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 なにはともかく、やってみよう!?
 TRPG版『無限のファンタジア』の体験日記です。
 登場人物の紹介はこちら。                          画:888

TRPGって?
キャラメイク
冒険開始!
GMに挑戦
終章


第16話 〜仲間を守る為に僕は生まれ変わる〜
○月△日
 グドン退治の依頼を受け、グドンのいる洞穴に入ったランド達。
 その奥には、案の定、強敵が潜んでいた。
 体の大きなグドンと、モンスターのバットハーピーがそれぞれ2体ずつ。
 激しい戦いの末、ランド達はグドンを倒す事に成功した。
 残るはバットハーピーのみ。
 だけど……ランド達もかなり危険な状況だったんだ……。

「次はバットハーピーBの攻撃だよ。えっと今回は……ランド君に攻撃。成功レベルは4だよ」
「わ、わかりました……」
 GMに言われて、僕はすぐさま防御ロールを行う。
 うわ、失敗だっ!!
「技ダメージだから……う、うわぁ〜」
 丁度ピッタリHPがゼロになってしまった! そういえば、まだ回復してもらっていなかったっけ……。
「え? ランド君、戦闘不能なのかい?」
 GMもちょっと驚いているみたいだ。
「安心して、バットハーピーもそろそろやられると思うし」
 何だか力強い美咲ちゃんの声。それもそうかも……。
「……じゃあ、ちょっと物足りないかもしれないけど、ランド君はしばらく休んでいてくれるかな?」
「はい、わかりました」
 僕はちょっと悔しい思いをしながら、戦況を見守る事にした。
 きっと、倒れたランドも悔しがっているに違いない……。
 と、そのときだった。GMによる、バットハーピーの攻撃。
「次のバットハーピーは……ショウに攻撃。攻撃の成功レベルは……8レベル!」
「えっ?」
 今度は、美咲ちゃんが耳を疑う番だった。
 もう、回復アビリティは尽きている。しかも、ショウはもうHPが残り少ない。



「あ、あのっ! ランドは戦闘不能ですけど、何かの役に立てませんかっ!?」
 僕は攻撃が来る前にそう、GMに宣言した。
 戦闘不能になったら、何もできない事はわかっていた。
 だけど……。
 だけど、どうしても美咲ちゃんを、いやショウを助けたいと思ったんだ。
「一つだけ、方法はあるよ」
「ほ、本当ですかっ!?」
 思いがけないGMの言葉に、僕は驚きを隠せないでいた。
「キマイラ化すれば、助けられるよ。まだランド君の感情ポイントあっただろうしね」
「はい!」
「でも、その前にキマイラ化の説明を聞いてから、決めてくれないかな? メリットとデメリットがあるから」
 そう言って、GMはキマイラ化の説明をしてくれた。


 キマイラ……それは、冒険者がグリモアの加護を失い半獣化した、忌むべき力……。
 非常に強力だけど、その力は呪われたものだ。

 冒険者がキマイラ化するには、グリモアエフェクトを使用したり、悪徳の限りを尽くしたりして幸運度が0になったり、ランドのように戦闘不能になる必要がある。
 逆に言えば、幸運度が0になったり、戦闘不能にならなければ、キマイラになることはない。

 キマイラ化すると、瞬時にHPとバッドステータスが全回復する。そして同時に、キマイラの「形質」が1つ、体から生えてくる。形質とはモンスターの肉体の一部のような器官で、どんなのが生えてくるかは表の中から選ぶ。
 キマイラは、この「形質」の数だけ多く20面ダイスを振り、ダイスロールや幸運度チェックを有利に進めることができる。他にも、翼が生えれば空も飛べるし、人間の体では行えない、様々な行動を試すことができるようになる。

 ……復活と同時にパワーアップ。これは凄い力だ!
 だが、呪われた力には代償がある。貰えるEXPが半分になってしまうし、何よりキマイラ状態でHPが0になると、今度は完全なモンスターになってしまう。モンスターになってしまったら、ランドはもう、永遠に、人間に戻ることはできない……。

「ここまで、一通り話してみたけど……どうする? キマイラ化するかい?」
 キマイラ化のデメリットを聞いても、僕の気持ちは変わらない。
「もちろんっ!」
 僕は迷わずキマイラ化した。HPも全回復。ランドの体に現れた形質は、ダイスを振ってコカトリスの翼を得た。ランドの背中が割れ、2枚の呪われた翼が生えてくる!
「GM! キマイラ化で復活したと同時に、特殊行動『かばう』でショウをかばいます。それと、一言ランドの台詞を言ってもいいですか?」
「どうぞ」
 僕は少し言葉を探す。
「ショウの前に立ちはだかり、気さくな感じで……『これで貸し借りはチャラだぜ、相棒!』」
「『馬鹿が……』」
 美咲ちゃんが呟くように、ショウの台詞を告げる。
「じゃあ、復活したランド君。ショウ君の代わりにダメージを受けてね」
 僕はハーピーのダメージを受けつつも、戦闘に加わる事ができたんだ。



 とんとんと、僕の腕を突付く。
 え? 美咲ちゃん?
 美咲ちゃんはそっと、視線をショウのキャラクターシートに移した。
 僕もショウのキャラクターシートを見る。
 美咲ちゃんは、キャラクターシートの片隅に、ささっと一言、シャープペンシルで書いた。

『ありがと』

 美咲ちゃんの顔が俯いていて、よく見えなかったけど……喜んでいるって思ってもいいのかな?
 僕は恥ずかしそうにぶんぶんと首を横に振った。
 礼を言われる事をやったわけじゃない。
 ただ、あのときの……グリモアエフェクトの借りを返しただけなのだから……。
 そう伝えたつもりだったが、伝わっただろうか?



 ランドがまた戦いに復帰できたお陰で、やっとバットハーピーを倒す事に成功した。
 まさかランドが倒れるなんて思ってもみなかったけど、結果的には……かなり良かったかも?
 バットハーピーを倒したランド達は、洞穴を一通り回って、グドンがいない事を確認する。
 どうやら、洞穴にいるグドンは全て倒せたようだ。
 ランド達はその報告を手に、人々が待つ村へと戻っていったんだ。




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