って来たよっ!」
 はいっと、手渡す晶さん。
「わっ」
 僕の手に少しジュースがかかったのは気のせい……だよね?
 しかも、何か僕を睨んでいるように見えるんですけど?
「ありがとう、晶ちゃん」
「いえいえ。気にしないで」
 さっきの睨みはどこへやら、いつの間にか笑顔になっている晶さん。
 僕の気のせいだよね、きっと………。



 こうして、僕の夏が終わりを告げる。
 そして、また新たな季節が始まるんだ。

 美咲ちゃんと一緒に、またTRPGをしながら………。



「きぃーーーーーっ!!」
 例の三人の後をつけている者がいた。
「お兄ちゃん、かなり落ち込んでいたから、元気付けようと思って来たのに……あの人は誰なのっ!? 何で、マレナと同じ顔してるのっ!! 悔しーーーーー!!」
 ツインテールを揺らす、小柄な少女。
「でもでも、負けないんだから。私だって、もっともっとおっきくなったら、あの人よりももっともっと美人になるんだからっ!!」
 片手にりんごあめを持ちながら、妙な事を叫んでいる。
 まさか、こんな少女が後をつけているとは、例の三人は全く気づかなかったのであった。

 いや、それだけじゃない。
『何なの、あの男は? ちょっと格好良い事やったからって、調子に乗るのもここまでよ』
 三人の内の一人、背の高いすらりとした女性も心の中では。
『絶対に、絶対に認めないわよ……それに美咲は、私の見つけた大切な天使なのだから!』
 憎悪むき出しにしていたのは言うまでもない。





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